第39話 歴史を知る 下
「聖ヌミノス教?」
こんな宗教、あっただろうか?。
元の世界では聞いた事が無い。だとすれば、この世界の独自の宗教の一派なんだろう。
異邦人が持ち込んだ西方世界の一宗教。異教徒との戦いに生涯を費やし、遂には異教徒の刃で殉教者となった聖ヌミノスを信仰する一神教だ。
殉教の神として祀り、『罪なき人間を救済する為に殉教を』を厳格な教義とする。西方世界では、少数勢力の宗教一派であり、最大勢力の有神教と勢力争いを起こし、三度に渡る宗教戦争の末、聖ヌミノス教徒は大陸を追われる事となった。
移民船団の半数以上は、聖ヌミノス教の信者である。近年は、協議の根底、基本的理念を巡って、内部対立が表面化している。
現在、大和の在来宗教とは極めて危険な敵対関係へと発展しており、一大宗教戦争の勃発が不安視されている。
「宗教による対立か。どの世界でもあるんだな」
そういえば、西区を歩いていた時、蛇が絡みついた十字架を象った飾りをつけていた人間が多くいた。
蛇と十字架は聖ヌミノスの象徴である。今思えば、彼らは教徒なのだろう。
「
商工業者及び専門業者の間で結成された各種の職業別組合の事。職人の紹介といった仲介業務。問題発生における調停。職人の各支援などの窓口役が主だ。
都市の成立・発展に大きく寄与する実績を残している。徒弟制度と称される剣客な身分制度が存在し、頂点に立つ親方は職人・徒弟を指導して労働に従事させる。職業組合ギルドに参加できるのは、親方の資格を持つ者に限られる。
製品の品質・規格・価格などは厳しく
これは独立独歩を標榜する
「面倒そうな話だ。まぁ、関わる事もないだろうな」
そして、最後のページをめくる。
「異邦人とは異なる異種族と呼ばれる人種について? 異種族?」
いきなり、ファンタジー色が強まったぞ。
俄然、興味が出てくる話だ。
移民船団に乗っていたのは、西方世界の人間だけではない。二つの種族、アールヴ人とドヴォーフ人の姿が確認されている。
神秘に通じ、心身共に極めて優れている。人間には魅力的で幻惑されそうな雰囲気を持つ。長身で、肉体は強靭。感覚は鋭く、博識、聡明であり、善良。男女問わず外見は美しく、美しいものを多く見出し、多くを作り出す。
西方世界では、人間が足を踏み入る事ができない秘境に住む。
彼らに種族を問うと、「半分」だと答える。半神であり、半人であり、半妖精であるためだと言う。更に詳しく問うと、「知ってはいけない」と沈黙する。その為、学者の間でも、よく論争の的になる。
彼らもまた、生物学的には人種とされるが、当人達の歴史と説明によれば、巨大な人種の末裔であり、年月と共に変異した古い血筋を受け継ぐ者であるという。
礼儀と誠実を重んじるが、多種族とは友好的とはいえず、不和を引き起こしやすい。また、性急であり、頑固で意固地である。
彼らの行動でよく知られた言葉がある。『岩が座る』である。これは、一度、怒らせたドヴォーフは、相手の大切なものを奪い、それを隠し、入り口に座り込むというものだ。岩のように身動ぎもしない。彼らの頑固ぶりと意固地さを端的に表した行動だ。
機嫌を直す方法は、友であるドヴォーフに麦種か、火酒を持って行かせる事だ。大抵は、それで機嫌が直る。逆に悪化することもあるらしい。
西方世界はこのように、一概に人種とは言い難い種族が存在している。解明にはさらなる研究が待たれる。
「......
これって、どう考えてもエルフとドワーフの事じゃないだろうか。
伊達にアニメや漫画で勉強していないぞ。
会ってみたい。正直、ものすごく見たい。どこにいるんだろう。
夢想は、小鍋が沸騰して溢れたところで途切れた。慌てて、小鍋を竈から外す。
香ばしい、やや焦げた風味が鼻をくすぐる。小鍋の中の水は、黒っぽい泥水のように色づいている。
「よかった......コーヒーだ」
どうやら上手くいったようだ。
熱々のまま、カップに注ぎ入れる。出来立ての熱々を持っていこう。
本を元の場所に置くと、藤堂七夜は意気揚々と店の主人がいる店先に向かう。
泥水を飲ませたな!、と店の主人が怒ってしまったのは数分後の事である。
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