真・迷宮ガルダ編

2章ーレベルに不満です。リムルは異常に感じる

リムルの家で、リムルが出してくれたお茶を飲みながらゆったりとした時間を過ごす。

この4日間迷宮にずっと潜っていたので落ち着いた。視界に入るのは洞窟の景色ばかり。攻略後に外に出て浴びた日の光はやはり人間には太陽の光は大切なのだなと思わせてくれた。


テーブルには惶真、”恩恵”の行使によっての魔力切れに、気味の悪く嫌悪感のあるゾンビの相手を間近で相対した事になり精神的に疲弊してグロッキー状態のマナ、そんなマナに同情しつつ苦笑するカナ。惶真の傍で楽な姿勢でいる眠っている魔狼。迷宮で出会いテイムして今ではこうしている。名前は惶真がフェンリルと名付けた。鋭い牙と爪に俊敏さも併せ持つ灰色の魔物。基本主と認めた惶真の言う事にしか聞かない。

そして、どこかフェンリルにビクついた視線をチラッと向ける黒い髪に髪の色と同じ兎耳をしたまだ幼さのある(マナ、カナよりは大きい)少女。兎耳がある事からこの少女が獣人であることが分かる。名前はヴァニラ。

なぜビクついた様子をヴァニラが見せるのか?それは自分の家に魔物がのうのうと居座っているのだ驚かないわけがない。しかも家に帰って初めて見た際に驚きの声を大きく上げ、その声にフェンリルが不快そうに唸り吠えた。その唸り声にビクリと奮える事になったのが原因であった。

一応フェンリルは惶真の支配下にあるので、いきなり襲うことはないと落ち着かせた。

そして御代わりのお茶を入れてくれる白髪長髪にヴァニラ同様に白い兎耳のある女性、ヴァニラの母であるリムル。リムルはヴァニラ程フェンリルを怖がってはいないようだ。始めは驚き引いていたが襲わないと説明され「そうですか」と受け入れた。

そのあとは、なぜか「撫でていいですか?」と許可を求めてくるほど「フェンリルさん」と呼び気に入った様子だった。

フェンリルは主である惶真以外に触れられ撫でられるのに不満であったのだが、何故かリムルに対して甘い所を見せる主により「触れていい。…噛んだりするなよ?」と許可が出されたので遺憾ながら渋々と撫でられた。

ただこの時にリムルに撫でられた感触が意外にも気持ちいいと感じ、『なぜだ!?』と思う魔狼だった。


迷宮での内容に興味を示すヴァニラに、話すくらい問題はない、とざっとではあるが聞かせた。


そしてヴァニラとリムルの2人にある程度聞かせたあと。

お茶を口に含みながら惶真は自分の黒いクロノカードに目を向けている。

そこには今現在の惶真のステータス情報が出ている。

それに若干眉間を寄せてしまう表情になっている。


ステータスはこう記されている。


==========

○名前:此花惶真コノハナオウマ

○性別:男  ○種族:人間(異世界人)

○職業:学生/転移者/冒険者  ○冒険者ランク【赤】

○レベル:5 ○属性【黒】

筋力:1680

体力:1890

耐性:1740

俊敏:1780

魔力:3800

魔耐:2390

○固有技能

恩恵・変成…固有魔法【変性】【変成】

○特殊技能

『戦闘系』:剣術【短剣術/大剣術/投剣術】:槍術:剛力:俊脚【縮地】:金剛:豪気【威圧】:獣氣:

『魔法系』:魔法適正【黒】:自動魔力回復:魔力放出:耐魔力【火/水/風/地/雷/黒/白】:状態耐性【毒/火傷/麻痺/氷結/即死/石化】:属性耐性【水≪水化≫】:魔力付加【属性付加】:精霊魔法(“精霊回廊”がないため使用不可)、空間魔法、封印魔法

『補助系』:言語理解(古代語理解不可)【自動筆跡】:気配感知:気配遮断:心眼:能力付加:能力拡張:念話:感覚共有:自然力エナジー【風・地】:状態異常不可

『天職系』鑑定【魔物鑑定/魔石鑑定/食糧鑑定/武器鑑定】:料理:細工【彫金】:芸術

従魔【魔狼フェンリル】

==========


現状がこんな感じになっている。

能力値に関しては筋力、体力、耐性、俊敏は1500を超えており、魔力耐性に関しては2000オーバーし、総魔力量は3000を超えている。

既にこの数値だけでも異常な数値と言える。

この世界の戦士や魔法士の殆どは、良くて150くらいで、最高位の者、王国の騎士長や、エルドラのギルドであったエルフの女性くらいの300オーバーの数値が殆どである。エルフの女性は魔力のみで言えば1000オーバーしていたが、それでもほかの実力は200前後である。


500はおろか1000を超える存在などは、この世界においては【魔人族の王】位と言われている。


もっとも、惶真のステータスが異常なのは彼の”恩恵・変性”の効果によるものである。

相手の能力値をそっくり自分の能力値に変換可能と言うチート能力。しかもこの能力は対象に一度の言う制限はあるが、それでも出会う者によってその能力は際限なく上昇する。

1000はおろか1万越えと言うこの世界では”神”の領域に手が届く可能性がある。


このステータスに関しては特に不満はなかった。

ステータスは己の能力に比例するのは初めから理解している。

技能はいくらでも変換可能なのでチート化はさらに進む。

迷宮で『剣』による剣術や、それを用いる際の身体運び。技能の扱いや魔法も違和感なく扱える経験は積めた。

そして何よりも……自分の弱点がこの世界にリアルな存在として存在することを知る事が出来た。要克服必要である。

また今の自分に足りない能力や技能もほぼ把握できた。

相手の心理を読み把握できる”心眼”の技能があるので、必要そうな技能持ちがいれば即改変し己の物にしようと考えている。

不満らしい所はないように見える。

しかし思わず険しそうな表情になる。不満がなければそのような表情にはならない。

では何が不満なのか?

それは、彼の今のレベルにあった。

惶真のレベルは現在”5”である。

この世界にはレベルと言う単位が存在する。

この世界のレベルの上限は50であると『剣』が教えてくれた。勿論その上限を超える存在もいるらしい。その存在は【超越者】と呼ばれるらしい。ただ少なくとも今の世界にそのような存在はほぼいないらしい。

レベル=その者の成長した証でもあるとも言われている。

レベルが高い程、能力や技能を習得しやすくなり、力量も上がる。

何より周囲に自分はこれほどの実力を持っているのだぞ!と示すものでもあるのだ。


ガルダ迷宮に挑む前の惶真のレベルは3だった。

そして、迷宮に潜って最下層らしい場所の前に自分達のステータスを改めて確認しようと思ったのだ。

そして確認した結果が先程のステータスであった。

レベルが2しか上がっていないのだ。

潜って、自分達に襲い掛かって来た魔物は尽く蹴散らした。

その数は100は超えているはずだ。

『剣』によれば低級の魔物を100体も倒せば、10くらいまでは上がっているはず、と教えてくれた。


「ね、ねぇ、お兄さん…どうかしたの?何だか怖い顔してるけど?」


ヴァニラがおっかな顔で聞いてくる。

眉間が寄っており怒っている表情になっていたようだ。少なくともヴァニラ、そして彼女の母であるリムルもそう感じていたみたい。


「ん?ああ、少し考えに耽り過ぎたようだ。別に怒っているわけじゃないから、そんなにビクビクしながら声を掛けて来なくてもいいぞ。普段通りでいい」


そう言うと、惶真はヴァニラとリムルに、己のクロノカード、そのステータス表示を見せた。


「え?な、なんですか、この数値は!?」

「わぁ、お兄さん凄いんですね…でもお母さん?お兄さんのって、もしかして変なの?」

(『変』は余計だ……)


惶真のステータスを一目見て、リムルは彼のステータスが異常なものだとわかった。だからこそ彼女は驚愕の表情と声を漏らしたのだ。

そして同じく見た娘であるヴァニラはどこか目を輝かせつつ凄いと言い、そして母が驚いていることに不思議がる。そして母が驚くほど『お兄さん』が一般的なものと違うのではないかと思い、『変』と口にしたのだ。


「ありえませんわ。能力を示す数値がどちらも1000を超えているなんて…。それに、この数の技能も本来ありえないわ!?」


特に隠さずそのままで見せた。そしてリムルはそれが一般的にやはり異常だと言う。


「まあそう言われるとは思ってはいたが、それほど異端なようだな、俺のステータスは…」

「はい。正直言いましてこれは異常なものです。このようなステータスを今まで見た事も聞いた事もありません。それに…オウマさんのレベルも違和感のあるものです」

「お兄さんのレベル?えっと、お兄さんのレベルって確か、5、だよね?」

「そうよ、ヴァニラ。はっきりとは言えませんが、オウマさんの今の数値が本物であるのでしたら、確実にオウマさんのレベルは50を超えたものになっているはずです。ですのに”5”と言うのは考えられない数値です」

「……やはり、そうか」


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