2章ー外伝EpisodeⅠ…その頃のクラスメイト②【守と命】

「ほんと、お前ってお人好しだよな」

「あっ相楽さん」


嵐から刀の作成依頼を受けたあと、守は1人のクラスメイトの女子に声を掛けられた。

その女子は先の迷宮に挑んだ際に仮のチームを組んで参加し、その時に守がかばった少女、相楽命サガラミコトだった。

どうやら物陰から先程のやり取りを見ていたようだ。

呆れたような表情で近付くと守に話しかける命。


「お人好しって僕の事?」

「ああ、そうだよお前の事だ。だってお前、これで5件目だろ?何かしらを作ってくれってお願いされたのって」


そうなのである。

守の作製技能を知り『御願い』をして来たのは嵐だけではない。

他に4人のクラスメイトが守に依頼をしていたりする。

そのうちの二人は、守達同様に迷宮参加した、描かれている魔物を召喚する能力を持つ少年武藤遊一ムトウユウイチと、同じく魔物限定ではあるが封印能力を有する少年瀬戸海治セトカイジである。


依頼された守はそれぞれの作成依頼を受けた。出来るかは分からないという条件付きであるがほぼ無償に近いと言えていた。無論素材の確保の際には協力はしてもらうが。

作製の過程で他の人の持つ知識を活かせる。それに作製すればそれだけ自身の技能が強くなれる。守の生成能力が向上するから守にもメリットは十分あった。

もちろん依頼された物だけでなく守は色々と作り続けている。

実を言えば、召喚された者達にはそれぞれ一室を与えられている。その守に与えられた部屋の大半は、守が作り出した試作品で溢れている。


「見返りもなくただで受けるなんてお人好しだろ?私なら何か対価を要求するけどな。…それと、私の事は苗字じゃなく……み、命って呼べって言ったろっ」


呆れ顔から名字でなく名前で呼ぶ様に告げた時に頬を赤くする命。


「ごめん、そう言えばそうだったね…命さん」

「命で良いって。さん付けなんてむずかゆいだろ!」

「ご、ごめん…僕、女の子の名前を呼ぶなんて経験あまりないんだ。だから、さん、で許していてほしいんだけど」

「むぅ…わかった。守がそう言うんなら仕方ねえな。でもいづれは呼び捨てで呼んでくれよ。私はお前を守って呼んでんだからな!」

「わかった…ごめんね」


笑みで返す守。その笑みに更に顔を赤くし「ふん」と目を逸らす命。

感の良い者であれば命の初めて芽生えた恋心を察知するだろうか。


「ふふ、なんだか微笑ましいね二人とも」

「そうだな…意外だなホント」

「あっ、武藤君、それに瀬戸君」

「!!?」


現れたのは先の話題に出ていた遊一と海治の二人だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る