2章ー外伝EpisodeⅠ…その頃のクラスメイト①【嵐】
地球の日本から異世界パルティスへと転移した29名。
迷宮洞窟挑戦から数日後。
各自自分なりに必死に自分のスキルを磨き強くなろうと習練に励んでいた。
特に【迷宮】に挑んだ者達がである。
迷宮洞窟に挑戦したのは14名。
+
迷宮に挑戦し、挑戦した者達はそれぞれ自分の能力の使い方を工夫する様に成長していく。
召喚された者達の中で唯一【勇者】の称号を得て、迷宮に突如出現し【恐怖の暴竜】と呼ばれ恐れられている魔物、ダイノボッドを討伐した金髪の少年、
【勇者】のみが扱える【勇者剣技】に、勇者として得た特殊属性である”雷”を剣技、魔法に組み合わせ習得していった。
迷宮に挑んだ際に、正確にはダイノボッドとの死闘の時に、正儀は魔物の脅威性を認識した。そしてそんな脅威である魔物から人々を守る為、自身の名に刻まれている正義の字に違わない様にと誓いを立てたのだ。
それが今の正儀の強さの原動力となっていた。
正儀は日々上位の実力を持つヴァレンシュと模擬戦を行い、迷宮に挑戦し腕を上げていく。
今では王国の騎士では騎士長であるヴァレンシュを除いて正儀に敵う者がいない様になった。
そんな正儀に負けじと、正儀の幼馴染で幼少時代に、ともに剣を学んだ、侍を意識した様に髪をポニーテールにしている少年、
元々高い剣の腕を持つ嵐だったが、自身の持つ得物が
刀剣であっても、剣を扱わせれば正儀を超え一番なのだが。
それでもやはり違和感の様なものが日に日に募っていた。
嵐は一人のクラスメイトの少年を探していた。そして彼を見つけると嵐は声を掛けた。
嵐が探し声を掛けたのは、初めて迷宮に挑戦した際に魔物から仲間の少女を庇い負傷した少年、福田守だった。
あの時負傷した守だが、嵐のチームの彩夢の”治癒魔法”と雫の”増幅魔法”による迅速な治癒によって一命を取り留め助かり、今では元気な姿を見せていた。
嵐に話しかけられ驚く守。
今まで話し掛けられた事がなかった事もあり、寡黙で口数が元々少ない嵐だったので、なぜ自分に声を掛けて来たのだろうと守も不思議に思った。
ただ自分を探して声を掛けて来たことにもしかしてとは思い始めてはいた。
「…えっ?…僕に刀を作ってほしい、ですか…」
「…ああ、福岡、君は武器や鎧、装飾品を作製する錬成技能が得意だと聞いている。であれば、君なら刀を作り出す事はできないだろうか…」
嵐が守に話しかけた理由。
それは”刀”を作ってもらう為であった。
この世界に刀がないのなら作ればいい。そしてクラスメイトにそれを成せる者がいると聞いて、ならば尋ねようと。そう思い嵐はこうして尋ねたのだった。
守の能力は武器や装備といった物を作る鍛冶スキル、錬成スキルが大半なのである。
『素材』と守が『認知しているもの』であれば作り出す事が出来るのだ。
そう作り出すのが容易でない【神の産み出せし遺物】と呼ばれるクラスメイトがそれぞれ一つ所持しているアーティファクトですらである。
もっとも先に挙げた通り、守が作り出せるのは『守が認知しているもの』、そしてそれらを作る為に『必要な素材』が必要となるのだ。
召喚された彼等にはそれぞれアーティファクトが与えられている。
この世界のアーティファクトには【神晶石】と呼ばれる希少性で特別な鉱石が必要不可欠なのだ。
生成する事も出来るが何年掛かるか分からない程の代物なのである。
だからアーティファクトは貴重で数が少ないのである。
また、守が『認知しているもの』、が一番重要なのである。
守の技能では今現在、自身が認識しているモノでなければ造り出す事は出来ない。
つまり守が実際に見聞きした事のある剣や槍、弓などと言った物は素材があれば作り出す事が可能だ。
だが、守の知識にない物……地球では兵器に該当する『銃』、『爆弾』の概念を守は知らない。だから地球の兵器をこの世界に持ち込むことは守にはできないのだ。
ただ、もし守に銃や火薬の知識があった場合、作り出す事が出来たであろうか。
この世界に召喚されたその日に、自分の能力を把握した守は、『作る能力かぁ、…銃ってカッコいいし試して見よう!』と実際に守は試したのだが失敗に終わっていたのだった。そして幾度か試し不可と諦めた守はガッカリしつつ他に出来るかと探り武器や防具、装飾品の類は問題なく作製できるのを実感した。
「…どうだろうか、作れるか?」
「えっと…多分だけど作れると思う、けど…今の僕が作れるのは、普通の物より頑丈な刀としか作れないと思うよ。それでもいいのかな?」
「ああ、それで構わない。是非に頼みたい」
「分かったよ。普通の武器だからそんなに時間はかからないと思うから。完成に2日くらいで出来ると思うから待ってもらえる?」
「ふむ、分かった。感謝する」
嵐は誠心誠意を籠め守に感謝を述べ頭を下げる。
「ふぇっ!?」と驚く守。
慌てて頭を上げる様にと告げる守。
頭を上げた嵐は、守に「待っている…」と告げると、嬉しい気持ちでその場を離れると、いつもの剣の稽古の為にと訓練場に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます