1章外伝2ー④…その頃の召喚組『正儀Ⅰ』

うるさいわよI noisy。っ、私には、もっと…力がいるのよ。”彼”のいる場所に行く為にも」

「咲夜……」


咲夜の言葉に正儀は咲夜の強い覚悟が伝わってきた。

咲夜が力を求めているのは分かる。そしてその力の求めは今この場にいない”彼”の為であるとも伝わっていた。

いかな形かは正儀にもまだわかっていないが”彼”に対する強い思いがあるのは理解できた。


(どうして初対面であるはずの咲夜が彼の事をそこまで気にするのかわからない。けど、俺だって彼の事が気になってる1人だ。その思いは咲夜に負けないはずだ。いや俺の方が重いはずだ!)


正儀は咲夜に負けないぞ!とやる気を漲らせる。

正儀が彼にあったのは2年前になる。

学園に入る時からである。しかし正儀は彼の事をまだ小学生の頃から知っていた。

初めて彼を見て正儀が感じたのは懐かしいだった。

何故そう感じたのか正直今でもわかっていない。

しかし気になる存在として正儀の心に芽吹いていた。

残念ながら小学、中学と”彼”と別の学園だった為接点を結ぶ事は出来なかった。

しかし、ある時正儀は耳にしたのだ。

名前の認識できない奇妙な生徒が正儀の受験する学園に入る為受験すると。

この時は名前が認識できないなんて不思議な子がいるんだと思った。

そしてどうしてか心の奥から、その奇妙な生徒はもしかしたら”彼”なんじゃないのか?と何故か浮かんでいた。


そして今の高校の受験のその日。

正儀は何故か一目見ただけの気になっていた少年。”彼”と会い見えた。

会ったその時はやはりと言うか正儀の気持ちは高揚していた。

長年待ち望んでいた相手にようやく再会できたような気持ちになったのだ。

正直にその場で彼に声を掛けようと思ったが、流石に受験の日に声を掛けて彼の集中の邪魔をしてはいけないと思い自重した。


受験から数日後。

結果発表当日。

正儀は幼馴染の早乙女嵐ら仲の良い者達と結果を見に行った。


『わぁ~彼何者だろう!金髪に爽やかそうな好青年だわぁ』

『外国の子なのかな?でも凄く流暢に日本語でしゃべってるわ』

『…かっこいい。王子様みたい』


と結果を見に来ていた女子から正儀に注目して黄色い視線を向けていた。

これは受験の時もであったが。

しかし――


(彼が受かってますように…彼と一緒に過せますように…彼と同じありますように…)


正儀は祈りを捧げるかの如くブツブツと呟いていた。

正儀の興味はただ”彼”と一緒に学園生活を送りたいと言う願望だけだった。

周りの声など全く気にも留めていなかったりする。

元々小学、中学とその整った顔にサラサラの金髪。身長も高く昔剣道をしていたこともあり体格もあり手足の長さもモデル並みとハイスペック。性格もよくイケメン君と女子から好意的に見られていた。

告白された事は何故かなかったが、好意ある気持ちをよく向けられていたので、正儀としてはこう言った好意は当たり前のようになっていた。


そして結果が張り出されている場所に着くと早速と確認する。

そして結果は合格だった。

自分のを確認した後、気になっているあの彼のを確認しようと思ったのだが、彼の名前も番号も知らないから確認のしようがなかった……そんな時だった。

どこか周囲の空気が変わったように正儀は感じた。

御人好しである正儀には変だなと思うくらいだったが、その空気は嫌悪感であった。


『ゲッ、来やがったのか。あの変人』

『あんな奇妙な奴、落ちてるさ』

『気味悪いやつ』


そんな言葉が耳に入った。

なんだろ?と、もしかして?と思いつつ周囲の空気の先に目を向ける。

それは”彼”だった。


周りのざわつきなんて気にせず”彼”は歩いてくる。

そしてササッと目を番号を追う。

そして目的の者があったのか頷くと、彼は合格者に渡す書類を受け取り向かった。


「そっかぁ、彼受かってたんだ…」


そう呟いていた。

嬉しさから正儀は笑みを浮かべていた。


それから正儀は”彼”、どうやら噂の通りらしく彼の名前を聞いても記憶できなかった。

正儀は残念そうに彼の事をクウハク君と呼ぶ事にした。

同じクラスになれた縁で正儀はよく彼に話しかけた。

周囲はそれとなく『彼に関わらない方がいい』と言われたが『どうして?』と気にしなかった。


(俺は君を友だと、君とのあの2年間は嘘だとは思えない)


正儀の脳裏には、この世界に来た、つまり昨日の”彼”の態度の変化だった。

正儀の知る彼ことクウハク君は、穏やかで自分の異質な部分を理解し荒波を立てないような心優しい所がある普通の少年だった。自分のチョットした御願いも嫌な顔もせず受けてくれる。あまり話をしない彼が自分とは話をしてくれる事に優越感もあったりした。

しかし、あの時の彼はそんな自分の想像を打ち砕いた。

彼はあの時、凄く冷たい、そう暗い眼を向けた。そして何物も映していないそんな言葉で正儀を拒絶していた。


(俺は知りたい。俺は君の真意を知りたいんだ。そして本当の友になりたい!)


そう強く気持ちを確かめていたら剛田剛と騎士長の手合わせが終わったようだ。


「なかなか強引な奴だな君は。その強引さだけでは相手は制する事が出来ないぞ」


そう言われ腹立たしさに剛田はチッ!と舌打ちしつつその場を後にする。


「さて、次で最後だな。さあマサキ!君の、勇者として呼ばれた力俺に見せてもらう。さあ、来たまえ!」

「おっ、呼ばれた。と言うか最後かぁ。少し緊張するねぇ」

「……何良い子ちゃんぶってんのよ。さっさと行って負けてきなさい」

「相変わらずだね。少しは応援の言葉くらい罰は当たらないと思うんだけど?」

「気持ち悪い事を言わないで。鳥肌が立つじゃないっ」


本当に嫌そうに言うし、ほんとに鳥肌が立ってらっしゃるね従妹殿は。

そう苦笑しつつ「やるかぁ!」と頬を叩き気合を込め出陣する。

咲夜が「自分を叩くなんてMなの?」とか言っていたけどとにかく気にせず行こう!



(さあ勇者の実力、その一端を見せてもらおうか)


ヴァレンシュは最も今回の手合わせの目的である少年が近付いて来る。

今回の手合わせでヴァレンシュは召喚された者達の力量と戦闘センスをチェックが目的の一つで、もう一つには今回の召喚で【勇者】の称号を持っていた者を特に確認する為であった。

ヴァレンシュとしては戦いとは縁の少ない世界から来た者達と言う事もあり、本気は当然出していない。

それは彼の持つ武器から分かる。

ヴァレンシュには”剣術”と”槍術”の二つの武技技能を持っている。

今回ヴァレンシュは剣だ。しかし彼の本来の獲物は”槍”なのである。

そう言う意味でも彼は本気を出させる相手はいなかった。

途中3人程本気で行くべきかと思わせる場面があった。


優れた剣術を持っていた早乙女嵐。

彼は元々剣術を学んでいた身の上故に剣にも慣れていた。ただどうやら彼が今まで振るっていたのはヴァレンシュの様な『剣』でなく『刀』と言うものらしい。

慣れていない武器の為間合いや太刀筋に違和感の様なものがあったらしい。実力を全てを出したとは言えないようだった。


武術によるパワーで押し切ろうとしてきた剛田剛。

彼も嵐同様に武術の心得、柔道と言う武芸を得ており、他の者に比べて頭一つ抜き出ていた。そしてどの人間より暴力と言うものに躊躇いがなかった。

恐らく今までの世界でも人を傷つける様なことを平然をやっていたのだろうなとヴァレンシュは思い呆れ果てた。


そして最も異端な才を見せてくれたのが彼女、神童咲夜だった。

彼女の戦闘センスは恐らくこの中で一番であろうと思う。

彼女との手合わせは始まって1分程の短いものだった。

だがその短い時間の中でヴァレンシュは冷や汗を掻いた。

自身の”直感”と長年の戦闘経験がなければ彼女の剣に背中を貫かれていただろう。

もしもあの後も彼女が戦闘を続けられたのなら、まず間違いなく自分は『槍』を抜いていただろう。

彼女の戦法は初手による奇襲に全てを籠めていた。

故に初撃を躱された時点で彼女には次の手は残されていなかった。

実際あの一撃の後、彼女の動きは極端に低下していた。

恐らく”加護”を発動に対する負荷が来ていたのだろう。

手合わせ後もフラフラとしていたのが分かった。


「さて勇者としての、そして君がその【剣】に選ばれた力見せてもおうか」


そう自分の前に立つ【勇者】に告げる。


「はは、お手柔らかにお願いします」


そう言う正儀の目をヴァレンシュは見て(良い眼をしている)と何やら決意を秘めた良い眼をしていると感じた。そしてそれは同じ家名をしている彼女と似ている気がした。

そう感じていると正儀が剣を鞘から抜く。

その際に剣の刃が黄金の色を輝かせていた。


そんな最中何やら他の騎士達から動揺が走っているのに気付いた。

何事だと思いその方に目を向けたヴァレンシュは眼を見開いた。

そして正儀に「少し待ってもらえるか!?」と慌ててその方に向かって駆け寄った。

正儀もどうしたんだろう?と思いヴァレンシュ騎士長の向かった先にいる人物に納得した。


その人はこの国の姫であるステラリーシェ・ジャスティン・ローズマリー・アルテシアであり、何人かの従者を連れこの場に訪れていたのだった。


周囲の騎士が驚いている中、ヴァレンシュは慌てた様にステラの傍に寄ると跪く様に礼を取った。

ステラはそんなヴァレンシュの行動に苦笑する。


「ひ、姫様、なぜこのような場所に足を運ばれたのでしょうか?」

「ふふ。いえ、この度召喚されし方々の御力を見ておきたいと思いましてね。こうして足を運んでみたのですわ。魔法組の方々を先に見ていたのでこちらには少し遅くなってしまいましたが……どうやら間に合ったみたいですわね。…えっ!?」


微笑みと共にこれから手合わせを行う【勇者】と言う特別な称号を得た神童正儀にステラは目を向け言葉が途切れ驚いていた。その驚きは正儀が持つアーティファクトデステニーにあった。

そのステラの驚きを察するヴァレンシュ。

ステラにとって正儀が持つその黄金剣が特別な思いが籠っているのを知っているからだ。


「まさか、あの子の剣を勇者殿が所持するなんて。ああ、これも導きなのでしょうか」

「それに関しては何とも言えません。しかしこれより彼と手合わせを行い彼があの剣を持つに相応しい者か確認して参りましょう」

「よろしくお願いしますね。我が国最強の騎士よ」

「御意に!」


ヴァレンシュはやる気を漲らせる。敬愛する姫様から送られた言葉に彼のやる気を上げるのは十分効果があった。


「君には悪いが俺も全力で挑ませてもらうぞ。……何故貴公がこちら側に来ているのだ」


ステラ姫に気を取られ周りに不注意だったヴァレンシュは今更ながらに何故姫様と一緒に此処にいるのかと怪訝そうな表情を浮かべ訊ねる。

白いローブを纏っておりフードで顔をほとんど隠している女性。魔法に関して抜きん出たし才を持っており、その実力を買われ今回の”召喚儀式”を任されたほどの者。

今回の魔法組の指導を任されてもいる。

その指導を行っているはずの彼女が何故戦闘組の方に来ているのか疑問だったのだ。

その問いに女性はフードで隠れていない口元を笑みの形にしつつ声にした。


「騎士長殿。どうでしょうか?この度呼ばれし者達の連度は?」

「…白の魔導師殿。何故こちらにと俺は聞いているんだが?此方の事より自分の方はどうされたのだ?」

「あら、私の方は予定を終えましたわ。今頃、教え子達は魔力切れで夢の中にいるでしょうね、ふふ」


笑みと共に返す白の魔導師と呼ばれし女性。

“白の魔導師”と呼ばれる女性は20代くらいで女性らしい出るとこがでている体型の持ち主であった。常に白いローブを纏い、白魔法を得意としている事からそう呼ばれている。

ヴァレンシュにとってはキナ臭い女と言う感じをしていた。いつもフードで表情を隠しているのも要因だったりする。

1年前に突如現れ、瞬く間に特別魔導顧問の地位に着いた謎の女性。

昨日の召喚時には別の用事とやらで王都を離れていた為参加できなかったようだ。

笑みを浮かべていた白の魔導師は周囲を見回した後、小さな声で「いない…間違えた?」と若干首を傾げながら呟いた。

怪訝そうにヴァレンシュは魔導士の女性を見つめていると、女性も気付いた様で微笑んだ後「では…」とヴァレンシュとステラ姫に礼をした後訓練場をあとにした。


ヴァレンシュはあの女の奇行はいつもの事と気にしない事にして首を振ると、気合を入れ直し改めて正儀との手合わせに向かった。



(さあ、見せてください。この世界を救う可能性を秘めた“勇者”様の御力を…そしてあの子の剣がアナタを選んだのかを)


勇者として召喚された神童正儀とヴァレンシュ騎士長の手合わせが始まる。

ステラは【勇者】として呼ばれた正儀の実力や他の“加護”を受けし者達の実力を把握しておきたいと思っていた。

ステラにはどうしても成した事があった。

それは自分の弟を殺したあの憎い魔人族の王【魔王】を討ちたいと考えていた。

そして諍いの絶えないこの世界を平和に導くものを切に望んでいた。

【魔王】を倒す事が出来るのはこの国に封印されている”聖剣“を置いて他にない。そして今回行った”勇者召喚“には”聖剣“の担い手も含まれているはずなのである。

ステラの考えでは”勇者“の称号を得た者が”聖剣”の担い手に選ばれると考えていた。だからこそステラは“勇者”として召喚された正儀に期待していたりする。

正儀の姿を見てステラは驚いていた。

彼の手にある黄金の剣。

その剣はステラの今は亡き弟が持っていた剣だったからだ。

ステラは天明を受けたように感じた。

世界を平和に導く勇者にあの子の思いが宿った、そう思えたのだった。



【勇者】正儀と王国最強の騎士であるヴァレンシュの手合わせが始まる。


「さあ!正儀君から撃って来るといい。君の力を存分に俺に、そして姫様に披露してくれ!」

「なんだか凄いやる気ですね騎士長。まあお言葉に甘えて、俺から仕掛けさせて頂きますねっ!」

「ああ、来いっ!」


こうして勇者と王国最強の騎士がぶつかり合った。


正儀は内なる魔力を開放し身体能力を強化できる“魔力放出”を発動し両下肢に魔力を籠める。まずは正攻法にと一気にヴァレンシュとの距離を詰めた。

両手で握った剣を正眼の構えから気合の籠った叫びと共に振り下ろした。


「てやぁあああぁ!」

「真正面からとはその迫力は良いが正直すぎだ。受けるのは簡単だぞっ」

「いえっ、騎士長!貴方は俺の狙い通り受けに回ってくれた!」

「なにっ!?」


ヴァレンシュは正儀の打ち込みを右手の剣で受け止め合わせようとした。

しかし、ヴァレンシュの剣は正儀の剣を受け止める事は出来なかった。

何故ならヴァレンシュの剣が正儀の剣を受けようとした部分からまるで紙を切ったかのように切断されたのだ。


正儀の勇者剣技【断裂】:魔力を籠める事で剣にあらゆるものを切断できる特性を与える。


ヴァレンシュは驚愕と抱きつつ瞬時にバックステップで後方に下がり正儀との距離を取る。そして己が剣を見て戦慄した。その手にしている綺麗に断裂された剣を。

ヴァレンシュは断裂された剣をそのまま捨てる様に手放す。そして首元から黄色い宝石のようなペンダントを取り出した。


「まさかコイツをいきなり見せる事になるとは、いやはや、末恐ろしいな。勇者ってのも伊達ではないようだ」


まさか初日にこれを使うとはともしかしたらと想定してはいたのだが思わずヴァレンシュは溜め息を付いた。


そう言うとヴァレンシュは右手に黄色いペンダントを強く握ると「“解放”」と唱えた。すると右手に握っていた黄色のペンダントは光り輝きその姿を変えていく。そしてそれは一振りの黄色い長槍へと変わった。


「…その槍は?」

「これが俺の本来の得物さ。俺は、剣より槍の方が、適性があるんだよ。さあ行くぞ!今度は先と一緒とは思わないことだ!」


その言葉と共にヴァレンシュは正儀に駆け迫ると槍を突き出した。

槍による攻撃は基本、突きか、薙ぎ払う、の2種類に分類される。リーチの長さで相手の急所を的確に突き、間合いを詰めず離れずの状況を作る事が出来る。そんな武器なのである。

しかもヴァレンシュの黄色い槍は唯の槍ではなく魔艙と呼ばれる特別性のアーティファクトの槍なのである。


正儀は高速で突き出される槍を何とか躱した。正儀の表情は険しくその額には汗が浮かんでおり必死に躱すことしかできない。

唯、正儀にも思惑があった。それは鍔迫り合いにさえ持って行ければ、あらゆるものを断裁する事が出来る“勇者剣技・断裂”のある自分が有利と、躱し耐える様に一瞬の隙を待った。


正儀は幼い頃に早乙女嵐の道場で剣道の稽古をつけて貰っており武芸の心得があった。


そんな攻防が、体感で数十秒だが、経った時、ヴァレンシュは突きから上段からの打ち込みに戦法を変えた。

必死に躱しチャンスを待っていた正儀は「これを待っていた!」とヴァレンシュの振り下ろす黄色い槍の刃の一撃に己の黄金剣を重ね”断裂”によるカウンターを掛けようとした。

そしてお互いの刃が衝突した。


正儀はその時「勝った!」と口元に笑みを浮かべた。しかしそれは「どうして!?」と言う驚愕に変わった。

正儀の“断裂”は魔力を剣に籠めるだけあらゆるものを切断する勇者の秘剣なのである。

しかし、ヴァレンシュの黄色の槍は切断されることもなく、逆に自分の持っていた剣に衝撃が走り剣を握っていた両手に痺れが走った。


ヴァレンシュはその隙を逃さず、槍で正儀の剣を絡めとる様に弾き飛ばす。そして槍の切っ先を正儀に突き付けた。


「はあ、まさか訓練初日だっていうのに俺が本気になるなんてな。…【勇者】てのも本当に末恐ろしいな、全く」

「ま、負けました…」


正儀はいまだ痺れている両手を見つつ負けを認めた。そしてヴァレンシュに疑問を説いた。


「どうして、俺の“断裂”が騎士長の槍に効かなかったのですか?」

「なあにそれがコイツの特性だからだ。この魔鎗は特別性のアーティファクトの一品でな。この槍に触れたあらゆる魔力効果を封じ込め、そして逆に封じた力を衝撃として相手に変換できる代物なのさ」

「なるほど…そんな効果があるんだ。…俺も、まだまだだな」


模擬戦を終えた二人に周囲のクラスメイトや騎士達が拍手で迎える。

そんな中ステラ姫も拍手と共に正儀とヴァレンシュに近付くと称賛を述べた。


「素晴らしい一戦でしたわ。えっと、お名前は確か正儀様で宜しかったですね?」

「あっ、はい!」

「素晴らしかったですよ。まさか、ヴァレンシュ騎士長に本気を出させるなんて。彼が魔鎗を使うなんて滅多にない事なのですから。騎士長も我が国の最強の騎士としてよく魅せてくれました」

「きょ、恐縮です、姫様!」

「ふふっ、そんなヴァレンシュを本気にさせた貴方の今後に期待させて頂きますわ。その手に掴む剣と共にね、正儀様、ふふっ」


ステラ姫の笑みに正儀は顔を赤らめた。

そんな様子の正儀を見つめた後、踵を返すとステラは、


「良かったです…これで、後は、聖剣の使い手の選定…」


と呟きつつ従者と共に出口の方へと歩んでいった。

そのステラの表情は嬉しさから満面の笑みを浮かべていた。


だがこの後、ステラ姫やヴァレンシュを含む王国の者達にとって想定外の事態に会うのだが、それはほんの少し後の話である。

・・・・・・


おまけ~鑑定品~

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名称:刻夜こくよ

種類:アーティファクト

レア度:Ⅶ

所有者:神童咲夜シンドウサクヤ

詳細:アルテシア王国の宝物庫である武器庫に保管されていた武器の一つ。形状は黒い曲線を帯びた短剣。なぜか名称が日本名。咲朱さきしゅとは二刀一対の剣である。

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名称:咲朱さきしゅ

種類:アーティファクト

レア度:Ⅶ

所有者:神童咲夜シンドウサクヤ

詳細:アルテシア王国の宝物庫である武器庫に保管されていた武器の一つ。形状は赤い曲線を帯びた短剣。なぜか名称が日本名。刻夜こくよとは二刀一対の剣である。

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名称:黄金剣【デステニー】

種類:アーティファクト

レア度:Ⅶ

所有者:神童正儀シンドウマサキ

詳細:アルテシア王国の宝物庫である武器庫に保管されていた武器の一つ。形状は西洋剣。黄金で出来ており、所有者に勝利を齎すと言われていた運命の名を冠する剣。先代の持ち主はアルトシア王国の王族の弟であった。

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名称:魔槍

種類:アーティファクト

レア度:Ⅶ

所有者:ヴァレンシュ

詳細:アルテシア王国の宝物庫である武器庫に保管されていた武器の一つ。ヴァレンシュが騎士長に就任した際に贈られた特別な黄色い槍。

能力:魔封じ

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