2章ー④-外伝:その頃の召喚組➁…フフフ…どうして、女の子から君の名を知るのだろう?

聖剣選定の次の日。

私は今、城門にいる。

これから五条院グループに付いて旅立つ啄木鳥雫きつつきしずくの見送りの為だ。


「そう…気を付けていってらっしゃい、雫。無茶はしないようにね」

「うん…咲夜さんもね。…クウハク君を探すの、頑張ってね。こっちでも、手掛かりがあったら教えるね」

「ありがと……ほら、もう行きなさい。あの傲慢Arrogant女、こっち睨んでるわよ」

「わわ!ほんとですね…では、行ってきます」


そう言って、雫は五条院グループと合流して旅立っていく。


このあと、私が雫と再会したのは、この時はまだ名の知らない『彼』と共にいる時だった。



私も準備を済ませると、正儀のグループと騎士長と合流する。

まずは、彼が最初に向かった宿に行く。そこで彼の向かった方を確認する。


「…皆さん、気を付けてくださいね。危ないと思ったらすぐに逃げて下さい。命は1つなのですからね?」


送りに来たのは私達の先生である繚乱花恋りょうらんかれんだ。

どうやら先生はこの国に留まる事を選んだ生徒と共にいる事を選んだようだ。

全ての生徒が快く旅に出る訳ではなかった。幾人かの生徒はやはり闘いなんて無理と拒絶したのだった。

まあ、その中には先の実地訓練で負傷した福田守ふくだまもる相楽命さがらみことも残っている。守は自身の“加護”をもっと有効的に使える様になってから旅に出るつもりのようだ。命はその守と共に出る気のようだ。

なんとなく、あの一件から命の守を気に掛ける姿をよく見かけた。

守は命にまだこれと言った感情は抱いていないようだが、命はバレバレだった。守に惚れているのがすぐに分かった。チョロインである。

まあ、自分を犠牲にしてまで助けてくれた相手だ。想う所が出ても不思議ではない。


私は意外にも相楽の思いに何だか共感を得ていた。

私も、どうしてか彼の、名無し君の事が気になって仕方ないからだ。

勿論Loveではない。友情Friendshipから…興味Interestからだ。

私はチョロクないから。


「分かっています。気を付けて行ってきます。先生も残る生徒達の事宜しくお願いします」

「………」


何故、正儀が率先して言うのだろうか。

なんか面白くない。


「残りの皆さんや先生の方には我が国が責任をもって対応させて頂きますので、それではお願いしますね。どうか希望の可能性を持つあの方と共に!」


この場にいたのは先生だけでなく、この国の姫であるステラ姫も一緒だった。


「姫様、我命に掛けて必ずや連れ参ります故に暫しの猶予を。御前達!俺がいない間この国と姫を頼んだぞ!」

「「「了解であります、騎士長!」」」

離れた所に待機していた騎士達もヴァレンシュ騎士長の檄を受ける。


さあ、まずは宿に向かう。



宿に着いた私達は宿の扉を開け入る。

入ると元気な女の子の声が掛かる。


「いらっしゃいませ~あっ!ヴァレンシュ様ではありませんか、どうされたんです?」

「はは、元気で良い事だティファ。それよりなのだが、実は聞きたい事があってここに来たのだ」

「聞きたい事ですか?」


ティファと呼ばれた女の子は「なんだろ?」と不思議そうにしていた。


「…ん?あれ、こちらの方がは?何だかあの人と似てる気が」

「っ!」


ティファは私達に気付いたようだ。

そして、私達と“彼”に何かしらの既視感Déjà vuを得たようだ。

ヴァレンシュ騎士長が本題を切り出そうとした。

その時1人の女の子の声が掛かる。


「あら、ティファったら、こんなカッコイイ御兄さん達と楽しそうに会話してどうしたの?」

「あっ、セシリーさん。おはようございます」


新たに翡翠色の髪を腰まで伸ばした碧い瞳をした同い年くらいの綺麗な女の子が話に加わってきた。白銀の槍や防具から唯の民間人ではなく冒険者であると予想が出来た。

しかし、このセシリーって子、何処か貴賓差があるように感じる。元貴族か何かなのかな?そして何だかこの子も不思議な魅力を持っている、そんな気がしていた。

そして、私達に気付くとさっきのティファって子と同じく既視感Déjà vuを得たようだ。

つまりこの子も“彼”を知っているという事ね。

それにヴァレンシュも気付いたのか貴重な情報源だと彼女にも話し掛けた。


「何方かは存ぜぬが先に名乗ろう。俺はヴァレンシュ。この国の騎士長をしている。よろしく頼む」

「あぁ、丁寧な名乗りに感謝をぉお!?ま、まさ、か、この国の騎士達のトップであるヴァレンシュ騎士長ですかぁ!?」

「俺達も名乗った方がいいかな?俺は神童正儀しんどうまさき。一応勇者として呼ばれた者です。よろしく」

「あぁ、こちらも丁寧なぁあ!?ゆ、勇者!?勇者ってあれですか?魔族との闘いに終止符を打つために呼ばれたって言う?最近、発表された?」

「うん、恐らくそうだと思うよ」

「では!あなた方3名も同じく勇者様で?」

「いえ、私達は勇者ではないわ。少なくとも召喚された者ではありますけど…」

「ほえ~」


なんかこの子面白いわね。理知的な雰囲気だったけど意外とからかうのが面白そうな人物だ。


ヴァレンシュ騎士長が代表として、彼女達に此処に来た理由を説明し始めた。


「はぁ~、成程ですか。彼、オウマもその一人だったんだ。道理で強いわけだ」

「オウマ…それが彼の名前なのか……」


セシリーから告げられ始めて知る彼の名前。

『オウマ』どう言うLetterをしてるのだろうか?

だけど、……なんでだろ?……なんだか面白くないわね…えぇ、面白くないわ。

私に教えてくれなかった名前を彼女達にあっさりと教えている事に。

何だか……フフフ!


「……なんか、この娘怖い」

「…咲夜。暗黒面ダークサイドが出てるよ」

「アラ…」


++


「…あぁ、と言う訳で、俺達は彼の居所を知りたいのだ。向かった方向でも良い、知っていたら教えてほしい」

「…まあ、口止めされた訳でもないし良いですよ。オウマは北の方にある町【エルドラ】に向かったはずですよ。そこで冒険者として登録すると言ってましたから」

「…エルドラか。ありがとう、とにかく我々はエルドラに向かうとしよう。彼が向かったのは数日も前。そこにいる保証は少ないが情報は少なからずあるだろう」


ヴァレンシュの声に私達も頷きエルドラに向けて旅立つ為宿を出ようとしたのだが、そこでセシリーが待ったを掛けた。


「あの、少し待って頂けますか?私も同行しても宜しいでしょうか?」


意外にも同行の言葉だった。

聞いて見ると、丁度セシリーもエルドラに向かう依頼を受けたとか、あと私達に対しての興味から同行したいとの事だった。


私達は話し合った結果同行を了承した。

特に私が同行に賛成した。

彼女からは色々他にも聞けそうな面白そうな話題がありそうだと私の直感が告げていたからだ。


こうして、咲夜、正儀、ヴァレンシュ、早乙、東城、セシリーの6名でエルドラに向かう。


さあ待ってなさい、オウマ!

今度は貴方のフルネームを教えて貰うわ。

今度こそあなたの口からね♪


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