2章ー⑤:っ!?何故寒気を感じるのだろうか?…まあ、気にせず冒険するか

船旅も問題なく(途中マナとカナが船酔いになったり、海賊船が襲撃して来たが、自分たちを狙ってくる連中は海に殴り、蹴飛ばし叩き落としてやった)目的地であるゲルフェニード大陸―別名“迷宮大陸”―に降り立つ惶真達。

船から降り、一先ずはこの港から一番近い【シェファード】と言う街に赴こうと歩き出そうとした時だった。


「っ!?…(な、なんだ?今、背筋がゾクっとしたぞ。…なんだ、この寒気は?)」

「ん?…どうかしたぁ、オウマぁ?」

「ん?…何かあったの、御主人様?」


惶真は、何故か解らないが、突然背筋が凄くゾクっとする様な、嫌な悪寒を感じたのだった。

本人知らぬがなんとやら……惶真が悪寒を感じた同時刻、とある同郷のクラスメイトである暗殺技能少女アサシンガールが、隣大陸である【アステリアヌス大陸】にあるアルデシア王国の、とある宿屋にて、自分には教えてくれなかった真名を、他の女性に教えていた事実を告げられた事に、嫉妬の感情を芽生えさせた所だった。

そして、「フフフ…」とその少女の周囲の人が目を背ける様な笑みを浮かべているのだった。

少々『ヤンデレ』の『ヤン』に目覚めそうな雰囲気を醸し出した事を知らない事だ。


そんな何処からか悪寒を感じた惶真を、惶真の左右に同行している少女達から、急に身震いした惶真に心配そうな声を掛ける。

肩くらいの赤紫の髪をアップにし小さいポニーテールにしているマナ・リア。勝気そうな金の瞳。肌は白く透き通っており美白の肌と言った所だろう。マナの衣服は、旅をしている者とは思えない様な赤いドレス風の衣装を纏っている。

同じく、肩くらいまでの紅い髪をしているカナ・リア。双子の姉妹故に顔立ちはほぼ同じだが、カナはマナよりおっとりとした金の瞳をしている。マナ同様に瑞々しい白い肌、そしてマナと違い、一部自己主張の大きい部分(胸)をしている。此方も旅をしている者とは思えない白と紺のメイド風の衣装を纏っている。

この二人はただの少女ではない。

それはこの二人が人間ではなく魔人族と言う異種族なのだ。

そして2人の種族である魔人族は人間と友好関係にある種族ではないのだ。

魔人族である2人の特徴である尖った耳と頬にある紋様は、2人の着ている服に掛かっている“隠蔽”の力で隠されている。視えていれば確実に一悶着が起きる。

そして、今のマナとカナは、本来の姿である幼女ではなく、惶真と同い年くらい少女の姿をしている。


「……いや…何でもない。気のせいだろう……」

「「そう?」」

「あぁ……さあ、気を取り直して、まずはこの地図にある【シェファード】って街を目指すぞ」

「「はぁい『なの』!」」


心配そうな二人に大丈夫と笑みを向けた後、(まあ、気にしても意味はないか)と切り替え、惶真一行は【シェファード】を目指して歩く。

目的は【シェファード】にある冒険者ギルドに赴いて迷宮攻略依頼を行う為だ。


歩きつつ惶真は【エルドラ】の町で『インテリジェントソード』に諭され購入した地図を見ていた。マナとカナも左右から惶真に寄り添うように地図を覗きこむ。



この世界パルティスには幾つもの大陸が存在する。

情報によれば、この世界の大陸は、元は1つの大きな大陸だったそうだ。

だが遥か太古の時代に、この世界パルティスを生み出した【創造神】と【破壊神】の”神罰“によって、一つだった大陸は複数の大陸に分かれた、との事だ。


(…そんな昔のことまで知ってるなんて。ほんと良く知ってるな、ホントに)

“キョウシュデス/テレテレ”


照れてる『剣』を気にせず、


“…ウぅ”

(っ、わかった!あ、ありがとよ)

“テレテレ♪”


と心の中で遣り取りをしつつ地図を見る。

地図によれば、分れた大陸の中で大きい物を確認する。

確認すると大きい大陸は5種類ほどだ。

1つは、俺が巻き込まれた“勇者召喚”を行った【アルテシア王国】が治める大陸。

大陸名は【魔王を討ちし聖剣の眠る地“アステリアヌス”】。

この世界のほぼ中央にある大陸で、この地には“女神アテネ”と言う神格存在の加護を受けし“巫女”が存在する。

この”巫女”の役割を担っているが、王族であるステラ姫が現在担っている様だ。

“勇者召喚”も“女神アテネの神託”によるものだ。


次は、アルテシア王国の城下町で出会った自分達と同じ未覚醒だが"恩恵”を有する冒険者の少女、セシリーの故郷である【レグナント王国】がある【レグスフォート】と呼ばれる大陸だ。

嘗て起きた神々の戦いにおいて、【叛逆の神】と呼ばれている7つの神。その神々は、人々からは【悪神】として認識されているそうだ。

だが、その7つの神の中で、唯一崇拝されている神がいる。

それが聖地にもその名を模している【女神・ネクロバレー】である。

あらゆる不浄を清めると言われており、この聖地ネクロバレーには魔物や悪心ある存在と言う者は近づく事が出来ないと言われており、この聖地ネクロバレーに隣接している【レグナント王国】は【“聖なる王国”】とも呼ばれていて、神聖な地として有名なのだそうだ。


傍に寄り添うように地図に視線を向けているマナとカナも、初めはこの地に用があった。

2人は、その身を蝕んでいた“呪い”を除去する為に聖地ネクロバレーを目指していたのだ。

だが、惶真の得た能力のおかげで”呪い“の浄化封印に成功した事で、ネクロバレーを目指す必要は無くなった。

まあ、少し興味もあるし、俺の目的であるこの世界を回るのもあるので、訪れるかなと考えている。


次が、現在、俺達が立っているこの大陸だな。

【ゲルフェニード大陸】

この地は一つの大きな島と3つの島々で構成されている。そしてその4つの島には多くの大小の迷宮が存在する故に“迷宮大陸”と呼ばれている。

その迷宮は、山脈であったり、洞窟遺跡であったり、海底洞窟や遺跡と色んな迷宮が存在している。

力や名声を求めて多くの冒険者が訪れる地でもある。それ故に気性の荒い者や力に溺れる者が多いとも言える。

そんな者が多いこの大陸を大きな島から周囲の島々を支配しているのが、【バニシング帝国】だそうだ。

正直この国の事を“剣”に聞いて良い印象はないようだ。

元々この大陸は【バニシング帝国】と、獣と人が融合した種族である獣人族の国があったそうだ。その両国は互いに同盟を結んでいた友好ある関係だったらしい。

だが、ある時に帝国は突如として獣人の国を襲撃し滅ぼしたのだそうだ。

戦いに敗れ国を追われた獣人族達は大陸の小さい周辺国に身を寄せる事になったみたいだ。

どうやら中には、人間の中で正体を隠しながらひっそりと暮らしている者も居るらしいが。

それと、この世界では獣人族は迫害の対象と認識されているようだ。

“獣交じり”、その様に蔑みの様に扱われるのだ。

そして、帝国では著明に獣人を迫害する傾向がある。また奴隷制度もあり帝都に近付くに連れ人攫いやそう言った職業の者達がのさばらしている、そんな大陸である。正直言い印象はない。

まあ俺達がいるのは帝国本土ではなく、残りの3つの島で一番小さい島【ガルテノン】である。

このガルデノンは山脈地帯が多い島である。


そして大陸を追われた獣人達が小さめの大陸に作った国【ドグドニラ】。


そして、マナとカナの故郷でもある、人類から敵性存在と認識されている魔人族が支配する大陸。その名は【ヤハンテイムス】。

この地は、魔人族の王である『魔王』が支配者として君臨しているらしい。

まあ、関わりになる事もないだろうし、もしも掛って来ても返り討ちにするだけだな。


他にも小さい国があるが有名所は今挙げた所らしい。


+++


地図を見終えた後、3人はのんびりと歩きながら30分程で、【シェファード】の街に到着した。

さっそく冒険者ギルドに向かう。

そして冒険者ギルドに入る。

入ったんだが、受付に2列になっている冒険者がたくさんいた。

並ぶのがなんか嫌なんだが、並ばないと受付で登録できない。


「はぁ、仕方ない。…並ぶか…」

「いいじゃない、のんびり待ちましょ」

「うん、並ぶの」


この大陸では迷宮探索や攻略を受ける際にはギルドを通じて登録する必要があるようだ。

流石に冒険者が多い地だと思う。

並び始めて20分は経過してようやく俺達の番が回ってきた。


「ようこそ、冒険者ギルド・シェファード支部へ。迷宮攻略が目的ですか?」

「ああ、そうだ」

「ではアナタ方のクロノカードを提示して下さい。迷宮の紹介はその冒険者のランクに応じてしますので」

「そうか…」


受付の女性に確認するとクロノカードの提示を求められた。

どうやら冒険者のランクで紹介される迷宮が変わるようだ。

正直あんまり期待できないな、今の俺のランクは最初の『赤』だし。

クロノカードを取り出すと受付の女の人に渡す。それを受け取り確認した受付嬢は「はい」と頷くと、


「…赤、ですね。……では、こちらで良いでしょう」


やはりと言うべきか受付の女性から紹介されたのは、『赤』のランクの冒険者用の50階層の洞窟迷宮だった。

迷宮名は【ガルダ】と言うようだ。


余談だが、この世界に存在する迷宮には2つの階級がある。

50階層から100階層までを『迷宮』と呼び、100階層より深い場所や強力な魔物が存在する場所は『大迷宮』と呼ばれている。


「まあ、力試しが目的だしいいか…」

「受けられるのは…アナタ方3名ですか?」


他はどうか知らないが、この大陸のギルドでは冒険者ランクでどうやら職員の対応の違いもあるようだ。

先程俺達の前に対応していた冒険者には様付けしていたからな。

「…目的達したらこの国、さっさと去る方が良いかな?」そんな風に思う惶真だった。


「あぁ。俺とこの2人の3人だ」

「分かりました。……しかし若いパーティですね。まあ、死なない程度に頑張って下さい。…そう言えば、そちらのお嬢さん達のランクは?」


マナとカナの冒険者ランクを聞かれた。

因みにマナとカナは”幼女モード“でなく”少女モード“に覚醒したままである。迷宮探索に参加中に他の眼もあるかもしれないという懸念からである。

まあ、隠蔽効果が付加されているので2人の正体が露見する事はないと思うが、念の為である。

意外と周囲と言うか、このギルドに入った時から冒険者の男共から、特にカナを見る視線が露骨だった。

なんか不愉快に思う惶真だった。

マナとカナもその不躾な視線に不愉快そうな表情だった。


「いや、この子達は冒険者に登録はしてない。登録していない者は受けられないのか?」

「いえ、チームのうち一人でも登録されていれば問題はないわ。……まあ、頑張ってください。…はい、こちらをどうぞ。迷宮情報が記載されていますので確認しておいてください。…ちなみにその迷宮との間に村があります。そこを経由するといいですよ」


……なんか意外だった。助言してくれるなんてな、と。この受付の人。まあマナとカナをチラッと見ていたし、なんとなくマナとカナの為っぽいかな。同じ女性だからかなと考えた。

この2人が人間の天敵である魔人族と知ったらどうなるかな?クク…


「オウマ?…何か良くない事考えてない?」

「御主人様…悪い顔してた……」

「……なんのことだ」


おやおや、顔に出てたか。

まだまだだな。

ジト~とした眼で俺を見つめる2人に気にせず、冒険者ギルドを出る。


迷宮攻略に必要な物は既に港町で購入しているのでこのまま出る。


取り敢えずさっきの受付の人が言っていた村に立ち寄る事にした。

そして町を出るとマナ、カナと共に村に向かって歩いて行く。


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