1章-⑨:エルドラ…フロ風呂(^^♪

~~~~

無事にギルドにて登録と換金を終えて出る。あと20分程で入浴時間となるので取り敢えず適当に目に入った服屋に入った。


服屋に入ると置いてある服に目を向ける。そこに置いてある服は、素材はよく解らないモノのようだが、服の形そのものは地球の物と変わりないように思えた。

取り敢えず目に付いた服を選んでいく。

動きやすさ重視で、特に鎧とか着けるつもりないので、灰色のTシャツと白のノースリーブのシャツに、黒のジャケットと長袖の上着、そして黒のズボンを2着、それと靴を選んだ。

あと、小物を収納できるウエストバッグを選んだ。


因みにマナとカナにも一着ずつでいいなら買ってやる、と言ってあるので、現在あれこれと選んでいる最中だ。

買ってやると告げると、


「い、いいよ!これ以上は、だって…」

「私達、何も返せないの…」


と、物凄く申し訳さ気に遠慮されたが、気にするなと押し通した。マナもカナも今着ている修道服っぽい服しか持っていないようだった。


「うん、これに決めた♪」

「うん、私も、これにするの♪」


どうやら決めたようだ。嬉しそうに抱えているその服に目を向ける。

マナは赤を基本色としたドレス?のようなヒラヒラとした服を選んだ。

カナは白と紺色のメイド服?のような服を選んだ。

……なぜ、ドレスやメイド服なのか…まぁいいか。本人が気に入ってるんだし良しとしよう。なんとなく2人に似合っている気がするな。

あと、俺は同じものを大人用で購入するように2人に言った。2人とも不思議そうにしていた。

まあ、後でわかる事だし、今は秘密にしておく。


選んだ服の会計をした後、3人は宿【イザベラ】に戻った。


そして、待ちに待った入浴の時間だ。

家族浴は裏手の様なのでそちらに向かった。

風呂場の脱衣所に入ると誰も入れない様に、扉に貸し切りの札を掲げ、念の為、鍵をしておいた。


惶真は早速と上着の制服を脱いでいく。そんな様子にマナとカナは顔を真っ赤すると慌てた様に後ろを向いた。


「ん?どうした?」


怪訝そうに聞くと2人はこちらを向くことなく、


「「あ、あとから行くから、オウマ『御主人様』は先に行ってて」」


どうやら恥ずかしいという事らしい。惶真は気にしていなかったが、2人の見た目は子供だが中身は100歳を超えているだ。子供と言えはしないのであった。


「…わかった。…じゃ、後でな」


言うなり惶真は「そんな事か」と、他の衣服を脱ぐと備え付けられていたタオルを巻いて風呂場に入っていった。

惶真的に年齢詐欺だろうがどう見てもマナとカナはただの子供にしか認識にていないので羞恥することもなかった。


惶真が風呂場に入りに行った後、マナとカナはいそいそと着ている服を脱ぎ始めた。

まず羽織っていた白いフードローブを脱いだ。

とたんに、ローブを脱いだことで“隠蔽”効果がなくなり魔人としての姿が著明となる。

着ていた修道服も脱ぐと下着姿となった。

それも脱ぐと備え付けの大きめのタオルを巻くと、マナが扉を少し開けて風呂場にいるであろう惶真に声を掛けた。


「オ、オウマ~」

「ん~?どうしたぁ~いい湯だぞぉ、お前達も入って来いよぉ~」


どうやら惶真は既に湯に浸かっているようだ。ゆったりとしている感じで凄く機嫌がよさそうだ。出会ってまだ少しの間ではあるが2人はこんなに機嫌の良さそうな惶真の声を聞くのは初めてかなと思った。


そんな惶真に今度はカナが声を掛けた。


「そのぉ~御主人様ぁ~」

「だからどうしたぁ~」

「そのぉ~今からそっちに行くから~後ろ向いててほしいのぉ~」

「あぁ、後ろ向いてるから、良いぞぉ~」


その言葉に2人は恐る恐る足を踏み入れた。


家族浴用の風呂場は結構な大きさで5人くらいが一緒に入れるくらいだった。


そしてその言葉通り惶真は後ろ向きに湯に浸かっていた。

2人はまずお互いに軽く体を洗いあった。

身綺麗にと濡れたタオルとかで身体を拭いてはいたが完全に汚れを取れているとは言い難かった。汗とかも掻いていたので湯に浸かる前にと考えたのだ。

そして洗い終えた後、2人は頬を赤く染めつつ緊張した面持ちのまま、惶真の左右にそれぞれ湯に浸かった。

カナ、惶真、マナの順である。

マナとカナは真っ赤な顔で、隣で肩くらいまで湯に浸かりリラックスしている惶真を眺める。

自分達が湯に浸かる時も特にアクションがなかったので気になったのだ。

ほんのり自分達はこんなにも緊張しているのに!ちょっとは気にしてくれてもいいのに!と言うちょっと不満があったりする。


(ふあ~これが男の人、なんだ~)

(む、昔に見たことあるお父様とも違う気がするの~)


生まれて間もない、まだやさしく接してくれていた頃の父と惶真を摺り合わせる2人。

マナとカナは惶真をじっと眺める。

その印象は不思議であった。

惶真の身体は戦士のような筋骨隆々と言ったものではない。寧ろ細身の印象の方が強い。

だと言うのに、惶真は相手をまるで赤子のようにあしらうほどの能力を秘めている。

マナとカナは不思議だなと思いつつ胸や肩部分から惶真の顔に視線を上げる。横顔を覗くと、どうやら惶真は目を閉じながら何やら呟きながら試行錯誤しているようだった。

マナとカナは「どうしたんだろ?寝てる?何か考えているのかな?」と思い惶真に声を掛けた。


「オウマ、どうかしたの?」

「寝てない、よね、御主人様?」

「ん?あぁ、なんだ、どうした?」

「いやぁ~なんか考えてるのかなぁ~と思ってさ~」

「あぁ、どうやらここの湯は疲労回復に、魔力回復の効能があるようなんだよ。回復薬でそれなりに回復はしてたが、やっぱこう自然の中の方が効果があるようでな。あとちょっと考え事をしていた」

「考え事?」

「あぁ。この後ちょっと試してみたいことがあってな。それについての構想を練っていたってだけだ。俺に気にせず風呂を楽しめ」

「そうなの…」


そんな感じでのんびりと浸かっている3人を傍から見れば立派な兄妹にしか見えないであろうか。


十分に湯を満喫した惶真は湯から出ると体を洗おうと洗い場に赴く。すると何故だかマナとカナも一緒についてきた。その姿は御互いにタオルをしっかり纏っている。マナー違反だが仕方ないと惶真も割り切った。

一緒についてきた2人を背中越しに怪訝そうな表情を浮かべる。


「どうした?二人も一緒に来ることはないだろう?ゆっくり浸かっててもいいのに」

「それは、えっとね…オウマのね…」

「その、感謝の気持ちを伝えたいの…」

「「だからオウマ『御主人様』の御背中を流したいの!」」

「……そ、そっか…まあ、2人がしたいならいいぞ、頼む」

「はい『なの』♪」


どうやら今までのお礼として背中を流したいようだ。

惶真はほんの少し気恥しい気持ちになったが、子供の頃、自分も両親に感謝を込めて背中を流したことを思い出したので、2人に任せる事にした。

当然だが、2人に任せたのは背中だけだ。二人は前も洗いたいとか言ってきたがハッキリと拒否し前は自分で洗った。

マナとカナ、特にカナが何だか残念そうにしていた。


そして最後にもう一度湯に浸かった後、マナとカナが異性の前で着替えたりするのは気恥しいと、惶真が先に上がり着替えた。勿論、着替えたのは先程の服屋で購入した服だ。


着替え終わったその姿は、ほぼ黒一色と言えた。

首元が少し割けている灰色のTシャツに、黒い上着、そして黒いズボンと言った出で立ちだ。惶真自身が黒い髪と目をしているのでより一層そう見えるのだった。そして購入したウエストバッグを着け、『剣』を帯剣して着替えを終えた。

着替え終えると、ずっと待たせていた『剣』に意思相通する。


(悪かったな。待たせたか?)

“イイエ。ワタシニジカンノ、ガイネンハナイノデス。マスターガ、タノシマレタノデアレバ、ソレデヨイデス”

(いいヤツだな、お前。剣にしとくには惜しいな、ホント)

“ソレホドデモ~”


何だか照れてるな…ほんと勿体無い気がするな。


『剣』との疎通後、惶真は風呂場の方に「着替え終わったから外で待ってるぞ~」と中にいるマナとカナに一声掛ける。


「「は~い!」」と2人の答えを聞いた後、惶真は脱衣場から出た。

そのあと2人も風呂から脱衣所に出た。

そして惶真に買ってもらった服を着ようとした時に、服と一緒に一枚の紙が置いてあるのに気付いた。

その紙には『この服には“隠蔽”効果を付与しておいた。だから一々、あのローブを身に着けなくてもいいぞby惶真』と書かれていた。

本当なのかな?と思うも取り敢えず着替えるのだった。


着替え終わった後、本当に"隠蔽"されているのか?と自分達が魔人族だと分からないのだろうか?と緊張しつつ、2人は惶真に逢う為外に出るとそこには何かドリンクを飲んでいる惶真がいた。マナとカナはいそいそと惶真のとこに駆け寄ると何か期待した眼を惶真に向ける。


惶真は2人を待っている間にフルーツジュースの様なものを小さな売店で購入した。それを飲みつつ待っているとマナとカナが駆け寄ってきた。

2人に視線を向けその姿を捉える。

マナはその紫の髪をアップにしており、見た目的に小さいポニーテール様だった。そして、先の店で購入した赤いドレスを纏っていた。惶真の眼にはマナが小さい王女様のように見えた。

カナは、朱色の髪型はそのままの様だが、こちらも同様に先に購入したメイド風の服を着ていた。惶真は奉仕好きと思われるカナに良く似合っていると思った。

そして2人共外見は人間と見間違えないように見える。他の客もいるが特に気にしていないように見える。どうやら“隠蔽”は問題なく効いているようだ。

惶真は新たに得た“能力付加”の効果を使って二人の服に白いローブに掛かっていた“隠蔽”の能力を移植付加させたのだ。これで一々顔を隠す必要がなくなったのだ。

そして問題なく機能している事に満足すると、ふと2人がまるでキラキラした眼を自分に向けているのに気付く。


なんとなく意図を理解したが惶真は特に何も言わずに今日泊まる部屋に向かって歩き出した。

そんな惶真を2人は頬を膨らませる様に「如何にも不満だよ!」と、ジーと惶真の背中を見つめた。

そんな2人の無言の抗議を含んだ視線に頭を掻いた惶真はボソッと背中越しに「似合ってるぞ」と言った。

言った後、2人には聞こえたようで不満顔は消え去り「フフッ♪」と満面の笑みに変わった。

惶真は早歩きで部屋に向かった。マナもカナも「まってよ『なの』~」と後ろから小走りについてきた。

この時の惶真の顔は赤くなっていた。そんな惶真に『剣』がからかう様に意思を伝えてくる。


“テレテマスネ、マスター”

(うっさいっ!バカ剣!)


そんなこんなで部屋に戻った三人は一先ずそれぞれのベッドに入り3時間程眠った。

今まで野宿だったこともあり、暖かな布団は心地よく、特にマナとカナは直ぐに夢の世界に旅立っていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る