1章-⑥:意思のある剣…ロリじゃないだろ!?

【エルドラ】の町に向かう前に存在する森の入り口にて、事切れている風の1人の破損した鎧を纏った男が樹に背を預ける様な形で座り込んでいた。


「…なんでこんな所に?」


惶真は怪しいと言う不信感と、好奇心からの興味を抱かせるその男に警戒しつつ近づく。

確認して見て目の前の人物はやはり死んでいるようだった。

だが疑問が残る。なぜこんなところで?この男の鎧は破損している様だが、死体の男の顔や身体には外傷らしいものはそんなに見られなかった。

因みに人の生き死に特に思う事はなかった。

惶真にとっては他人がどうなっていようが、自分に関与する事以外は無関心と言う感じだった……


俺は確認を終え息絶え死んでいる男の傍に落ちている剣に視線を向ける。

またこの剣が何にか不思議な感じを匂わせる。

その剣は特に破損した様子もなく綺麗な状態だった。

形状は西洋風のブロードソードの様だが、その剣の先端近くにはまるで何かの眼の様だな?と思わせる変わった剣だった。

俺はその剣に興味が湧いたのでゆっくりと手に持ってみた。以前であれば鉄の塊である剣を持つのも苦労していただったろうが、今の俺のステータスなら重さもそれほど感じることもなかった。

俺は試しにと右手で握っているこの剣を水平に一振りすると心地よい風切音が聞こえた。


俺はこの剣が気に入った。

持ち主?かもしれなかった奴も死んでもういないことだし、と頂く事にした。

俺は事切れていた男に「これ貰うぜ!」と視線を向けようとして驚いた。なぜなら、先ほどまでそこにあったはずの死体の男が、まるで最初からそこにはいなかった、と思わせる様に消えていたのだ。


「――!?馬鹿な、一体ドコに!?確かに此処にあったはず…」


消えた男を探すように周囲を見渡すも特に変わらず今までのは夢か幻覚でも見せられていたのでは、と頭に浮かぶ。

ただ、今のが夢幻ではなく現実だったと実感させてくれたのは、今も俺の右手にある一振りのこの剣だけだった。

俺は取り敢えず、ここはファンタジーの様な世界だし?とこういった出来事が、不思議な事が起きたりする事があるんだと納得する事にした。

そして納得した次の瞬間だった。


『「キャーーー!!?」』

『グラアァアーー!!?』


目の前の森の中から大きく響いた、まるで恐竜パークの映画で聞いた様な恐竜と思わせる雄叫びと、女の子の声と思われる悲鳴が聞こえてきた。


俺はその叫びが聞こえた方に視線を向けると、俺はやっと“魔物”と言う存在に出会えるという思いで笑みを浮かべる。

そしてこの剣の性能を知る絶好の機会だと考えると俺は悲鳴の聞こえた森の中に足を踏み込んだ。


森に入ると同時に相手の気配を感知し位置を掴む事が出来る”気配感知”を用いてみると3つの反応を感じ取る事が出来た。

すると、もう一度大きな、先程と同じ、まるで恐竜の様な雄叫びが響いてきた。

俺はその雄叫びのした方に走り出した。


そして、気配を感じたその場に到着すると、そこにいたのは怯えたように震えながらしゃがみ込む様に抱き合っている2人のフードを被った隙間から見える顔つきから恐らく幼女と思われる女の子と、今まさに獲物である幼女2人を食おうとしている、大きな恐竜の様な顔に小さい体というアンバランスなティラノサウルスモドキが、その鋭い牙と大きな咢で目の前の少女2人に噛みつこうとしていた。


俺は”魔力放出”を発動すると自分の魔力を剣に籠めると同時にティラノサウルスモドキに向かって振りかぶった。

すると剣から魔力を衝撃に変換された衝撃波がティラノサウルスモドキに命中し横に吹き飛んでいった。


(>_<)(>_<)~

…今まさに「もう、だめ!」と自分達の最後と覚悟した2人のフードを被った少女達は、目の前で今まさに自分達を喰らおうとしていた存在がいきなり吹き飛ばされた様子に茫然となった。

そして「はっ!」と衝撃波が飛んできたと思われる方に顔を向けると、見慣れない服装を着ておりどう見ても冒険者や騎士とは思えない黒髪の人間の少年が剣を振り下ろしている姿が視界に入った。

2人は今まさに自分達を救ってくれたその人間に対して疑問に思った。


「「どうして『なの』?……」」


++++


吹飛ばされたティラノサウルスモドキは体を起こすと唸る様に自分を吹き飛ばした存在に向かって殺気を籠め咆哮した。


「ハハッ!最初に出くわす魔物がいきなり恐竜モドキとはなぁ…おっ! どうやら俺にくる気になったようだな!」


怒りを秘めた目を向けたティラノサウルスモドキはこちらに向かって咆哮した。

正面から相対すると正直笑みが浮かぶ。正面からだと大きすぎる顔のせいか首から下が隠れて見えない為ただの巨大な顔のようだったからだ。

そんな俺の笑みにさらに怒ったティラノサウルスモドキは俺に向かってその大きな咢を拡げながら突撃してきた。

その際、なんだか若干体が重いなと感じた。


ダイノボッドは突撃の勢いのまま、その鋭い牙で怒りのまま自分を吹き飛ばした人間に向かって噛みつこうとした。

しかしダイノボッドは噛み殺そうとした標的がその場に居らず、惶真を見失ったようで「何処に消えた!?」と言うかのように周囲を、首を振って探す。

その瞬間だった。上から1つの影が降って来た。


「ふっ!!」


ティラノサウルスモドキが俺目掛けて噛み殺そうと突撃してきた瞬間、頭に語り掛けてくる声を感じた。どこから?と疑問に思うよりも、俺は直感的にその声の主の言葉通りに自分の気配を薄くすることで周囲から自分の気配を消す能力“気配遮断”と脚力を強化する事が出来る“瞬歩”を発動すると、頭に響いてきた声に従い上空に飛んだ。

そして、飛んだ瞬間に先から俺に語りかけてきた声の主である『剣』で、俺を見失ったようで顔を振って俺を探そうとしているティラノサウルスモドキの頭目掛けて一気に下りるとその手の『剣』を両手で握りティラノサウルスモドキの頭蓋を貫いた。


数秒にも満たない間に、本来この世界では“恐怖の暴竜”と呼ばれるダイノボッドは自分がやられたと認識する事もなく絶命したのだった。


(>_<)(>_<)~

ズドン!!と大きな音と共にダイノボッドと名の魔物は黒髪の少年の握る剣を頭部から串刺しされ倒された。

その様子を見ていた、フードで顔を隠している見た目は8歳くらいの似通った顔をしている少女達は唖然と驚いていた。


「うそ!?あ、あのダイノボッドが…」

「うん…あっさりと、なの……」


ダイノボッドはこの世界に存在し周囲が認識している魔物の中ではかなりの脅威度があった。

実際、国の騎士や冒険者と呼ばれる職業の者達もダイノボッドを見つけたり、遭遇した場合、個人では攻めず複数で挑めと教えられるくらいの脅威があった。

しかし目の前の人間の少年は息を乱す事もなくあっさりとその脅威を倒してしまった。

2人はダイノボットを瞬殺したその人間の少年を茫然と見つめる。

その人間の少年は2人を気にする様子もなく右手に持っているなんだか不思議な感じがする剣の方に視線を向けており、少年が何やら頷くとその手の剣で絶命し倒れているダイノボッドの心臓部に位置している部分にある魔石を抉り取った。

そしてその少年は抉り取ったその掌はある大きめの真紅の魔石を手にすると2人に視線を向けることなく、気にすることもなく歩き出そうとした。

それを見た瞬間2人は思わず歩き出そうとしている人間の少年に声を掛けていた。


今まで見たこともない不思議な服を纏っており、あの“恐怖の暴竜”を圧倒的な実力で瞬殺した力量を持ち、そして、私達【魔人族】の天敵と認識されている人間の少年に……


++++


俺は頭に語り掛けて来た声に、『剣』の意思に従いこの恐竜モドキの魔石を抉り取った。

恐竜モドキの魔石は掌くらいの大きさでまるで血の色を思わせる綺麗な赤い色をしていた。


(これでいいのか?)

“イエス!ソレデ、イイデス『マスター』!”


この『剣』、不思議だったがまさか意思を持つ“魔剣”に該当する剣だったようだ。

先程もこの『剣』の意思に従い上空に跳躍し恐竜モドキを倒した。それに魔物に存在する、魔物にとって生命機関でもある魔石の取り出し方も教えてくれたのだ。


(いい拾い物ができたな)

“キョウシュクデス”


俺は良い拾い物が出来上機嫌のままこの森の先にある街【エルドラ】を目指して足を進めようとすると、俺を呼び止める声が聞こえた。

その声のした方に顔を向けると、そこにはフードで顔を隠した、微かに紫の髪と朱色の髪がちらりと見えた小さい2人の少女が話し掛けて来た。


(…そう言えば居たな)

「あ、あの…助けてくれて…」

「どうも、なの…」


若干間合いを開けてではあるが俺に近づいてきた2人の少女に感謝された。

別に感謝されるつもりはなかったので、と言うよりも正直居たのか?と全く気にしてなかったのでその言葉で十分と早々に関わりを断とうとしたが、この二人の少女は不思議な事を聞いてきた。


「あなたは、どうして…」

「助けて、くれたの?」


何故そんなことを聞いてくるのか?と不思議に思うのと同じく、なにかこの世界で今まであった人間とは違う変な感じ?がした事も少々気になったので“心眼”でこの子達のステータスを覗いた。

覗いた後、俺はそこに記されている“ある事”に驚くとつい叫んでいた。


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所有者:マナ・リア 年齢:“178” 性別:女 レベル:1

職業:― 種族:魔人 

筋力:10

体力:30

耐性:10

俊敏:20

魔力:100

魔防:50

固有技能:恩恵・固有魔法【?】

特殊技能:呪いの為封印中

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所有者:カナ・リア 年齢:“178” 性別:女 レベル:1

職業:― 種族:魔人 

筋力:10

体力:30

耐性:10

俊敏:20

魔力:100

魔防:50

固有技能:恩恵・固有魔法【?】

特殊技能:呪いの為封印中

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「178歳って…ロリババァじゃねえかァーー!!」


と俺は叫んだ。



おまけ~魔物図鑑~

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ダイノボッド

種類:恐竜種 レベル:39

筋力:280

体力:300

耐性:240

俊敏:100

魔力:0

魔防:50

特殊技能:身体強化:跳躍強化:強化【牙】:威圧:恫喝【恐怖】

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