1章-④:これから…”加護”持ってないので出て行きます

俺は、自分の手にある黒いクロノカードに映し出されるはずの固有能力に“女神の加護”が存在しない事に困惑していた事もあり自分の後ろから細見が近付いている事に気付くのが数瞬遅れた。

感付いた瞬間、俺は舌打ちをしつつ“女神の加護”の代わりに得ていた固有能力“恩恵”を即時発動した。

覗かれる間際だった故に、この先の考えもあって、俺にとって知られるのは不都合と判断した項目を隠蔽したのだ。

俺の得ていた力は所有物の情報を改変させたりする事が出来たりする。


「あれぇ~君のカードにぃ?“女神の加護”がないじゃないかぁ~」


そして俺のカードを覗いた細見はわざとらしく声を上げた。

その細見の声に他の者も俺に視線を向けた。

細見は嫌らしい笑みを浮かべると、細見は「ほらぁ。僕のには、ちゃんと表示されてるよぉ」と、俺に自分のクロノカードを見せてきた。

相変わらず自分より下だと思っている奴には態度を大きくする小心者だな、コイツは。

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〔クロノカード〕

所有者:細見臣ホソミシン 年齢:17 性別:男 レベル:1

職業:召喚者 種族:人間(異世界人) 

筋力:40

体力:60

耐性:50

俊敏:50

魔力:100

魔防:80

固有技能:女神の加護【魔法接地】

《特殊技能》

魔法系:適正魔法【風】:詠唱省略:魔力回復

補助系:言語理解

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細見のクロノカードを拝見して、確かにステータス欄の固有技能に“女神の加護”が記されているのが目に入った。

細見のステータスも身体能力はそこまで高いわけではないようだが、細見は魔法関連に特化しているのか魔力量の値が100もあった。


俺は細見のステータスを確認して動揺することなく、寧ろ内心ニヤッと薄く笑みを浮かべていた……


その騒ぎに王国の騎士長であるヴァレンシュや他のクラスメイトも近づいて来た。

俺の前に来た騎士長は「俺に君のクロノカード見せてみろ」とクロノカードの提示を言ってきた。俺は逆らう事無く素直に渡した。

能力を維持したままで。


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〔クロノカード〕

所有者:「 」 年齢:17 性別:男 レベル:1

職業:― 種族:人間(異世界人) 

筋力:0

体力:0

耐性:0

俊敏:0

魔力:0

魔防:0

固有技能:

特殊技能:言語理解

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「?…なんだ、これは、どういう事だ? こんなクロノカードは初めて見たぞ? 名前がなく、ステータスがすべて0と言うのも、技能が一つ、それもこの世界の人間なら必ず持っている“言語理解”だけとは? …そして、確かに、“女神の加護”が見られない……これはどうするべきか!?」


騎士長は俺のカードを色んな向きにしたり、コンコンと突いたりしたが結果は変らず、この事実に対して困惑した発言をした後、随伴していた騎士の一人に「直ちに姫様にこの事を報告せよ!」と自分では手に負えない案件であると女神の巫女でもあるステラ姫の指示を仰ぐ為に報告に向かわせた。

命じられた騎士は「了解しました!」と慌てた様子で報告に走る。

思惑の通り進んでいる事に内心笑みを浮かべていた。


周囲はざわついていた。

そのざわつきの中、神童Sの2人と剛田が俺に近づくとヴァレンシュ騎士長が持っている俺のクロノカードを覗きこむ。


「…ほんとだね?…なんでなんだろ?」

「…壊れたとかは?」

「いや。今までこの様な例は見られていない。…問題はそれよりも……」

「おいおい!ステータス0ってなんだよ。こんなんでどうすんだぁ?こいつ、直ぐにくたばっちまうんじゃねぇかぁ?」


神童(従兄)は心配そうに俺の方を見つつ疑問に思い、神童(従妹)は「やっぱり名前ないわね?不思議ねIt A wonder」とズレたことを呟きながらクロノカードが壊れている可能性を騎士長に尋ねる。その可能性に騎士長は今までこの様な事は起きた事がないと、そして問題はそこではないと騎士長も困惑しており、剛田は俺のステータスや技能そのものを見て蔑むように笑っていた。

因みにこの3人のも見せてもらった。

剛田は渋るかと思ったか案外簡単に見せてくれた。たぶん優越感でも得たいとかだろうか。

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〔クロノカード〕

所有者:神童正儀シンドウマサキ 年齢:17 性別:男 レベル:1

職業:召喚勇者 種族:人間(異世界人) 

筋力:100

体力:120

耐性:100

俊敏:100

魔力:150

魔防:100

固有技能:女神の加護【勇者の証】

《特殊技能》

戦闘系:剣術【勇者剣技】:金剛:剛力

魔法系:耐魔力【火・水・風・地・白・黒】:魔法適正【火・水・風・地・白】:魔力回復:詠唱省略

補助系:言語理解

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〔クロノカード〕

所有者:神童咲夜シンドウサクヤ 年齢:17 性別:女 レベル:1

職業:召喚者 種族:人間(異世界人) 

筋力:50

体力:60

耐性:50

俊敏:120

魔力:100

魔防:80

固有技能:女神の加護【瞬神】

《特殊技能》

戦闘系:暗器操作:瞬歩

魔法系:魔力付加

補助系:言語理解:気配感知:気配遮断

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〔クロノカード〕

所有者:剛田剛ゴウダツヨシ 年齢:17 性別:男 レベル:1

職業:召喚者 種族:人間(異世界人) 

筋力:120

体力:120

耐性:90

俊敏:40

魔力:30

魔防:30

固有技能:女神の加護【金剛力士】

《特殊技能》

戦闘系:拳術:豪気:金剛

補助系:言語理解

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と3人共、レベル1としては軽くチートのステータスをしていた。

剛田のステータスは典型的な能筋馬鹿のパワータイプで“筋力”の数値が100を超えていた。スキルも武術に関するもののようだ。

逆に神童(従妹)の方は“筋力”等の値はそこそこの様だが“敏捷”が100を超えていた。スキルも速さに関するものが多い。典型的なスピードタイプで“暗器”を武器に手先の数で勝負する感じだろう。

そして神童(従兄)。コイツの職業は【召喚勇者】となっておりステータスもすべての項目が100を超えていた。技能も豊富で、武芸も魔法も活けるようであった。


(…相変わらず、ウザいな。イケメンが“勇者”とかテンプレかよ。…まあ、今はその能力の高さとスキルの豊富さに感謝してやるよ。…コイツに感謝するの初めてじゃないか?)


……能力継続中にて正直内心ニヤニヤが止まらない。表情に出さないようにするのが大変だ…


神童(従兄)のステータスを見てヴァレンシュ騎士長も「そうか、君が勇者の称号を持つ者か!流石、勇者に選ばれただけはあるな、今後も頼りにしているぞ!」と絶賛していた。


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俺のステータスが暴露されてから暫くして、この王国の姫様であり女神の巫女でもあるステルラ…長いしステラ姫でいいか。が報告に向かった騎士と共に現れた。

ヴァレンシュ騎士長はステラ姫の傍に向かうと改めて俺について説明を行った。

因みに他の召喚されたクラスメイトや先生は、先に自室が用意されているとの事で残った騎士や後から現れたメイドの人達と共に部屋に案内されてこの場にはいない。

案内される際に神童Sと先生である|繚乱花恋(リョウランカレン)は心配そうに「裁定が下るまで一緒に居ます」と、残ろうとしていたが俺は「大丈夫だよ」と手を振って一緒に行くようにと促した。騎士長の「大丈夫だ。どの様な決断が下されても、彼の身の安全は必ず保障するよ」と告げられ、渋々ではあるが他の者と同じように自室となる場所へと案内されて行った。若干、神童(従妹)は懐疑的な視線を向けていた気がする。


正直この場に居られても邪魔だからな。

俺はこの後、どの様な経緯となったとしても、この後この王城を抜け、この見ぬ世界を堪能する為、出て行くつもりだから。


ヴァレンシュの説明を聞いたステラ姫は、ヴァレンシュから受け取った俺のクロノカードを確認すると問題の俺の方に歩み寄ってきた。


「…貴方が問題の方ですね?…確かに……このようなクロノカードは勿論ですが、ステータスも見た事が無いモノですね。それに…女神様の御与えになさって下さるはずの”加護“がありません……」


ステラ姫も俺のクロノカードを確認し困ったような表情をしていた。

「この者に対してどうすれば?」と考えているのだろうか。

ステラ姫は徐に左手に持った俺のクロノカードに右手を翳すと、何やら呪文を詠唱した。


「“我が眼に映るは真実に隠されしもの、女神の写し眼なり、【女神の瞳】”!」


ステラ姫が“女神の瞳”と唱えると、ステラ姫の瞳が輝いて見えた。どうやらその瞳には隠されたものを、特に女神に関するものを見通す千里眼の様なものの様だ。その能力に俺は表情を変えなかったが内心焦っていた。「色々ばれるか?」と。

だが俺のクロノカードは特に変化はなかったようで、ステラ姫の力は俺の力を見破る事はなかったようだ。

ステラ姫は能力を解除すると何やら残念そうに困った様な表情を浮かべる。


「ふぅ…どうやら間違いはないようですね。貴方のクロノカードは正常で”女神の加護”がないのは間違いないようですね」

「……そうですか。…それで、俺は今後どういう扱いとなるのですか?」


俺はステラ姫から俺の黒いクロノカードを返して貰うと、気付かれない様に使っていた能力を解除する。そして俺はクロノカードを制服の上着ポケットに入れた。

そして今後の身の上の扱いについて確認する。


「勿論の事ですが”女神の加護”を御持ちでなくとも、貴方は私達が行った召喚によって招かれたのですから、最低限の安全を保障しますわ。それに…申し訳ないと思っているのです。恐らくあなたは巻き込まれただけなのでしょう。本当にごめんなさい」


申し訳なさそうな表情で俺に謝罪するステラ姫。どうやら清廉潔白な心優しい姫様の様と俺的に評価した。


「気にしないでください。俺はこう言うのに慣れてますので気にしていませんし。…いやぁ~、正直、このまま不審な者として殺されたり、地下?とかに幽閉でもされるのか?とか思っていましたから。命があるだけ儲けものです」


俺は満面の笑顔で思ってもいないことをステラ姫とヴァレンシュ騎士長に告げた。

もし、俺が先に言ったような展開になった場合、この場にいる姫様、騎士長、残っている騎士を始末してこの国をトンズラするつもりだったからだ。

今の俺なら力なら簡単だ。正直数秒で片付くのだから…

ステラ姫はこの王城で過ごせれますかと聞いてきたが、俺は街の方で過ごしたいとお願いした。

表の理由は、今まで自由に外の景色と見回った事とかなかったから、と言う事にした。

この御願いに巻きんだ手前もありステラ姫も了承してくれた。


「解りました。では、ヴァレンシュ騎士長、…えっと、そう言えばですが、あなたを何と呼ぶのがよろしいのでしょうか?」


ステラ姫は俺の名前が「ない」事を思い出したのか呼び方について聞いてくる。


「ああ、俺の事は【名無し】、もしくは【「 」くうはく】でいいです。他のクラスメイトも俺の事をそう呼んでますから」

「…名無しでは何やら失礼ですね。では、クウハクさんと呼ばせて頂きます。では改めて騎士長、クウハクさんに城下にて暮らせるだけの財貨を渡して下さい」

「承知しました、姫様」


ステラ姫に言われたヴァレンシュ騎士長はもう1人の騎士に伝令すると、この世界のお金と思われるモノが入った袋を持ってくると俺に渡してくれた。まあ、もらえるモノは貰っておこうと素直に受け取った。


と、まあこんな感じで、俺は城から出ていく事となったのだった……


「ああ。楽しみだ。初めての異世界ライフ。楽しみだ!」



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