1章-①-Ⅰ:SideEpisode①…面白そうな彼
咲夜視点――
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「フッ、フ~ん♪いやぁ、面倒な転入の挨拶なんてって思っていたけど、面白そうな子に会えたなぁ~」
来年度の、数日後に通う学園の転入の最終の手続きを終えた咲夜は今後の通学路になる道を歩き自宅を目指していた。
楽し気な咲夜の脳裏を占めるのは先程の学園の屋上で出会った”彼”の事だった。
ルンルンと機嫌よい咲夜に隣から声が掛かる。
話し掛けんなよ~と、せっかく気分良いのに邪魔をしないでほしいなぁ、なんてその声の主に対して思った。
「珍しいね。君がそんなに楽しそうなのは。帰ってきてからもつまらなそうだったのに。なにか、良い事があったのかな、咲夜?」
私のせっかく気分良かったのを邪魔してくるコイツは神童正儀と言う名で、真に遺憾ながら私こと神童咲夜の従兄なのである。
正儀が『帰って来て…』と私に言ったのは、数週間前まで海外に留学していたからだ。
隣を歩く爽やかさな表情がウザイなぁと思いつつ「何でもないわ。邪魔よ」と正儀に返すと、私は昼に出会った”彼”を思い出していた。
どうしてかな。彼を、彼との出会いを思い出すと自然と笑みが浮かんでくるのだ。
なんとなくだけど、どことなく”彼”と私は似ている気がしたからだと思う。
”彼”について考えていてふとある事に気付いた。
(そう言えば彼の名前聞いてなかったなぁ……まっ、いいかな。どうせもう少しでまた会えるのだしね)
新学期には同じ学園生になるのだから”彼”と顔を合わせる機会もあるだろうし、同い年だと思うしもしかしたら同じクラスになるかもしれないからその時に名前を聞いたらいいかなと思っていた。
(再会したら彼どんな表情をするのだろうか…驚いた表情だといいなぁ)
”彼”との再会を思い浮かべ上機嫌の私の様子に隣を歩く正儀は怪訝そうに語りかけてきた。
私はこの従兄があまり好きではない。と言うより私の好奇心を刺激してくれる人以外は、である。
なので正直ウザいので話しかけないでほしいのだが、そう言えば”彼”が叫んでいた鬱憤の中に『シンドウ』と言う言葉があったような気がしていた。
私や正儀の『神童』の苗字は恐らく珍しいものだと思う。まあ『進藤』とかかもしれないけど、それでも何人もいるとは思えない。だから私は恐らく”彼”の『シンドウ』の意味は『神童』だと直感した。
私はその直感のまま正儀に話しかける。
「ねえ、アンタのクラスとか知り合いに今日の昼に早退した男子っている?」
”彼”との邂逅後も私はまだ屋上に留まっていた。
そして私は見た。
”彼”がこっそりと学園を出て行くところを。
”彼”はあの時『5限目に遅刻することになった』と告げていた。
つまりまだ授業はあるはずなのである。
なのに”彼”は出て行ったのだ。
もし正儀の同じクラスなら知っているだろうと考えそう問いかけた。
正儀は「何を考えてるんだ?」と言うように咲夜を見つめると1人思いつく人物が浮かんだ。
「うん、5限目にいつの間にか早退したクラスメイトがいるけど」
「どんな子?」
「う~ん。如いて言うなら大人しくてお人好しって感じかな。まぁ~俺は彼を気に入っているし一番の友だと自負しているよ。実は今日も忘れていた課題をしてくれたりもしたしね。あぁ、彼にありがとうってまだ言えてなかったな」
「…悪意のないってある意味気の毒ね。その彼」
「ん、何が?…ん、もしかして咲夜、彼に会ったのかい?えっ、どこで?」
「さぁね。アンタが気にする事じゃないわ。…それで、その彼の名前はなんて言うの?」
「さぁ?なんでか分かんないんだけどね、実は誰も知らないんだよ。どうしても彼の名前を覚えていられないんだ。だから皆、彼の事は
「へぇ~……」
ふふっ、名前がないなんて、ますます”彼”の…名無し君の事が気になってきた。
「ハァ~。後、四日かぁ~待ち遠しいなぁ~早く学園に行きたいわ~」
「ん?咲夜、珍しいね。そんなにうちが気に入ったのかい?」
正儀が意外そうに話し掛けて来たが私は無視する。
私の知的好奇心が昂って仕方ない。
はやく、早く…
「ハァ~、
”彼”との再会が楽しみで興奮する私だった。
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