第3章【戦場に吹き荒れる暴風】2節《迎撃=南》

隣国リミアが攻めてきたというのに、イルメリア内の住民・冒険者たちの様子はいつも通りである。それはなぜかというと、リミアが攻めてくるごとに、毎回スカイドラゴンハンターズギルドの都市最高さいきょうと謳われる精鋭たちが追い返しているからだ。あまりにしつこく攻めてくるのでなにか進歩があるのかとも思えば、そうでもない。 全く、あちらの主神は何を考えてるのかと言いたくなる。

==========迎撃=シグルズ南区=アキサイド===========

シグルズ南区城壁外、他と同じく1人で多数の敵兵を待ち構えるのはアキ。

団長レイナ副指揮官コウガと比べるとどちらかといえばかすみ気味だが、やはり一般からすれば尋常ではない強さである。

「私は去年いませんでしたから、思い切りやらせてもらいますっ…!」

彼女アキがLV,9になり、テラリアからギルドへ【移籍コンパージョン】したのは今年になってから。それは彼女のもつ「希少魔術レベル・ブースト」が大きな原因となっていたのだ。

「…【永久とこしえなる風の神、かつて闇の冥王に立ち向かいし英雄よ】

  【不朽の誓約に従うものよ、神剣を取り、強大なる邪竜に立ち向かえ】

  【偽られた現実を打ち破り、深層にある真実にたどり着け】

  【=イリーガル・オブ・イヴェンタイド】

闇・光術複合系スキル【興亡の夕暮れ】。効果範囲に闇属性の雷を降らせ、強い目くらましの状態異常をかけるスキルである。

アキは他3人のような特殊レアアビリティは持たない代わりに、魔術スキルの効果範囲がずば抜けて広いという特性を持っている。

闇の雷が大地を焼き終わった後、その奥にいる兵たちは、とんでもないものを差し向わせてきた。狼に似た巨大な獣のシルエットが映る。

「なっ……グルファジオ!?神獣じゃないですか!!」

霊峰に棲むといわれる神獣中の1体。その事実に一瞬だけ硬直する。

神獣「グオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」 周囲に雷が降り注ぐ。

「リミアの中に優秀な戦士か調教師テイマーでもいるんでしょうか…」

轟雷のせいであちこち傷だらけ。その時、シガンシナ区西門にいたはずの団長レイナがやってきた。

「あの神獣…正式に契約したわけではなさそうね。何かあるわ」

「えっ…どういうことでしょうか?」

「あの神獣の頸をみてみなさい。黒い輪がはまっているでしょう。」

「あっ…《隷属の輪》!あれってモンスターにも効果あるのですね…」

称号ギフト系アビリティ【解放者】であれを外してみるわ」

言いざまに、グルファジオの背へ大胆にも飛び乗るレイナ。隷属の輪の方へと神獣の攻撃をかわしながら器用に走っていく。

「とらわれし者に自由をっ…!解放リリース!」称号ギフト系アビリティ【解放者】の起動句詠唱。

その凛々しい声が響き渡った途端、隷属の輪に亀裂が走り、粉々に砕け散った

「元いた場所へと帰りなさい……」。解放された神獣は空へと飛び立つ。

最大の障害が消えたことで、残りの兵なんて敵ではなかった。

後残すは、ハルヒの守るプリズム区北門だけとなる。




次回→2迎撃=北                 END





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る