第2章【紅獣眼の聖騎士】2節【計画者】

初撃の予備動作モーション完了速度は侯爵マークィス級瘴魔の方が早かった。繰り出される触手の攻撃を回避しながら、剣系武芸スキル【タイランドビート】を発動する。橙色の剣光が、炎を伴って瘴魔にむかう。

皮一枚の隙をあけて、瘴魔も回避したが。でも炎で火傷を負っていた。

瘴魔「クっ…、にンゲんにみツかッタとなレバ、アノ方にモうしワケがナい…」

またまた気にかかる単語を聞いたコウガは、後でできたら尋問してみようか、何かわかるかもしれない。と思った。

コウガ「ほらっ、よそ見してるとその体断ち切るぞ!」

連続で、片手剣グラディウス系重突進スキル【バーチカル・アーク】を発動。白い光の尾を引きながら、瘴魔に肉薄する。

瘴魔「くウっ…ナめルなヨ、ニンゲんが…」

触手を突き出して軌道をそらさせようとしたらしいが、コウガのイフリートは、その触手を半ばから断ち切った。切られた触手が宙に舞い、瘴魔の体液が飛び散る。

だが、瘴魔の別のナイフ状になった触手が、コウガの肩甲を切り裂き、その下の皮膚に傷をつけていた。赤い血が流れ落ちる。

コウガ「ほぉ…なかなかやるな。じゃ、こっちも本気でいくぞ!」

その言葉が言い終わられた途端、コウガの纏う雰囲気オーラが激変。瞳孔が縦に裂けた暗紅鮮血色の左目で瘴魔を見やっている。

瘴魔「!……オまエ、マさか、完成種クリティカル…!?」

瘴魔が言った、完成種クリティカル、とは、その身に複数の種族の力を宿したハーフのことである。コウガは、獣人ビーストの【獣化】、竜人ドラグニアの【竜気解放ブレス】、森妖精エルフの【精霊術】を行使することが可能な、完成種クリティカルの中でも出来のいい方なのだ。

コウガ「その通り。さっさと降参した方が身のためだぜっ…!」

その言葉とともに、イフリートが振り下ろされる。炎と闇の属性を纏った一撃。でも瘴魔は死なない。コウガが使った武芸系特殊スキル【不殺攻勢ころさずのかまえ】。と、瘴魔特有の異常な生命力のせいだ。

瘴魔「ク……」

コウガ「じゃ、いくつか質問するぞ。ああ、嘘言ったら即叩き切るからな?」

尋問によって、あの方とは魔神(瘴魔のトップに立つ存在であるらしい)、計画とは、魔神を筆頭にして、地上へ侵攻することだということがわかった。

コウガ(ふぅ…まあよかったってことか、一応言っておくべきだろうな)

コウガは地上のギルドホームへと駆けあがっていった。



次回→第3節(鳴動の予兆)                   END

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