第1章《闇に潜む破壊者》4節《邪悪な息吹》

部隊を追いかけている形のレイナ一行は、同じ50階【夢見の諸島】にある、【残影の島】にいた。常春の島から少し離れたところの、小さめな島である。

レイナ「今はあちらは小休止をとってるようね。」

コウガ「白夜の刻になったら出発するつもりのようだな。」

アキ「コウガ、あちらの陣営とは結構距離ありますよ?何故わかったんですか?」

ハルヒ「風系統の補助スキルでしょう。そうですよね?」

コウガ「ああ。ちょっと風の力でな。ていってもあまり使う意味もないんだが」

冒険者や魔導士はそれぞれ、各々スキルという技を使える。ただしLV,ごとに最大数が決まっていて、それはLV,上昇とともに増えていく。職業ジョブごとに制限はあるものの、LV,10にもなると、一桁ではすまない数になってくる。

レイナ「わかったわ。白夜の刻になったら行きましょうか。」

ちなみにこの一同の武器はというと、レイナは【叢雨むらさめ】と【紫蝶しちょう】の2振りの古代級エンシェントランク妖刀、コウガは炎と聖属性の神話級ミソロジーランク魔聖剣【イフリート】、アキは青い伝説級レジェンドランク魔法槍【スプラット】、ハルヒは森と水晶をかたどった神話級ミソロジーランク【風月の聖杖】である。

=========白夜の刻まで閑話休題==================

常春の島、部隊の陣営では。出発の準備であわただしかった。

カイル「たしか目的80階だったよな?デミ分身スプリット暴走精霊がいるのは」

クレイ「神の分身なんていっても、ただのモンスターと変わりないだろうがな」

バレッタ「まあ、ある意味はそうだ。ただ、精霊ではあるから強いだろう」

アリス「あと闇派閥もよ。かなりきついでしょうから油断は大敵ね。」

リグェ「とりあえず武器には不壊属性デュランダルあるからそれは大丈夫だけど、、」

リラン「もうそろそろ白夜の刻ですよー。。?」

リグェ「わかったわ。じゃ、各々80階【階層つなぎの大樹階段の柱】の根元で合流!必ずパーティーメンバーと一緒に行動すること!」

この世界では、1パーティーは6人まで。今回は7パーティー+5人(これも1パーティー)で、47人のレイドパーティーである。

リグェ「じゃ、みんな準備できたわね。行くわよ!」

リグェの号令のもと、8パーティーはそれぞれ別々に、一斉に駆けだした。

一方、残影の島にいたレイナ達一行はというと。

コウガ「あっちの常春の島にいた部隊、もう出発したみたいだぜ」

アキ「もうこっちも出て大丈夫ですかね。。。」

レイナ「あっちも出発したからもういいわね。私たちもいくわよ」

ハルヒ「わかりました。同時進行で【魔法】準備もしておきますね」

ハルヒは魔法関係に秀でた魔水晶森妖精クリスタルエルフであり、彼自身は支援補助・領域の魔法マジックに関してトップクラスである。魔法準備とは、魔力チャージのことだ。

レイナ「ありがとう。じゃあ頼むわね」

==========80階【階層つなぎの大樹】根元=============

8パーティーが80階と79階をつなぐ【階層つなぎの大樹】にたどり着いた。

カイル「・・・・・・・なあ、あれ、なんだ?」

アリス「え?あれって・・・・・・・うわ、あれはなんなの!?」

リグェ「おそらくあれが件の暴走精霊彼女でしょうね・・」

フレイ「まさに油断大敵だな。」

彼らが80階の地で見たのは、大量の灰と、その中にいる極彩色の巨大花の下半身をもつ女体型モンスター、そしてそれの周りで自らの魔石動力源を差し出すたくさんのモンスターたち。女体型は、その魔石を貪欲に喰らって取り込んでいる。

その≪彼女≫は、こちらに気づいた途端、配下のモンスターをこちらに向かわせ、自らはというと。微笑んだ後・・・

≪火ヨ、威ヨー≫その起句の後に続くのは、超高速しんそくの超長文詠唱。神に許された高速の詠唱をもって、炎の暴風が呼び出された。

リグェ「いきなり・・!?【魔を退ける破邪の聖杯さかずきよ、我に加護を】!」

部隊メンバーの防具が焼け焦げ、不壊属性デュランダルが付与されているはずの武器も、盛大に軋みを上げていた。たった1発の魔法でである。

アリス「炎系魔法が単発で、こうなっちゃうわけ。。!?」

フレイ「威力強すぎだろっ・・!こんなのどうすりゃいいってんだ・・!」

それはリグェが咄嗟に編み上げた防護魔法ディオ・グレイルすらある程度貫通してしまっているほどであったのだ。普通の炎系魔法ではありえない威力である。

カイル「・・つっ、なぜ花弁がこんなに高い硬度をもっている!?」

飛んでくる触手の攻撃の隙を突き、果敢に攻撃を加えようとするが、≪彼女≫は身に備わった花弁でガードしている。それはアダマンタイトレベルの硬度であった。

舞い散る鮮血と灰、戦いと炎の熱気が渦をまく。そして…≪彼女≫が動いた。

≪大地ヨ、唸レー≫まただ。今度は炎系より詠唱量えいしょうぶんは短めの【長文詠唱】。

それでも詠唱は超高速かわらない。ほぼ即座に等しき時間、魔法により土の暴風が招かれた。

リグェ「うぐっ…防護魔法が間に合わない!まずい、、」

カイル「………つっ、もう覚悟を決めるしかねえな。。」

その土系魔法を感知はしたものの、防護しようとも時間的にもう間に合わない。悲壮な雰囲気が微かに漂った。と、その瞬間。

   「【ー限りない蒼穹に吹き荒れる神風よ、穢れた魂を祓い給え】!」

その詠唱の声は、神術系の防御魔法【八百万やおろずみそぎ】。領域型の防護魔法だ。

≪彼女≫が放った土系魔法は、神術属性の魔法障壁八百万の禊に完璧にすべてはじかれた。

直後に現れたのは、この場にいないはずの者たち。レイナのパーティーだ。

レイナ「ハルヒありがとう。何とか間に合ったみたいね。」

カイル「スカイドラゴンハンターズギルドの最強パーティーがなぜ?」

アキ「ハイル様の【天啓】アビリティがまた発動したからだよー」

コウガ「それで、あんたらを追いかけていたわけだ。」

リグェ「…おかげで助かったわ…でもあれの炎で、全員もう耐えられない。

代わりにあれを倒してください。恥ずかしいですが…」

ハルヒ「勿論ですよ。あの≪彼女≫なるものは絶対に外へ出してはなりません」

部隊のメンバーは全員、身体のあちこちに皮膚が焼け落ちる程の重傷を負っていた

そして最強の称号を冠する4人は、それぞれの武器を携えて精霊へ立ち向かう。

赤、紫、青、様々な色の閃光が入り乱れ、暴走精霊彼女に詠唱の暇を与えない。

フレイ「やっぱすげえな…あの花弁がボロボロになってるぞ」

フレイの独白は、もうとっくに部隊のすべてが共有していた。

そして。この4人でしか不可能な、最上級マスターランク特殊魔法オール・マジックが一つだけある。

レイナ「あれ、いくわよ!【滅びの時を待つだけの世界。非常識な理】」

コウガ「おう!【1筋だけの光、絶対覇者の力が蹂躙を起こす】」

アキ「はいっ!【我らは古国の覇者なり、我が名の元に招来する】」

ハルヒ「よし!【天より来たりし神獣よ、穢れた魂を浄化せよ】」

     「「「【ヘルゲート・ラストバースト】!!!」」」

この4人しか使えない協力型リンクタイプ精霊術系統外魔法スピリット・マジック、【魔閃狂華ヘルゲート・ラストバースト】。

もう爆発としか思えない閃光があたりを塗りつぶす。

精霊「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

もとよりLV,10とLV,9で3人とLV,11が1人で放つ魔法。巨大花タイタン・フラウの女体型モンスター≪暴走精霊≫は、内側から爆発し、その体を灰の遺骸へと変えた。極彩色の魔石が残る。


その場にいた部隊の全員、一瞬の驚愕の空白の後、爆発的な歓声が巻き起こった。




今回はここでいったん休憩。次回→第5節≪討伐完了≫。気長に待ってくださりましたらうれしいです。









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