第2話

ジョークを言ったのに笑ってもらえなかったらその相手に対して

「諧謔精神に乏しいなぁ」といってやれば相手は慌ててさぞ諧謔的な状況になることは想像に難くないだろう。

満ち足りたユーモアが虚栄と無知に溶け込むと人は成長を止め、空想へと逃避行するものだ。


目を開ける、周りを見渡してみる。

もう一度寝てみる、目を開けてみる。

この行為をあと三回ほど繰り返す。

「もう三回目だけど…何も変わらないな」

いつもの妄想ならば、そろそろ現実に戻ってきているはずだが今日は戻らない。

もしかして現実?いやだが信じられない。

寝た時までは確実に部屋にいたはずなんだ。

しかし、目を覚ましてはじめに目に入ったのは蒼井そら…ちがうちがうそれじゃいつもと同じだろっ!青い空、白い雲。

寝転がっていたのはどこぞかとも知れぬ浜辺だった。

「……どこだここ?」

どこかの島のようだが、見渡す限りでは海と浜辺と樹林の他には何も見当たらない。

どうしてこうなる?僕は休日は引きこもってパソコンでアニメと自家発電に勤しむ普通の大学生のはずだ。こんな意味分からん状況に陥る理由が…。

とりあえず、木陰に移動して体育座りをする。

もしかしたら誘拐?

それはないか…意味不明すぎる。

正直、今は連れてこられた理由や経緯は分からずとも大したことはない。

今最も優先して考えるべきことはどうやってこの島で生き抜き、抜け出すかだ。

ただの大学生であった僕がこの島でサバイバルするのは果たして可能だろうか。

立ち上がり、あたりをうろちょろと歩き回る。

この鬱蒼と茂っている木々の中へと入っていくのはなんだか躊躇われる。

しかし、偶然にもなにやら胡散臭い看板を発見する。

もしかして人がいるのかもしれない。

島の奥に続く、獣道のような乱雑な道は二手に分かれている。

 ”こちらかみさま→”

 ”←こちらどちらさま?(゚⊿゚)”

なんだ?この人をバカにした看板は…。

まぁいいか、とりあえず他にする事も思いつかないのでここを調べてみよう。

右か左。

とりあえず左へ行ってみよう。これがかの有名なフレミングの左手の法則というわけだ。

フレミング先生は偉大だなぁ。ジョークはここまでとして、僕はゲームのダンジョンとかも行き止まりの方から探索する人間だ。こういうのは行き止まりのところに実はこれから先に大事になるようなものがあるというお決まりだ。だから敢えて明らかにハズレっぽい方から行く。

しばらく左の道というか森の裂け目のような部分を進むと、開けたところに出た。

なにやら中央に看板が立ててある。なになに…

 ”こっちにきたバカいる?(゚∀゚)アヒャ”

「……」

バコンッ!!

とりあえず無表情のまま無言で看板を蹴り飛ばす。

看板が地面にしなしなと倒れこむ。

何もなかった、いいね?何もなかった。

もう一度分かれ道のあの看板のところへと戻る。

 ”こちらかみさま→”

 ”←こちらどちらさま?(゚⊿゚)”

右だ、迷わず右にいこう。左に行く奴なんているわけないよなぁ?

これがかの有名なフレミングの右手の法則というやつだ。

冗談はともかく、僕は帰宅路において寄り道という概念を端から否定する人間だ。古事記にもそうある。

さっきと同じようにしばらく行くと開けたところに出る。するとそこには馬がいた、隣に鹿もいる。

馬と鹿…どういうことだ?ここに何か意味があるのだろうか?

「馬と鹿……馬…鹿……馬鹿…バカ」

よく考えれば、なぜあのような看板を疑わないのか少し前の自分を呪いたい。

あほくさ、そう思って引き返そうとすると声がかかる。

「やっと来たか…」

馬がシャベッタァァァァァァァー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無人島に何か一つ持っていけるとしたら君は何を持っていく? @mikan69

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ