第24話
あの後、めーちゃんは教室へは現れなかった。
そして、何故か――隆も……。
僕は結局、一日中遥さんに付きまとわれて、
教室の内外で、好奇の視線に晒され続ける一日を過ごすことになった。
彼女は放課後も、僕の家にまで着いてきて、
僕が玄関の扉を完全に閉め終わるのを確認するまで帰らなかった……。
一体、何でこんなことになってしまったのか……。
きっかけは、体育の時間に隆に抱きつかれた所を……
いや――正確には、僕が転びそうになった時、隆に支えてもらった所を、
遥さんに撮影されてしまったことが始まりだった。
これまで写真をばら撒かれない為に、そのことで、隆とめーちゃんに迷惑を掛けない為に、
遥さんの言う通りにしてきた。
だけど、逆にそのせいで、めーちゃんを傷つけてしまった気がする……。
そう思ったら、遥さんと付き合っているフリをすることは、
本当に隆や、めーちゃんに迷惑を掛けないことになるんだろうか。
結局僕は、隆に対する気持ちを皆にばらされたくないだけで、
実は自らの保身の為だけに、こんなことをしているんじゃないだろうか……。
そんなことを色々と考えながら、一日中過度なストレスに晒され続けた疲労のせいで、
僕は部屋の椅子に座ったまま、いつの間にか眠りに就いてしまっていた。
――気がつくと、窓から明るい光が差していて、
時計を見ると、いつもの起床時間を大幅に超えていた。
「まずい……遅刻する……」
学生服のまま寝てしまったので着替える必要は無く、
大慌てで部屋を出ると、そのまま玄関まで向かう。
そして、靴を履いて扉を開けて駅までダッシュしようとしたその瞬間、
「あれ……そういえば……」
ふと気が付いた。
僕は急いで鞄を開くと、その中に入っていたプリントを一枚取り出した。
学校の月刊行事の日程が書いてあるプリントだ。
見ると今日の日付の欄には、開校記念日と書いてある。
「……すっかり忘れてた。休日だ……」
思えば、ホームルームで先生がそんなことを言っていたような気がするけど、
昨日は色々なことがありすぎて、それどころでは無かったので、全然意識をしていなかったのだった。
「何やってるんだ……僕は……」
それが分かると、学生服を着ている自分が急に恥ずかしくなってきて、
僕は他人に見られる前に、急いで家の中へ戻ろうとした。すると、
「み・や・ま・く~ん、そんな格好で何処へ行くんですかぁ?」
と、急に後ろから声を掛けられた。
だけど振り返るまでもなく、その話し方と声で誰だか分かり、僕は恐る恐る声の主の方へと顔を向けた。
「もしかしてぇ、今日が開校記念日だってこと忘れちゃってましたぁ~?」
そこには予想通りに、しかしある意味、休日のこんな時間に僕の家の目の前に現れること自体は予想外に、
現在の悩みの元凶が、満面の笑みを浮かながら立っていた。
「遥さん……どうして此処に……」
「どうしてってぇ、宮間クンに逢いに来たに決まってるじゃないですかぁ!
折角の休日なんだからぁ、デートに行きたいんですよぉ!」
「で、デートって言われても……こんな格好だし……」
「そんなの、すぐに着替えたらいいじゃないですかぁ。いいから早く支度して下さいよぉ!」
僕はどうにかして断ろうと、頭の中で色々と言い訳を考えたのだが、
結局良い考えは浮かばずに一旦部屋へ戻り、渋々と着替えを済ませた。
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