第15話

「じゃーん!!」


「……そ、それは」

 彼女の手には、一枚の写真があった。

 しかも、今朝手紙に入っていたのとは、別のものが……。


「宮間クンの超カッコイイ横顔だよぉー! けど、宮間クンってぇ……

いっつも見てるよねぇー、秋本クンのことぉ!!」


 写真は、体育館での体育の時間に撮った物だった。

 写真右端に僕の横顔が。そして、その視線の先に――隆が写っていた。


「これだけじゃないよぉー!」

 そういうと彼女は、ポケットから次々と写真を取り出し、トランプのように広げて僕に見せた。


 その写真のほとんどは、校庭か体育館にいる僕を撮った物だ。

 そして、その全ての目線の先には、隆がいた。


「クラスが違うからぁ、教室での写真はあまり撮れなかったんですぅ。

でも、きっとぉ、教室での宮間クンはもぉーっと、秋本クンのことを見てるんでしょうねぇ!」


「ぼ、僕は……こんな……」

 意識したことは無かったけど、でも、これだけの写真を見せられて、

自分が日頃、どれだけ隆のことを気にして、それが態度にまで出てしまっているのかということを、

はっきりと自覚させられてしまった。


「どうしましょうかぁ、この写真。もし、これを校内にばら撒いたらぁ、皆はどう思うんでしょうねぇ?」

彼女はおどけたように言った。だけど、その目は全く笑っていない――本気だ。


「ぼ、僕に……どうしろって言うの……?」

彼女の意図は分からないが、それでも言うことを聞くより他に、僕に選択肢は無かった。


「物分かりが早くて助かりますぅ。超簡単なんですよぉ。写真を公開されたくなかったらぁ、

宮間クンが、私の彼氏になってくれればいいんですぅ!」


「か、彼氏……」


「もちろん、分かってますよぉ。宮間クンが秋本クンにチョーラブラブってことっ!

でもそれってぇ、今はですっ! 要するに宮間クンはぁ、きっと病気なんですぅ!

思春期特有の気の迷いなんですっ! だ・か・らぁ――それを私が治療してあげますぅ!!」


「ち、治療……?」


「宮間クンってぇ、いつも幼馴染の桐野サンと登校してるじゃないですかぁ、

まずは、それをやめてぇ、私と毎日登校してくださいですぅ!

それから、授業中以外はぁ、ずうーーっと私と一緒に居てもらいますぅ!」


「……え? ず、ずっと……?」


「あ、嫌なら、いいですよぉ~? そうしたらぁ、この写真を校内にぃ……」


「わ、分かったよ……い、居るよ。居るから……」


「わぁーい! やっぱり宮間クンって、すっごく優しいネっ!

私、宮間クンのこと、超だぁーい好きっ! って、あっ! 言っちゃった! キャーキャー!!

あっ、そうだ! 私の名前は、水谷遥――2年C組の、水谷遥だよっ! よろしくネッ!」


「よ、よろしく……水谷さん……」


「もうっ、やだぁ! 水谷さんだなんてっ! そんな呼び方はダメーっ!

私のことはぁ~、は・る・かって呼んでくださいっ!」


「……は、遥……さん」


「わぁっ! 宮間クンに、名前で呼ばれちゃったっ!! キャーキャー!!」


「…………」


 こうして僕は、形の上で、遥さんの彼氏(言いなり)となることになってしまった……。

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