第12話

 家からの通学路。いつもなら、駅のホームの特定の場所で毎日のように会っている、めーちゃんの姿を、

今日は見かけない……。


「昨日のことがあったばかりだし、やっぱり顔を合わせづらいよね……」


 そして、僕はそのまま、めーちゃんに会うことなく、学校まで辿り着いてしまった。


「やっぱり、楽天的に考えすぎてたのかな……」

と、独り呟きながら、下駄箱を開けて上履きに履き替えようとすると、中に一枚の封筒があった。


「……ら、ラブレターかな……?」

 僕はどんなにラブレターをもらっても、その想いに応えることは出来ない。

 だから、手紙を読む時は、そこに真剣な想いが篭っていればいる程、相手に悪くて、重たい気持ちになるけれど、

僕に出来る精一杯のことが、せめて読むことだけなのだから、いつも流し読みするようなことはしない。


 意を決して封筒を空けて、僕は便箋を取り出そうとした。すると、その中に手紙とは別に、一枚の写真が入っていた。


「……こ……これって……?!」

 写真は、昨日写したものだった。

 何故分かったのかと言えば、それは昨日の体育の授業で、隆が僕を後ろから抱きしめている、

まさにその瞬間の写真だったからだ。


 僕は、同封の便箋を開いて、急いで読み始めた。

 そこには、女の子っぽい丸文字で、こう書いてあった。



 拝啓


 穏やかな小春日和が続いておりますが、

宮間様には、ますますご清祥のことかと存じます。

 この度は、このお手紙を読んで下さいまして、誠に有難うございます。


 なんてっ♪ 硬すぎますぅ? エヘ☆


 突然こんなお手紙渡されて、驚いちゃいましたよねぇ?

 でもぉ。私、入学してからずぅーーーーっと、宮間クンのこと見てたんですよぉ?

 ヒ・ト・メ・ボ・レ ってヤツです! キャーキャー☆(*ノノ)


 だ・か・ら!

 昨日はホントに驚いちゃいましたぁ☆

 だって、あんなに目立つところで、秋本クンに☆LOVE2☆抱きしめられちゃってるんですもん♪

 遥☆ドキ2☆しちゃいましたぁ! って、あ! 名前言っちゃった!! キャー☆★(>▽<)


 それでぇ、何が言いたいかってゆうとぉ……

 ォィ! この写真を学校中にばら撒かれたく無かったら、私の言うことを聞いちゃぇー☆

みたいなカンジですっ♪♪


 ということでぇ、宮間クン! 放課後に学校の屋上まで一人で来てネッ♪

 あとあと、この手紙のコトは、ゼーーーーッタイに! 誰にも言っちゃダメだゾ☆

 言っちゃったらぁ ワ・カ・ル・ヨ・ネ ♪♪


 でゎでゎ、末筆ながら、ご自愛のほど、お祈り申し上げておりまするぅー☆


 ☆★遥より★☆



「な……なんだ、これ……」

 ラブレターなのか、脅迫文なのか……。

 いずれにしても、微妙に名乗ってはいるものの、ほとんど怪文書としか言いようのない手紙だった。


 だけど、無視することも出来ない。

 何故なら、同封の写真は、合成でもなんでもなく、紛れもない本物なのだから。


 もし、こんな写真がばら撒かれたら、僕だけじゃなく、隆にまで迷惑が掛かってしまう。

 それだけは、どうしても避けたい。


 僕は通学鞄に手紙を仕舞うと、少し緊張しながら教室へと向かった。

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