第3話
――俺『秋本隆』は、悟と桐野、この二人と中学で知り合った。
悟とは中学三年間同じクラスで、高校へ入学しても二年間同じクラス。
俺は悟のことを親友だと思っている。
だが、桐野と同じクラスになったのは、高校二年になって初めてのことだった。
悟と桐野は幼馴染で、二人で登校することも多い。
しかし、悟のそっけない態度と、桐野の裏表のない性格から、
二人が恋愛関係にあると思っている者は、ほとんどいない。
けど中学から、二人のことをずっと見てきた俺は違う。
桐野は昔から、クラスが違っていても悟のことを気にかけて、
何かと面倒を見てきたし、家も近所だから二人で行動することは多かった。
表面には出さないが、桐野は悟に特別な感情を抱いていることは間違いないと、俺は思っている。
そして悟も、最近何か様子がおかしい。
俺が二人に話しかけると、必ずといって良いほどに、動揺した顔を見せる。
まるで、心の内側を悟られたくないかのように。
きっと悟も桐野のことを好きで、しかしそれを周りに気づかれることが怖いのだろう。
俺はそんな二人を応援してきたつもりだ。そしてこれからも、そうするつもりだ。
――つもりだったのだ。
最近の二人を見ていると、焦れったいのと同時にソワソワと心が落ち着かなくなる。
二年で桐野と同じクラスになってから、俺は何故だか桐野のことを目で追うようになっていた。
今までは別々のクラスだったから、教室にいる時は意識することも無かったし、
桐野を見かけるのは、ほとんどが悟と二人でいる所だけだった。
だが今、同じクラスになって、俺の席の左斜め前にいる桐野の横顔を改めて見つめると、
気持ちが高揚するような、それでいて、少しだけ心が痛くなるような、
安定してるんだか、不安定なんだか、自分でも分からない気持ちになる。
要するに――好きになってしまっているのだ。
選りに選って、親友の想い人である桐野を。
あってはならないことだった。親友を裏切るなんてことは、男として絶対にしてはいけない。
だから俺は……あの二人に早く結ばれてほしいのだ。
この中途半端な感情に、ケジメを付ける為に。
……この気持ちが抑えられなくなる前に。
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