第6話 織姫《ブラックスワン》、撃墜
回収作業が終わる直前、私は遠くから鴎の大群が押し寄せてくるのを目視で確認した。レーダーが反応してそれが敵襲であることがわかった。艦長の号令で全人型兵器が戦闘準備を始めた。
近づいてきた敵が本当に鴎の形をしているので私は戸惑った。下を見ると海面にも飛魚のようなものが沢山飛び跳ねている。
「未来社の小型兵器だ」
真理が無線で報告する。私は真理と二人で受けた極秘の別任務のことを思い出した。反乱軍に未来社が手引きしているかを探るのが私達の任務だった。
味方が口々に悪態を着く声が無線のマイクに拾われてスピーカーに再生される。 私も罵声の一つも浴びせかけたい気分だった。鴎型の小型兵器はうっとおしく飛び回って小さい爆弾を落としては去って行く。大群が邪魔で自由に動き回ることもできない。キリがないことを悟った私は決断した。
「私が一掃する。全人型兵器は私から離れてほしい」
私はその言葉を無線で伝えると
これが、この人型兵器が
一通りの攻撃をして、態勢を戻して回転を止めた。霧が晴れるようにして視界が少しずつ広がって行く。重力の感覚を失った私はどういう態勢になれば機体が安定するのかわからない。
無線から誰かの声が聞こえてくる。声量がありすぎて言葉が聞き取れない。何だろう、とふと見つめた先に、黒い影が見えた。
砲弾だ。間に合わない。もう避けられない。そう思った。どうすればいい?
体が放りだされた感覚があった。体中が痛い。動かないし、息もできない。目を閉じていないと怖くていられなかった。真理の顔が浮かんだ。
ここが海の中だと気付いた時には体が急激に動かされていた。海面から顔を出すとそこに真理の姿があった。体に絡まったパラシュートの紐を解いてくれていた。
「真理……」
真理が驚いて顔を上げた。
「意識があるのか?」
真理が目を見開いて驚くが、自分だって気絶しなかったのが不思議だ。
「ああ、何でだろう。ぼんやりはしてるけど」
「とにかく、よかった。怪我はないか」
「多分、ない」
「戻ろう」
波の音がして、平べったい形の潜水艇が一機近づいてくる。持田の直属の部下だった特殊潜水艇
「織牙、さっき俺のこと、真理って」
真理が思い出したように切り出す。私はその時自分が思わず真理と呼んでしまっていたことに気付いた。弁明する余地はない。私は正直に答えた。
「ああ、そうだ。私が初めて会った時から、お前は伊豆真理だったからな」
真理が表情を変える。
「……私は、どうしたら織牙と一緒にいられるかわからなかったんだ」
強がった真理の目が柔和さを取り戻して私は安心した。
「別に気にすることはない。もう過ぎたことだ」
「真理さん、織牙さん。お熱いところ失礼ですが、とりあえずこっち来てください。体が冷えるとまずいですよ」
真理と私は
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