第3話 『火山弾』

 いつもどおり、遊び疲れたから眠りについていた。

 部屋にはベッドがあるから、眠りだけは、ぼくでも『適合者』たちと同じ水準のものを享受できる。

 諦めた、とは言ったけれど、寝ていたら実験に成功していたりしないかな、という期待も薄っすらとあった。


 コンコン、と音がして、目が覚める。

 のそのそと寝起きの頭で起き上がり、ベッドから立ち上がる。

 寝ていたから時間がよく分からないけれど、おそらく昼ご飯の時間だろう。

 そう推測して、時計も見ずに部屋の入り口へ向かう。白い壁との差別化が難しそうな、真っ白な扉だ。


「ふにゃーい」返事をして、扉を押し開ける。

「よぉ、ベテラン『不適合者』さん」


 予想通り、いつもご飯を持ってきてくれるおじさん三人衆の内の一人、前に突き出るように膨らんだお腹と、火山弾のように独特の形状をした顔が特徴の、小金本さんが立っていた。


「ご飯ですか?」目を擦りながら、もごもごと寝起きの口を動かす。

「いいや、違う。第一、まだその時間じゃねーだろ。時間くらい把握しとけや。まったく、これだから『不適合者』は」

「じゃあ、なんの用なんです?」


 おじさんたちは、ぼくが何か失敗をするたびに、「これだから『不適合者』は」という。失敗しない人間、『適合者』である彼らは、ぼくの失敗が理解できないのだと思う。

 ぼくは歯を食いしばって、平然と振舞う。歯向かっても良いことは無いのだ。さっさと用件を終えて、目の前から消えてくれることだけを願う。

 しかし珍しくも、小金本さんが告げたのは、ぼくにとってはそこそこの朗報だった。


「久々に、ここに新しい『不適合者』が入ってくるんだよ。まあ、俺たちの仕事が増えないように、しっかりと面倒見てやってくれや、先輩」

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