第4話 『出会い』

 ノックが鳴って新しい同室者がはいってきたのは、ぼくが昼食を食べ終えてからしばらくのことだった。

 年下と思しきその少女は非常に整った顔をしていた。久々にぼく以外の『不適合者』を見たというのも重なって、まじまじと見つめてしまう。

 『不適合者』でさえなければ、順風満帆で幸福な人生を送れたんだろうなあと思った。

 彼女は、小金本さんにこの部屋へ連れられてきて、ぼくと、この部屋を見渡して、晴れ晴れとした表情で口を開いた。年下の、幼さの含まれた容貌のなかに、ハッと目を惹きつけられるような存在感がある。


「秋根千穂だ。よろしく!」


 今まで見てきた他の『不適合者』の中には、こんな明るい表情でここに入室した人はいなかったような気がする。


「見てのとおり、この子はちょっと変だ。まあ、お前が先輩としてしっかりやってくれればいいだけの話だな。頼んだぜ」小金本さんは、ぼくにいろいろと押し付けて、部屋を出て行く。


 秋根千穂ちゃんは、小さな足をペッタペッタと動かしてぼくの側まで来ると、

「名前を教えろ。それから、わたしと遊べ。暇だ!」と叫んだ。うるさい。

 ぼくは、彼女の叫び声に耳を押さえながら、名前を告げる。

「た、高峰、しんいち」

 彼女は首を頷かせながら、「なんて呼んだらいいのだろうか」と悩みだしたが、すぐに考えるのが面倒になったのか、「年上みたいだし、お兄ちゃん、とでもしておこう」と簡潔に決めた。

「わたしのことは、千穂と呼ぶように」と、ぼくに告げて、我が物顔で部屋をテケテケと駆け回りだす。えらそーなやつだ。


 と、すぐに、ぼくが投げっぱなしにしていたつみきに躓いて転んだ。彼女は途端に不機嫌になり、そのつみきを、先ほどのぼくと同じように、壁に投げつけた。

「ッ、ぅぃ!」勢い良く跳ね返ってきたつみきがぼくの顔を捉えて、首が仰け反る。

 つみきが当たるのは、頭よりも顔のほうが痛いんだなって、長年この部屋で過ごしてきて初めて知った。そしてぼくはキレて、彼女に説教することに決めた。


「ちょっとまて、謝れよ!」

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