Episode Ⅶ

「ナチ姫様!!」


バタン、と大きな音をさせてドアが開いた。


「レ、イ!?何故っ…!」

「ナチ!逃げっ…」


「いやあぁっ!」


ドス、と鈍い音がしてハルが倒れた。


「レイ!?何するの!?」

「手荒な真似はしたくなかったのですが…」


レイはすみません、といいながらニッコリ笑った。


「…い、や…私は…お父様のモノじゃないっ…やめてっ…いやああぁっ!!」


頭に鈍い衝撃が走り、ナチは気を失った。




「…ん…っ!ハルはっ…!」

「ハル様なら、ご自分の国にお帰りになられました」


「っ、レイ!どうしてっ!?ハルは何もしてないじゃないっ!」

「ハル様のお父様が、過去にナチ様を殺めようとしました」


「だから何って言ってるじゃない!」


「黙ってシルバー様とご結婚なさってください。ハル様は出ていかれました」


シルバー様…!?


「シルバーってまさか、シルバー=アリマナ王子のことっ…!?」

「そうです。だから大人しく結婚なさってください」


「嫌よ!あんな方と結婚するなんて絶対に…うあっ!!」


お腹に激痛が走った。


「レ、イっ……!?なん、で、こんなっ…!」

「少々声が大きかったようなので」


「レイ……?嫌だ、おかしいよっ…ハルを返してっ…!ハルは何も悪くなっ…うぐっ」


更にみぞおちに蹴りを食らった。


「い、や…どうし、て…」

「私はこの時をずっと待っておりました。ナチ様も随分と女性らしい体つきになって」


ナチはギュッと自分の肩を掴む。



「レ、イ…?やめ、て…いやぁっ…助け、て…誰か、誰かあぁっ!!」



***


「初華、おい初華っ」

「…え…あ、ごめん、なさい…」


…どうして…。


「どうして、あなたがこの話を知っているんですか……」

「後でナチに聴いたんだよ」


「あぁっ…どうしてレイが…」

「最初から、そのつもりだったらしい」


最初から…?


「…ハル、は平気なの…?ナチが傷ついて平気だった…?」

「は…?お前何言って…」


「ハルはナチのこと、本当に好きだった…?」


「……好きに決まってんだろ。馬鹿」




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