Episode Ⅴ


「水魅、お帰りっ!今日はどうだっ……え?誰?」


それは思いっきり私のセリフだっつーの。

いきなりきゅるるんって声出して水魅に抱きつこうとして誰だよ。


「水魅。その子誰よ」


あ、これは少女漫画の女王様タイプだ。


「お前さ、何勝手に家来てんの?お前は俺の女でもないくせに。迷惑」

「ちょっ、それは言い過ぎ…」


「ナチは黙ってろ」


ドキッ。

なんでかな。

ナチって呼ばれると胸が高鳴る。


「…サイテー」


「おい中入ってろ」

「でもこの人は…」


「いいからお前は黙って入ってろ」


…また押しこまれた。

ていうかこの部屋ひっろ!


「…胸が熱い」


ドキドキする。

あんな奴なんとも思ってないのに


「…はー…しつこかったー…」

「っ、ハル!」


「……は」


…なんでかな。


「…ナチ。お前…」

「……頭、痛い…」


「おいナチ」

「私はナチじゃない!」


あまりの頭痛に私はうずくまる。


「ナチ、なんかじゃなっ…い…」

「……思い出した。そうだろ」


「え…」

「思い出したんだろ。記憶を」


『ナチ様はいつもお綺麗であられますね』


レイ…。


『ナチは本当に良い子に育ってくれた』


お父様…。


『ずっと、生まれ変わっても、好きだよ』


ハル…?


すべてが繋がった瞬間だった。


「…嫌、嫌、なぜハルが殺されなきゃいけないの?ハルを殺さないで。それならいっそ私をっ…」

「違う、お前はもうナチじゃない!」


「私はまだハルと一緒にいたいの。ハルが好きなのハルと結婚する。それでもいいでしょ?ハルはリタ王家から出ると言っているわ。だからいいでしょ…?どうして…」

「初華。お前は神崎初華だ。ナチじゃない」


『ハルを助けて』

【水魅から逃げなきゃ】


『ハルと逃げよう』

【早くここからでなきゃ】


「……っ」


どっち、が、本物……?


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