Episode Ⅳ


「…それさ、イケメンじゃなかったら許されないからね?てか私はイケメンでも許さないから。私のお金だまし取ろうってんの?」


「俺がそんなことするやつに見えるか?」

「見える。すごく見える」


私がそう言うと彼はわざとらしくため息を吐いた。


「とりあえず、来い」


「え?わ、ちょっと!離して、よっ!」

「黙れ。怪しまれる」


「怪しいんだよ!」


腕をグイグイ引っ張られ遂に車に押しこまれた。


「…ちょっと。訴えるわよ」

「あっそ」


…あっそ、って!

何、考えてんのこの人


「どこ行くの」

「俺ん家」


「何の為に」

「全部教えてやる」


全部って何!?


「ねぇ降ろしてよ!私はっ」

「リタ王国の第一王子。ハル=イルニティ」


ドキッ。


「お前はアイ王国の王女ナチ=ハリターナだ」


「…何、よ。王子とか王女とか…中二病?だとしたらキモ…」

「お前は黙れ」


「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!ひゃひひゅんひょ!?(痛い痛い痛い痛い!何すんの!?)」

「黙れ」


運転しながら余裕で私の頬を潰すMinamiが憎たらしい。


「もう着くから。黙れ」

「ひゃっひょひゅふひょ…?(やっと着くの…?)」


「嘘に決まってんだろ」

「ひゃひひゃひゅー!(意地悪ー!)」


嫌なヤツ嫌なヤツ嫌なヤツ!!


「…降りろ」

「もうなんなの!?ほっぺた痛いっ…」


「ナチ、」


ドキッ。

…またこの感覚…


「…私はナチ、じゃない」

「じゃあ誰だよ」


「…あんたの名前教えてくれたら」

「却下」


教えてくれないのかーい。

そこ普通教えるでしょ。


「…永瀬水魅。水に魅惑の魅って書いて水魅。お前は?」

「え?えっと…神崎初華。初に華麗の華」

「すっげー…」


え、何が!?

遂にこいつも


「すっげー庶民的…!ウケるっ…」

「笑うなよ!庶民的で悪かったな!」


「拗ねんな降りろ」

「なんでいちいち命令口調なのよ!」


降りるけどさ。

降りて逃げるけ…


「でっか!ひっろ!なにこれー!」

「うるさい早く来い」


強引に腕を引かれ目の前のでっかい建物に連れ込まれた。


「…ちょっと待って。あんたんちに行くって言ったよね?」

「だから?」


チン、とエレベーターが私達のいる1階にやってきた。


「…私そこまで初じゃないからやることはわかるんですが私その…そういうのはちょっと…」

「誰がお前みたいなガキに手ぇ出すかっつーの。胸ねーしチビだし色気ねーしあ」


カチンと来た。


「…なーにが胸ねーしチビだし色気ねーしだ!!あたしゃーね!あんたに無理やりここまで何も聞かされずに来てんだよ!?失礼にも程があるで…んんっ!?」


甘い。

先ほどの暴言とは違い甘いキス。


頭がクラクラする。


「…んー…ふぅっ…ひ、あっ…」


エレベーターという密室で繰り返される甘いキス。

脳に酸素がっ……


「い、たっ……ちょ…どこ噛んで…んっ」


首筋をチクリと噛まれ甘い痛みが走った。

どんどん密着する私達の身体。


壁と水魅に挟まれた私。

胸元から手が侵入してくる。


「んんっ…あっ…ひゃんっ」

「さっきまでは嫌がってたクセに」


甘く低い声が耳元で響いた。


「い、やっ、これはっ」


カアァと熱くなる身体。

既に火照っていたためさらに熱くなる。


チン、とエレベーターが目的地に着いた。


私はなされるがままにエレベーターを降りた。


『生まれ変わっても、ずっと、好きだよ』


「えっ」


頭の中で響く水魅の声。

でも、これは…


「ここが、俺ん家だ」



そして、彼は扉を開けた―-。



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