Episode Ⅲ


「ん、んーっ!」


私は口を塞がれたまま、多目的トイレに押し込められた。


「…っぶは!ちょっ、何!?なんなのいきなり!?」

「それは、こっちのセリフだっつーの。いきなり袖掴みやがって…」

「え?うわ、青い布…」


こいつの服だったのかっ。


「…っあ!ていうかあんたコンサートって…!」

「コンサート?お前知ってんの?」


ニヤリと笑ったMinami。

ちょっと悔しい。


「今日友達が行くって言ってたから、」

「それ嘘でしょ」


…は?


「友達、嘘吐いてるわ。俺今日コンサートねーもん」

「は、はあぁ!?嘘でしょぉ!?何、私嘘つかれたの!?」


最悪じゃん…

またなんか嫌われるようなことした、かな…


「…おいガキ」

「誰がガキだこのや……んんっ!?」


顎をぐい、とMinamiの方に引き寄せられ、私達の唇が触れた。


「…っ、何すんだこの変態ヤロー!!!」


『ナチ姫、』


………え?


「…んー…こんなガキが俺の、ナチ姫、だなんてな」

「…ナ、チ…」


聞いたこと、ある…


「お前なんっにも覚えてねーの?やっぱバカだしお前じゃねーか。お前な訳ねーよなー」

「な、何がっ!バカだって言われても覚えてないモノは覚えてないんですっ!」


「じゃあ教えてやる」


再び近くなるMinamiの顔。


彼は私の耳元で囁いた。



「お前は、俺の、婚約者だ」




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