The dream is over

目が覚めると、見知らぬ天井があった。清潔なベッドに寝ていた。病院のようだった。看護婦を呼ぶボタンがあったので、握って押した。


しばらくして、白衣を着て眼鏡をかけた、医者が入ってきた。

「もう起きられるの? 」俺はええ、と言った。医者は少し笑い、もう少し待って、後から正式に診察するから、と言い残し、去っていった。


呆けていると、看護婦が入ってきた。「神代さん、おまたせしました。」と彼女は言った。俺を抱え上げ起こそうとして来たので、その前に自分で立ち上がった。こちらです、と彼女が指すので、黙って着いて行った。


診察室で詳しい話を聞いた。あの後家に水道局から検針が来て、玄関で寝込んでいる俺を見て、救急車を呼んだらしい。胃洗浄をして、点滴を打った、と言われた。訳知り顔で恩ぎせがましく、「誤飲という事にしておいたから」と医者が言った。ありがとうございます、と俺は言った。


「何か、親戚とか親御さんに連絡できる? 」医者が俺に聞いた。俺は、親戚なら。と答えた。話番号を言うと、かけようか? と言われた。大丈夫です、と答えた。


俺は努めて明るく、正直に電話した。親戚はその日の内に来た。バカな事をして、と言われた。仕事を辞めたからって、そんなこと……と、心配するふりをしていた。俺は、ごめんなさい、気をつけます。と言った。五千円、置いて帰った。


親戚が帰ると医者と看護婦が入ってきた。「体調、大丈夫そうなら今日中に退院する? 」医者はそう言った。俺はどう答えて欲しいのかわかったので、そうします、と答えた。


「丈夫な体に産んでくれたお母さんに、感謝しなさいよ。」医者がそう言った。少し笑ってしまったので、訝しげな目で見られた。もし今後困ったら、ここに行きなさい、と精神科の名刺を渡してきた。ええ、ありがとうございます。俺はそう答え、名刺を受け取った。


病院を出て、コンビニに入った。五千円で酒と煙草を買った。そこのゴミ箱に、精神科の名刺を捨てた。


家の鍵は開いていた。酒を水で割って、飲んだ。酔えたので、気分が良かった。煙草を吸うと、うまかった。ジャケットを脱ぎ捨て、パソコンの電源を立ち上げた。音楽プレイヤーを起動し、Killer Queenを聴いた。最後まで聴き終わってから、俺は履歴書を買いに行くため、ジャケットを羽織った。俺は出来の悪いサルで、ココナッツの汁を飲んだ事は、あまりなかった。しかし、もう立派な歯が生え揃っていたから。

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