魔王を倒したら家臣に勧誘された件

街から出ててくてくと歩いて行くと、そこに魔王が住むらしい、城があった。カミナリ雲が立ち込めていて、"いかにも"という見た目だった。世界は狭かった。俺の想像力は貧困だった。


城に入ると二体、ガーゴイルの石像が俺を挟むようにしてあり、すぐそこに玉座があった。そして、黒いマントに包まれた何かが座っていた。

「よくぞ来た、リベタリアンよ。」何かがそう言った。俺は無視して玉座へ歩いて行った。

「幾多の勇者がここで力つきた。お前、命が惜しくはないのか? 」何かがまた、そう言った。「悪夢を終わらせたいんだ」俺はそう言った。


よかろう、と何かがマントを翻し、姿を表そうとした。俺は構わず蹴りを入れた。何かは玉座の背と共に飛んでいき、壁にぶつかった。紫色の肌をした女が居た。女は両手を挙げ、掌に雷を作り上げ、俺に投げつけてきた。俺に当たった。子供がドッジボールで使う、ゴムボールが当たった感触がし、雷は消えた。


女は何度も雷を投げつけてきた。構わず、女の目の前まで近づいた。お前もそうなのか、と俺は言った。


「流石は、リベタリアンだ。どうだ、お主、私の家臣とならんか。世界の半分をお前にやろう。」女はそう言った。こんな世界、もらって何になるって言うんだ。


女を蹴り飛ばし、倒れさせた。馬乗りになり、何度も殴った。歯の折れる感触と、顔の骨が折れる感触が何度も伝わった。気分は良かった。気がつくと、女の顔はなくなっていて、そこには血溜りがあった。俺の両手は真っ赤になっていた。


「何が不満なの? 」そう声がして振り向くと、女神が居た。

「全てだよ。死にたいんだ。」俺が言った・

「どうして、死にたいと思ったの? 」

「何もかも嘘っぱちで、むかつくんだよ。俺が生きて、金をもらうためにやる事も、そこにある事も、何もかも、本当はいらない事で、何が本当なのかわからなくなった。」

「あなたを愛してくれる人が居るじゃない」

「俺の頭の中にしか居ない。貧困で、つまらない、肯定する理由もないのに、してくる、嘘つきしか居ない。全然違う人間を跪かせる愛しか、俺は信じられない。」


「あなた、子供よ。」女神がそう言った。俺はひどくむかついて、女神の元まで駆け寄り、両手で首を絞めた。女神の顔は、母親に似ていた。


そうしていると、魂が体から離れる瞬間、そんな息が、女神の口から吐かれた。俺は座りこんで、そのまま仰向けになった。天井は、石でできていた。その内、目が覚める前、携帯電話のアラームが鳴り、楽しい夢は終わり、現実世界に戻されるあの時、あの感覚が体に感じられた。

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