タイムカプセル
好きだと気づいた瞬間に、あたしの恋は、終わってた。
自転車を飛ばす。海沿いの小道。
こんな時、ドラマやアニメだったら、主人公はきっと「わあああっ」とか「だああああっ」とか叫ぶんだろう。でも今のあたしは全力でペダルを踏むだけで精いっぱい。くるしくて、どきどきして、酸欠で声なんて出ないよ。
放課後の教室。ゆれるふたつの影。
忘れ物を取りにもどったあたしは、聞いてしまった。かわいらしくて、でも、きっぱりとした女の子の声。
「好きです。つきあってください」
ドアに手をかけていたあたしは、とっさにその場に座りこんだ。コクハクだ、コクハク。心臓の音がいっきに加速した。聞いちゃいけない聞いちゃいけないって思ったのに、そこから動けなかった。まるで、魔法にかかって石にされちゃったみたいに。
永遠みたいに長い間があって、それから、「うん」という低い声がした。
堤防の向こうに広がる干潟。はるか向こうに遠のいた海は、今日ものっぺり凪いでいる。
ぬるい潮風を切り裂いてすすむ。ふたつの車輪がいきおいよく回る音がする。
コクハクなんて、ほんとにあるんだ。みんな、するんだ。
あれは、中岡さんの声だった。中岡りな。うちのクラス一の、ううん、学年一の美少女。そして、相手の男の子は――。
がくんと衝撃がはしる。前輪がなにかにひっかかって、あたしは自転車ごとひっくり返った。あっと声をあげるひまもなく、世界がぐりんって回って、目の前に星が散る。
「うああああ……」
ひざの頭がやけどしたみたいに熱い。真っ赤な血が流れてる。それを見たとたん、脳みそが、「痛い!」って信号を出した。
とぼとぼと自転車を押してあるく。痛いなあ。……痛い。
海も空も鉛色にくすんでいる。もうすぐ梅雨がやってくる。
からだの左側にある堤防の、向こう側にある海。潮は引いていて、干潟の中に引かれた細道を、軽トラックや自転車が走っている。このあたりの海は遠浅で、漁業用にいくつもこういう道がある。潮が満ちると消えてしまう道。
海の反対側は小高い山で、古くからある木々がうっそうとしげっている。道なりにあじさいが植えられていて、森の深いみどりをバックに、青い花がぼうっとうかびあがって見える。
この山をのぼったところに小さな神社があって、その近くにはまっしろな灯台がある。
遠くから見るときれいだけど、近くに寄ると、入口のところがセメントで埋められててちょっと怖い。
それでもあたしは灯台のそばでしょっちゅう遊んでいた。それも、ほんの二年前まで。
――あいつと。
家に帰るとだれもいなかった。お父さんは仕事、お母さんも仕事。お姉ちゃんとお兄ちゃんは多分まだ学校。ばあちゃんは、畑にでも行ったかな。
風呂場で傷口をあらって、消毒薬をつける。
「くうううーっ」
めちゃくちゃ、しみる。よく見ると、腕やすねにたくさんあざができてる。
ゆうべ、へんな夢をみたことを思い出す。流れ星が落ちる夢。起きたときは、いいことがあるのかもって嬉しくなったけど、逆だった。きっとあれは、嫌なことが起きる前触れだったんだ。
はあーっと大きく息を吐いて大の字にころがる。たたみのにおいが鼻さきをくすぐる。だれもいない部屋で、かち、かち、と秒針の音だけが響いている。あんなに派手に転ぶなんて。動揺しすぎだろ、自分。
――ぴんぽーん。
突然インターホンが鳴って、ゆっくりと身を起こした。だれが来たんだろ。近所のおばちゃんか、何かの勧誘のひとか。
がらりと玄関の引き戸を開ける。と、あたしの息は一瞬、止まった。
片瀬志信だ。真っ黒いさっぱりした短髪。きりりと太い眉に、意志の強そうな大きな目。太い首、かたちのいい耳たぶ。片瀬志信。
片瀬はあたしの顔をみて、一瞬、ぎょっとしたように目を見開いた。
「あ。名波。……えっと、おばさん、いる?」
あたしは首をふった。
「いないから、あたしが出てんじゃん?」
「……それもそうか。これ、たくさん揚げたからって」
片瀬が差し出した大皿には小アジの素揚げがこんもりと盛られている。ども、と言って受け取った。片瀬はじろじろとあたしの全身を見て、それからいぶかしげに眉をひそめた。
「てか、どしたのその怪我」
「あ。ああ。ちょっと転んで」
ひさしぶりにコイツとしゃべった気がする。同じクラスなのに、あたしたち、学校ではぜんぜん話さない。接点がない。ていうか、避けられてる気さえする。
気まずい。なにか話したほうがいいような気がするけど、なんにも共通の話題なんてない。あたしたち、いつからこうなった?
「じゃ」
きびすを返す片瀬。でかい背中。
「ちょ、ちょっと待って」
思わず、呼びとめていた。ゆっくりと振り返る片瀬。片瀬って呼ぶべきか、むかしみたいに志信って呼ぶべきか、迷って、迷っているうちに顔がかあって熱くなってきて、やっとのことで口をひらく。
「ていうか、自分こそ、部活は?」
「ん。今日は休み」
ちがうちがう。そうじゃなくて。聞きたいのはそんなことじゃなくって。
片瀬は口の端をちょっとだけ持ち上げた。そんで、片手をあげて、二回目の「じゃ」を言った。「じゃ」とあたしも言った。
聞けなかった。
中岡りなに告られてたの、アンタだよね?――
あたしと片瀬は家が近所で、小さいころから、山猿みたいに野山をかけずりまわって遊んでた。神社のそば、灯台のそば。海、山、街。自転車をとばして、どこにだって出かけてった。小学校は小さくて、あたしのクラスは十人しかいなくて、いわば全員おさななじみで。高学年になっても男子とばっかり遊んでいたあたしのことを、おかしいなんてだれも言わなかった。
だけど中学生になってからは、そうはいかなくなってきた。人数もふえたし、あかぬけた子もたくさんいるし、女子だけじゃなくって男子も、髪型とか制服の気くずしかたとかそんなのにばっかり夢中になってきて、あたしだけ置いてけぼり。
背がのびてバスケ部で活躍しはじめた片瀬はモテるようになった。
あたしは、いつまでも山猿のまんまだ。
次の日。傷だらけのあたしは、教室にはいるなり、美凪に言われた。
「フランケン」
ちからなく笑う。どさっと、窓際の自分の席にかばんを放り投げる。
「そうか、フランケンか。うん、怪物か」
美凪はあたしのことばは無視して、自分のノートに一心不乱に何か書いている。もっさりした黒髪を耳のうしろでふたつにくくってる美凪。髪が多いから、太いほうきをふたつぶらさげてるみたい。一見、ガリ勉少女が予習に精を出してるように見えるけど、実はそうじゃない。
「新作?」
「そ。いま降りてきてるから、ジャマしないで」
すげなく言われる。「降りてきた」のは笑いの神ってやつかな?
美凪は四コマまんがを描いている。キュートな萌え絵に力のぬけたギャグがミスマッチで、めっちゃ面白い。でも、あたししか読むひとがいない。もったいないっていつも思う。
と、突然、きゃあっとはなやかな歓声がわきおこって、反射的に声のするほうに目をむけた。背面黒板のそば、中岡りなのグループのひとたちだ。みんな、ほっぺをばら色にそめて、目をきらきらかがやかせてる。
「恋バナ」してるんだ。最近、あたしにもやっと、そういうときの女子たちの雰囲気がわかるようになってきた。やっぱり、きのうコクハクしてたのは中岡さんなんだ。あんなにうれしそうにはしゃいでるってことは、つまり――。
「はよーっす」
ダルそうにあくびしながら、片瀬が教室にはいってきた。中岡さんのグループの子たちが、おしくらまんじゅうでもするように、くっつきあってそわそわしてる。
さっぱりとした短髪をしきりにさわりながら、もう片方の手は腰ばきしたずぼんのポッケに突っ込んで。片瀬はぐるりと教室を見回した。そして、中岡さんを見つけた。
とたんに、片瀬の顔が、ふとい首から耳たぶの先までぜんぶ、真っ赤にそまった。とまどったように目をそらす片瀬。あたしはおそるおそる中岡さんをぬすみ見た。彼女も、赤くなってうつむいている。
中岡さん、めちゃくちゃ、かわいい。
透明感のある白い肌に、くるくるした目と、イチゴみたいなちっちゃいくちびるがのってる。さらさらの髪が肩のあたりでふわりと揺れた。
かわいいって知ってたけど。知ってた、けど……。
始業時間までまだある。あたしはそそくさとトイレに逃げた。
手洗い場の鏡にうつる自分の顔は最悪だった。ベリー・ショートの髪は、朝顔を洗うついでにちゃちゃっとねぐせを直すだけ。しかもチャリ通でヘルメットかぶってくるからぺしゃんこ。ぶるん、と犬みたいに頭を振って直す。髪も適当なら眉も適当。適当っていうか、なんもしてないからぼさぼさ。やりかたがわかんないっていうより、興味がない。まんま、山猿。しかもほっぺにばんそうこう。半袖の制服から伸びたひょろっこい腕には青あざが浮いてる。まるでフランケン。
女子失格、ってむかし友達に言われたのを思い出した。
なんでいまさら、自分の見た目が気になる? いままで、「よそはよそ、うちはうち」って、マイペースつらぬいてたのに。
なんでこんなに痛いんだろう。あたしの胸、どうしてずきずき痛むんだろう。
「女子失格」だから。「地味」だから。だから片瀬は、あたしとは話さなくなったのかな?
片瀬と中岡さんは、たぶん、つき合うんだろう。片瀬、「うん」って返事してたし。なにより、すごく、お似合いだもん。
つくんと胸がうずく。まただ。胸のなかにハリネズミを飼ってるみたい。ちくちく、ちくちく、突き刺さる棘。
気づかなきゃよかった。そしたら、こんな痛み、知ることもなかった。
みずみずしい緑がかさなり合ってゆれていた。中学二年、六月のはじめ。
あじさいの花に彩られた海沿いの小道をすすむと、大きな鳥居があらわれる。鳥居をくぐり、古い石段をのぼるとやがて木々がとぎれ、ぽっかりあいた空間はちょっとした展望スペースになっている。そこからさらにのぼると神社があって、西にすすむと灯台がある。白いすっとした立ち姿で、木々にかこまれて海を照らしてる。
むせかえる緑のにおい。青紫のあじさいが灯台の白さをひきたてる。
やっぱりここに来ると落ち着く。
漫画を見せたそうな美凪をふりきって、だからといってやることもなく、こんなところに寄り道してる。あたしは部活もしてない。一年のころ、同じ小学校出身の菜月にさそわれてちょっとだけバレー部にはいったけど、すぐにやめた。スポーツは好きだけど、体育会系の上下関係についていけなかったんだ。菜月とはそれ以来距離ができてしまった。
菜月といえば。
全員幼なじみって感じのアットホームな学校で、とくべつ仲がよかったのが、片瀬とあたしと、菜月と、琥太郎っていうお調子者の男子。琥太郎は小学校卒業と同時に引っ越してったんだけど。その四人で――タイムカプセルを埋めたんだ。場所は、ここ。灯台のふもと。
こんなとこにそんなもの埋めて遊んだなんてばれたら、たぶんものすごく叱られる。だからこそスリル満点だった。
小学生でも中学生でもない、そんな半端な春休み。琥太郎がこの町から引っ越す前日だった。それぞれの宝物と、それから。菜月の提案で、「好きなひと」を書いた紙を入れることになった。菜月以外の全員が反対したけど、けっきょく押し切られた。今思えば、菜月って、琥太郎のことが好きだったのかも。
そこまで思い出して、あたしは急に落ち着かない気分になった。あたし、だれの名前を書いたんだっけ。まさか片瀬とか書いてないよね。いや、だって、片瀬が好きだって気づいたの、昨日のことだし―ー。
好き、か。
こんなくるしい、苦い気持ちだなんて思わなかったな。
掘り起こそう。開けよう、タイムカプセル。憂鬱なきもちを振り切るように、あたしはぐっとこぶしをにぎりしめた。ちょっとたしかめるだけだし、かまわない。琥太郎は遠くに行ってしまったし、菜月も片瀬も、あたしとはもう友達っていえないし、どうせみんなで開ける日なんて来ない。
どのあたりに埋めたっけ……。灯台のふもとを歩きながら、記憶をさぐる。
しばらくしてあたしは、大きな樫の木のそばで立ち止まった。これだ。この木の下。
ぐるりを取り囲む木立の中で一番大きな木の根元に埋めよう、そう決めたんだった。
二年のあいだで降り積もった落ち葉を、そっとどかす。土の表面があらわれる。つついてみる。思ったより硬くないけど、さすがに素手で掘るのは無理そう。
カバンを探ると、ペンポーチの中にプラスチックのものさしがあった。スコップのかわりにするには頼りないけど、何もないよりましかな。
ごりごりと根気よく掘っていくと、やがて、ものさしがかちんと何か硬いものに当たった。急いで土をどかすと、赤いプラスチックがあらわれた。この赤には見覚えがある。あたしは夢中で掘りおこした。
どんどん記憶がよみがえる。これは、うちのばあちゃんの梅干し用のびん。こっそりくすねて、みんなで「宝物」を詰めたんだ。どきどきしながらびんを取り出し、赤いふたをはずす。
ビー玉とか、ゲームのカードとか、ちゃっちいアクセサリーとか、シールとか。そんなものに紛れて、四つの封筒が出てきた。それぞれにちいさく名前が書いてある。
「あった。あたしの」
名波千紗、と書かれたラベンダー色の封筒。意外と変色してない。
中のカードには、へったくそな字で、「吉田さんちのじいちゃん」と書かれていた。あたしは脱力した。
好きなひとなんていなかったから、ウケ狙いに走ったんだろうな……。微妙だけど。いや、うん。吉田さんちのじいちゃんは確かにいいひとだけど。よくお菓子をくれたしね。
封筒は、あと三つ。たぶん菜月は琥太郎って書いてて、琥太郎は、あたしみたいにウケ狙いで書いてるだろう。残るひとつは、片瀬、の。
心臓がどきどき暴れ出す。いやいや、片瀬だって、今でこそスカしたモテキャラだけど、当時はたんなる悪ガキだった。チビだったし、坊主だったし、好きな人なんているような雰囲気じゃなかった。こいつもウケ狙い路線だ。そう、もはやこれは大喜利なんだ。
えいっと封をあける。と、そこには……。
「名波千紗」
なんであたしの名前。って、これ、ほんとに片瀬の字だよね。片瀬が、書いたんだよね。あたしは何度もカードを裏返したりさかさまにしたりまばたきしたりして確かめた。間違いない。と、いうことは、まさか……。
「あは。あははは。あははははははは」
笑っちゃう。笑うしかない。
面白いじゃん。座布団、十枚。
あたしはそのまま日暮れ近くまで、灯台のそばでぼうっとしてた。
あたし、どこかで間違っちゃったのかなあ。
片瀬があたしの名前を書いてたってことは、きっと、中岡りなじゃなくって、あたしが片瀬のとなりで笑ってる、そんな未来もありえたってこと。
なんでこんな風になっちゃったかなあ。
がさり。突然、背後で何かが動いた。肩がびくっとふるえる。おそるおそる、振り返る。
「にゃあああ」
「え。猫? なんだあ……、猫かあ……」
ほっとして、へなへなと力がぬけた。
真っ黒い猫だった。その目は、ラムネのびんに詰まってるビー玉みたいな、透きとおったみずいろ。港のそばだからか、このへんには野良猫が多い。だけどこの猫、野良にしては毛並みがつややかで、ちゃんと栄養のあるものを食べてそう。警戒心がうすいのか、あたしを見ても逃げない。それどころか近寄ってくる。よく見ると、首には銀色のほそい輪っかが巻かれてる。首輪っていうより、チョーカーみたい。なかなかおしゃれさんだ。
「なにか食べてるの?」
あたしは黒猫に話しかけた。この子、何かくわえてる。
「きみ、どこの子? こんなところで、迷子になっちゃったの?」
そっと猫の頭を撫でる。迷子。あたしも、迷子みたいな気分だよ。
涙ぐみそうになっていると、黒猫は、くわえていた何かをあたしの足元に落とした。おっかなびっくり、拾い上げてみる。
「なにこれ。リモコン?」
銀色の、まるい、ひらべったい、何か。サイズは鶏卵ぐらい。テレビのリモコンみたいに、矢印の書かれたボタンがふたつついてる。その間に赤いまるいボタン。左向きの矢印の下には、『Rewind』、右向きの矢印の下には、『Fast-forward』って書いてある。イミはわかんない。英語、苦手だし。
わけわかんないけど、にぶくかがやくシルバーはきれいだし、手のひらに吸い付くような、ひんやりした感触もきもちいい。小さいころ、すべすべした小石を集めてたことなんかを思い出す。あたしがその変な物体をためつすがめつしていると、猫は、にゃあんとひと鳴きして走りさっていった。
「あ。ま、待って!」
あっという間に見えなくなる。置き去りにされたあたしは、しばらくぼうっとたたずんでいた。
何だろう、これ。
猫がくれたプレゼント。あたしはそれを、スカートのポケットに入れた。
とぼとぼと石段を降りる。むあんとした海風に包み込まれる。日は落ちて、たなびく雲のふちが桃色に染まっている。潮は満ちて、干潟の道は沈んで見えない。
鳥居のそばに止めていた自転車のスタンドをおこす。ゆっくりとペダルをふむ。
家に帰ったあたしは、さっそく机に向かって、辞書を引いた。謎の銀色の物体についているボタン(らしきもの)の下の英単語の意味を調べるためだ。何かしてないと片瀬のことばっかり考えちゃうし、ちょうどいい気晴らしにもなる。
Rewind……巻き戻し。
Fast-forward……早送り。
とある。なんだ、それじゃあほんとにこれは何かのリモコンなんだ。あんまり見ないデザインだけど。
巻き戻し、か。ほおづえをついて、つんとリモコンをつつく。
ほんとに巻き戻せたらいいのにな。あたしと片瀬と、ふつうにしゃべって遊びまわって、それで……片瀬が、あたしのことを好きだと思ってくれていた、あのころに。
ほわんと、頭の中に、昔の片瀬の笑顔が思い浮かんだ。坊主頭にキャップをかぶった、いかにも田舎の子ってかんじのチビ。
「ちさっ!」
あたしを呼ぶ声。
戻れるわけないのに、あたしは、へんてこなリモコンのボタンを、押した。
きゅるるるるるるるるるるるるるるる――――
とたんに、強い風がふいてあたしの髪が逆立った。へんな音がする。高い、脳みそのうらっかわを刺激するような不快な音。
気持ち悪い。高速回転するジェット・コースターに乗ったみたいに、ぐるぐるとからだの中がかき回される感じ。目をあけていられない――。
風が、やんだ。いやな音も、もうしない。
何が起こったんだろう。ゆっくりと目を開けると、そこには、
「ちさっ! 何、ボーッとしてんだ?」
さっきまで思い描いていた、坊主頭の、真っ黒に日焼けしたガキのすがたがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます