私の良くないところは父親譲り

息子が小学生の頃の事です。

ある時、子供の言動にたまりかねて、夫に訴えます。

「お父さん!どうしてうちの子は勉強しないのだろう!宿題の算数問題が解らなくてもお構い無し。私だったら問題が解けないとスッキリしないんだけど…。」

夫は

「僕も勉強せんかったな!小学校の成績はアヒルが並んでたな!2.2.2.…てな具合!ハハハ(笑)」

私は

「笑い事やないで!傘は次々壊すし、新しい冷蔵庫の取っ手は早々に壊すし、ズボンは直ぐ穴が空くし……」


いかにも“私にはまるっきり似ていない”と訴えたかったのが、夫に伝わったのでしょう。


「はいはい、悪いところは全部僕に似ています!」

と諦め顔でつぶやきます。


作家太宰治の娘、太田治子さんの言葉が新聞に掲載されていました。

「母によると私の良くないところはすべて父親譲りなのです。」

こんな著名な方でさえ私達と変わらぬ経験をされています。


昔、母が私によく言ったものです。

「あんたの歩き方はお父さんにそっくり」

「お母さんがあんた位の頃には、よく勉強したけどな」


誉められた記憶はありません。

「私は出来の悪い娘」と思う様になります。


母は母で小さかった頃の思い出を話します。

「兄弟が沢山居たから、長女の私は手伝いをさせられた。包丁で指を切って血が出て痛いのに、父親は『こんな事も出来んのか!役に立たん奴!』と言われた。ひどい事を言う人やった。」

と私に訴えます。


余程辛い思い出だったのか、その話は何度か聞きます。

母も誉められる事無く育ったのでしょう。


母と私には、悪い育ちが連鎖しました。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る