親から子へ料理の味は伝わらず
私の子供三人が、それぞれ幼稚園・小学生・中学生だった頃、目の回る忙しい毎日でした。
当時私は貧血ぎみだったのでしょう。
幼稚園の送り迎えで、時々足元がふわふわと雲の上を歩いている感覚になり、足元が危なっかしく、手すりが無いと歩けない事もありました。
毎週日曜日、夫はお昼の1時頃迄、私を起こさず寝かせてくれます。
実家の母もまだ60歳代の元気な頃で、1ヶ月に一度、こちらに一泊する事を楽しみにしていました。
いつもと違う台所で料理を作り、いつもと違う大型スーパーで、おもちゃを買って孫を喜ばせ、いつもよりちょっと高い果物とケーキを買います。
この時母が必ず作った物に、巻き寿司があります。夫も子供達もとても楽しみにしていました。沢山作り、翌日月曜日の夫のお弁当に必ず入っていました。
具材は高野豆腐、干瓢、干し椎茸、ほうれん草、きゅうり、人参、厚焼き玉子、アナゴ、と具だくさんです。
私も側で手伝い10本以上作ります。
お隣と階下の御宅に2本ずつお裾分けします。「いつも子供がうるさくして、すいません。今、母が家に来ていて、作ってくれた巻き寿司です。お口に合えば良いのですが。」と言って配ったものです。
作り方も味付けも覚えますが、なにせ手間暇が掛かります。準備も後片付けも大仕事です。
子供達が大きくなっても、私一人では、やる気にならず、母が来る時にしか作りません。
母も80になると、こちらに来るのも億劫になります。すると、巻き寿司とは御無沙汰になり、その後も結局巻き寿司は作らずじまい。
「あの味を次の世代に伝える」なんて“理想的な母”にはなれません。
その代わりになる“お稲荷さん”を作ります。
食材は巻き寿司とほぼ同じ。
高野豆腐、人参、干し椎茸、きゅうり、蓮根、筍、卵焼き、アナゴ。
これらの味付けした食材は全て小口に刻み、酢飯と混ぜ合わせ稲荷あげに詰めるだけ。
巻き寿司に比べ手間取る事無く、段取り良く作れます。
これはこれで、夫や結婚した娘夫婦にも好評です。食費がかからず経済的で体にも良い、と言う事でよく作ります。
おはぎや煮豆も実家でよく食べました。
母の作る姿を見ていて「時間の掛かる大層なものだ。」と思っていました。
今では魔法瓶という便利な道具があります。
豆料理は昔と比べはるかに簡単に作れます。
熱湯と豆を魔法瓶に入れて一晩置くと、豆はふっくら。あとは、お鍋に移していつもの料理に展開する事が出来ます。
小豆を赤飯、いとこ煮、おはぎに。
大豆はゆで大豆にして、五目豆、鶏手羽との煮物などに。
黒豆はお正月に。
娘達も私の料理作りを見てきましたが、これから先、同じ料理作りをするとは思えません。
ましてや『クックパット』という便利なレシピアプリが出現!
同じメニューでも、姿かたちを替え彼女らなりの料理が作り上げられていくでしょう。
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