知らない所で受ける恩
エレベーターの無い団地住まいで、階段を昇って自宅に帰ります。
ある日、階段に泥の付いた靴跡が、くっきり残っていました。
一階から三階の玄関先まで靴跡が続いていました。
三階には、野球に熱心な小学生のお子さんがいらっしゃいますから、練習の帰りだったのでしょう。
そのお向かいに住まわれる年配の男性が、泥の靴跡を水で流して掃除されていました。
「ご苦労様です」と声を掛けると「いや~、子供のする事だから仕方ないけど、砂埃があがるからねぇ~」と、淡々と…でも、参ったな、という風でもありながら掃除されていました。
きっと、子供のお母さんはそれに気付かないままうち過ぎていくのでしょう。子育て・家事で、毎日へとへとですもの。
それを知っているお向かいさんの優しさです。
私の子供が小さかった時も、きっと私の気付かないところで、誰かに迷惑をかけ、誰かが黙って後始末してくれていたのだろう、と思うのです。
もっとも非難の冷たい目にもさらされてきましたが…。
つくづく未熟な母親だったと振り返ります。
新聞の投稿欄に『恩送り』の言葉を見つけました。
見知らぬ人から受けた恩は、若い人へと恩を送るのです。
階段を掃除するこの男性の様に。
いつでも、どこでも、ささやかに、さりげなく行われていることです。
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