カリギュラ

先輩は私が外に出た時、すっごく動揺してた。

ちょっと顔も青くなって、いつもより綺麗に見えた。

でも、外ってそんなに怖かったっけ?

この前は誰にも見つからなかったよ?

もう1回出てみようかな?出たのがバレても綺麗な先輩が見られるんだったらいいかな?


いつもより大人っぽい洋服を身にまとって外に出た。

人がいないとこを通ると、逆にあやしいから、あえて駅の近くを歩く。

普通の人みたいに。


誰も私に気づかない。


誰も私を見ない。


まるで透明になったみたい。


駅の大きな液晶に目が止まった。

お昼時のニュースだ。


《えー、今日で、✕✕市の放火事件から1年となりました。未だに犯人は捕まっておらず、当時16歳の日向 花さんは行方不明となっており、見つかっていません。警察は遺体となって見つかった日向 哲也さん、当時48歳が、暴力団と何らかの関係があったと見て捜査を続けております。》

「わ、たしの名前?」

口が渇いた、かすれた声しか出ない。

「行方不明?」

声になってない気がする。

あれ?私はパパとママが死んじゃって家が無くなって、先輩がいて…

あれ?わたし、どうして先輩のところにいるんだっけ。

どうしてパパとママは死んじゃったんだっけ。

あれ、どうして?

私、パパとママが殺されるところ、見た覚えがある。

記憶の中で、ノイズが走ったように思い出せない。

お腹がグルグルして気持ち悪い。

「わ、わたしはどこ?」

足が笑っている。まるで何も知らない私を見下してるみたい。

こんなところで変な行動をとってたら、不審に思われる。

(人がいないところに!)

走る、走る走る。


みんな私を見ている。


いやだ。こっち見ないで!


走っても、走っても、人の目が着いてくる。


いやだ、いやだいやだいやだ。


ただひたすら走って先輩の家にたどり着いた。

いつもより重く感じるドアを開けると、


「あら、花。どこに行ってたの?」


怖いくらいに笑顔の先輩が立っていた。

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