第六章「大晦日だし全員集合しとこうか」
忍びます
十二月三十一日、大晦日。某所。
明かりの無い真っ暗な部屋の中に、男の声が響く。
「姐さん、姐さん。今夜の準備はもう終わったっすか?」
男の声や話し方から、軽薄そうなお調子者の姿が想像できる。
一方、男に話しかけられた姐さんと呼ばれた女は
「えぇ」
と、短く返すだけだったので、姿の想像も難しい。
「いやぁ、今夜の準備だなんていやらしいっすねぇ――いでっ」
ぼこっ、という何かを殴打した鈍い音がして、男の声が呻く。
「大人しくしろ」
「だーって……瞑想だなんて、面倒っすもん。いくら俺らが忍者だからって、こんなことしても、別に仕事の質は変わんないっすよ? なんだったら、一発エロいことでもした方が、俺はモチベーションが上がると思うんすよね。だいたい、久々のお仕事だからって、姐さんは張り切りすぎなんすよ。今からそんな気構えてたら、夜まで持ちませんよ? だから、ね? 俺とイイことしましょうよ! 俺、ぺったんこな女の子でも愛せますっすから!」
ペラペラと一方的に話す男。
軽薄なのは話し方だけではなく、話の内容もそうだったようだ。
「……黙れ、死ね」
殺意のこもった声で、女が言った。
そして、続けて
「私は、ぺったんこなどではない」
と、主張をした。
「………………」
「………………」
ごそごそ、と暗い部屋の中で衣擦れの音がする。
「姐さん……。服の中に手を突っ込んで、胸の前でクロスさせて胸元を膨らましたとしても、それはおっぱいじゃないんすよ……」
「馬鹿な……」
「やっぱり、おっぱいが小さいの気にしてたんすね。だったら姐さん、余計いやらしいことをしたほうがいいっすよ。俺が超絶テクでおっきくしてあげますから! おっぱいが大きければ、男を誘惑したり、お仕事でも活かせちゃうでしょう? ついでに逝かせちゃうでしょう? だから、ほら! 俺とイイことしましょうって!」
そう言った直後、暗い部屋の中、男の悲鳴が響いたのだった。
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