Scene42「アナザーエイジ」


―――機甲歴0053年8月7日、実験用コロニー【コクーン】。


 人類が宇宙に上がってから宇宙居住者達にとって世界と呼べるようになったのは人工物の塊であるコロニーだ。


 それが基盤であり、彼らにとっての地域であり、国であり、領土であり、守るべきものとなった。


 しかし、それらの中でも実験用という名が付くものは居住者が殆どいないものが大半だろう。


 様々な機材の開発や運用試験を行うコロニーは半ば、企業体や財閥、軍民の最先端テクノロジーが集まる実験場であり、中には違法な研究の拠点となっている事もある。


 故に人が少ないだけではなく。


 過剰なくらいに防衛設備が整っていたり、専門の防衛部隊が配置に付いていたりする。


 しかし、現在。


 そのコロニーは連邦からも共和国からも負われる身となったテロリスト。


 宇宙人と名乗る彼ら。


 未来人兼宇宙人兼超能力者兼テロリストという混成部隊によって秘密裏に占拠されていた。


 そもそもが重要度の高い情報があるので実験用コロニーは他のコロニーから離れて建造されている。


 ついでにそこでの実験が怪しいものなら、他のコロニーに救援を求める通信設備などは最低限。


 更にコクーンを彼らが狙った理由は防衛部隊が全てオート化されたものであった事が大きい。


 並みのガーディアンなら三個中隊になろうかという火器が死も恐れずに突撃してくるのだ。


 球状の推進ユニットに多数の武装が施されたコロニー防衛用ドローンが雲霞の如く湧き出せば、並みのガーディアンなんて一瞬で真空の海に散るだろう。


 が、それはそれ。


 これはこれ。


 と言わんばかりに潜入工作お手の物。


 超重要施設を幾度となく爆破。


 混乱に乗じて多数のセキュリティーを壊滅させてきた元軍人にしてテロリストのプロ。


 イゾルデ隊にはコクーンの防衛網は抜け穴満載の遊び場に過ぎなかった。


 少数精鋭がガーディアンにも乗らずコクーン外壁から内部に潜入。


 重要なセキュリティールームを占拠して、ただちに全てのガードを停止。


 サクッと接舷ドックを開放してまだ名も無き船を招き入れれば、あっと言う間に実験用コロニーは彼らの拠点とはや代わりした。


 最低限の食料自給が可能で工作機械も使いたい放題というのは大きい。


 補給しようにも普通のルートで物資を仕入れれば、バレる。


 それどころか。


 闇ルートにだって大規模な買い付けが入れば、怪しまれる事は確実だろう。


 だから、彼らが自らの停泊場所を確保した意義は極めて大きい。


 宇宙で共和国軍の軍事基地を襲撃し、無数の奈落兵器を沈めてきた彼らの機体は消耗が激しく。


 特にオリハルコンカイザーは重整備が必要となっていたので、それは尚更の事だった。


 コクーンを占拠して三日目。


 本日も定期連絡を研究者達に入れさせたイゾルデは彼らを外部との通信が不可能な隔離居住区画に連れて行き、そこで開放した後。


 まだ把握し切っていない研究区画の扉前へと集合していた。


 リーフィス・タルテソスは現在、オリハルコンカイザーの整備指揮で接舷ドック内部。


 ケント・グラーケンは現在、戦艦の動力源と化したグラビトロンⅡの出力調整で忙しい。


 となれば、残った彼女達イゾルデ隊は周辺の警戒と内部の掌握を進めるのが妥当。


 この三日、隠れていた研究者達を捕まえては居住区各に放り込んでいた彼らはようやく厳重なロックを開放して、コロニーシリンダー内部に歩を進める事となっていた。


「この扉は後どれくらいだ?」


「はい。後数十秒程で」


 巨大な鋼の扉。


 数mはあるだろうコロニーシリンダーの最重要区画に向かう為の通路を閉ざす隔壁。


 それがイゾルデを筆頭にした部隊の前で僅かに各所のランプを明滅させ、ゆっくりと開いていく。


 怖ろしく厳重なロックは多重の螺旋が解けるようにして左右上下から引き抜かれる。


 最後にはポッカリと人一人が通れるくらいの小さな入り口が巨大な扉の中央に露わとしていた。


「行くぞ」


「了解!!」


 男達が分厚い対弾、対レーザー用の盾を構えて隊列を組んだ。


「突入!!」


 足音も最低限に男達が完全装備で走り出す。


 内部に入った男達からクリアーの通信が響き。


 其処は巨大な空洞だと彼女は知る。


 複数の隊員達のカメラから入ってきた映像には窓の一つも無い研究棟らしき建造物が映っている。


 彼女が内部に入ると正しく現物が彼らの数十m先に存在していた。


「あの建造物内部を調べれば、此処で何が研究されていたのか分かるかもしれないな。ガーディアンの類が出てくる可能性もある。十分に気を付けろ」


「了解しました」


 隊の半分が彼女の護衛に残り、もう半分が研究棟の方へ小走りに近付いていく。


 そうして、彼らが仕舞った扉を開けようと壁に埋め込まれたコンソール周辺で専用のコード解析用機器を取り出した時。


 ゆっくりと正面の扉が左右に開けていく。


 一瞬で盾を構え、その間から小銃をドア内部に向けた彼らだったが。


「撃つな。まだ残っていたようだな……他の者は全員が隔離居住区にいる。抵抗しなければ、こちらは危害を加える理由も無い。大人しく出て来て欲しい」


 イゾルデが歩きながら近付いていくと暗い内部から初老の男達が三人手を上げて出てくる。


「貴方達が此処で最後の抵抗者だ。大人しく指示に従ってくれるとありがたい」


「「「………」」」


 男達が彼らを見定めるようにして瞳を細める。


 そして、白い口髭を蓄えた一番前の男が進み出た。


「お前さんら共和国の軍人だな?」


「だったら、どうする?」


「どうして此処を襲った?」


「已むに已まれぬ事情だ。此処の工作機械と食料プラントを使わせて貰っている。数日後には幾つかの重要物資と機材を持って退去する。それまでは我慢して貰いたい。我々は貴方達の研究にも興味は無いし、此処で無用な流血も望まない」


「何だと? このコクーンを襲っておいて、研究に興味が無い? 何かの冗談か。あのセキュリティーを突破した共和国軍がどうして数日後に退去する?」


「……我々は元軍人だ。それ以上の事は話す必要もないだろう。我々には物資が必要だ。そして、此処にはそれをゆっくりと補給出来る設備があった。このコロニーを襲った理由はそれ以上でもそれ以下でもない」


「………嘘は言っていないな。だが、2つ疑問が在る」


「疑問?」


「あのザート……正規品並みのものだが、この世には存在していない。いや、存在するはずがない」


「―――何を言っている?」


「我々は連邦の研究機関の中でもそれなりに重要なものを扱っている。だが、それとは別に依頼を受ければ、軍部からの注文にも対応してきた。その経験から言わせて貰うとあのザートは明らかに今の共和国の主力機を上回っている。パーツ一つ一つにしても明らかな違いが見て取れた。あれ程の代物を揃えるにはまず間違いなく共和国の技術陣が指揮を執らねば、造る事は難しい。だが、そういう情報は流れていない。それどころか。共和国は現在ミーレスの量産体制と重武装化を進めている最中。なら、何処であのザートは造られた?」


「………」


「まぁ、それはいい。お前さんらは共和国の元軍人かもしれんが、共和国側の人間ではない。ついでに連邦側でもない。そうだな?」


「随分と賢しらな事を言う。それで? その推理に何の意味がある?」


 男がイゾルデの前に立つとその瞳を覗き込んだ。


「これでも無駄に歳を取ってきたわけじゃない。お前さんらの手際。そして、誰一人として殺さなかった手並みは信用してもいいレベルだと思っている」


「………」


「此処の研究に興味は無いと言ったな? ならばこそ、お前達に預けてみよう。どの道、連邦のお偉いさんは我らの研究を戦争に使うだろうからな」


「おい?! 正気か!!?」


「本当にそれでいいのか?!」


 後ろの二人が止めようとするものの。


 振り返った男が首を立てに振った。


「我らには味方がいない。そして、それを造る暇も無い。連邦にも共和国にも与しない者。それが今、目の前にいる。ならば、此処は賭けてみても良かろう? 我々ではあの子等をどちらからも守れないのだから」


「あの子ら?」


「それは―――」


 男が呟こうとした時。


 巨大な振動がコロニーを振るわせた。


「コントロール・ルーム!! 何があった!!?」


 イゾルデが現在セキュリティーを統括している部屋に詰めている部下達に向けて怒鳴った。


『こ、こちらコントロール・ルーム!! 現在、謎のガーディアン部隊の急襲を受けています!! 相手はザート? いや、だが、連邦のカバリエ級もいます!? 現在、セキュリティーを稼動中!! 防衛部隊の配置はどうしますか!!』


「ザートと連邦のカバリエ? 混成機部隊で情報を混乱させる狙いか? ならば、通常の部隊とは考え難い。連邦だろうと共和国だろうと第三勢力だろうと今は時間稼ぎが必要だ。セキュリティーが突破されるまでは出るな!! コロニー内部で迎え撃て!! オリハルコンは出られるか!?」


『いえ!! 未だ整備中との事です!! UM:シリーズを現在艦内に格納中!!』


「分かった。では、研究者達を艦に避難させろ。自分が何処の誰かを知られたくない連中が目撃者を残しておくとは考え難いからな!!」


『了解。ただちに避難誘導を始めます。ケント・グラーケンより入電!! 迎撃に出るとの事です!!』


「な?! 艦の動力はどうするんだ!?」


『そちらは現在運び込んだフォトンリアクターを数基稼動させて賄うそうです。ザート隊はどうしますか?!』


「こちらから出ても、足手まといだ!! 敵の迎撃は任せておけ。避難と脱出を優先する!!」


『了解しました!!』


 イゾルデが部隊に撤収の号令を出す中。


 今まで話し合っていた白髭の男が背中に声を掛ける。


「連邦が助けに来た、というわけではなさそうだな」


「ああ、何処の誰かも分からない連中が現在このコロニーを攻撃中だ」


「それはお前さんらも同じだろう?」


「……手短に頼む。我々にはもう時間が無いようだ」


「此処に仕掛けて来た敵はたぶん、我々の研究を欲しているのだろう」


「それ程までに重要な研究なのか?」


「次元宇宙を崩壊させるかもしれん」


「………随分と大げさだな。分かった……研究成果を持ち出したいなら協力しよう。詳しい話は後だ」


「ああ、二人とも。出ておいで」


「?」


 イゾルデが研究棟の方を振り向くと暗い扉の奥から8歳前後の姉妹らしき少女達が出てくる。


「こっちはサーラ。こっちはケイティー。二人とも挨拶を」


 白いワンピースを着込んだ少女の片方。


 何処かぼんやりとした表情の少女が頭を下げる。


「……サーラです」


 もう片方の何処かイゾルデ達を警戒した様子のショートカットの少女が白髭の男の後ろから睨むようにして挨拶する。


「ケイティーだよ」


 イゾルデはこんな場所で子供を見るとは思ってもみず。


 しかし、今は構っている暇も惜しいと男の方に視線を向けた。


「それで? 研究はデータで持ち出せるものか?」


「無論。これを……」


 イゾルデの手に小さな円筒形の情報ストレージが渡される。


「預けておきましょう。少なからず連邦にも共和国にも渡さない。いや、渡せないだろう貴方達に」


「では、往くぞ。子供達を抱えろ」


 隊の中から二人、少女達を抱える要員が出され、すぐその場から彼らは走り出した。


『こちらコントロール・ルーム!! セキュリティーが突破されました!! 尚、敵機にかなりのやり手がいます!! 現在、グラビトロンⅡが接敵地点に急行中!! UM:シリーズの格納完了しました!! 研究者達の避難は順調です!! 後、三分で搭乗可能!!』


「了解だ。こちらは後七分弱でそこに付く。メインシャフト付近のエレベーターの電源は生きているな?」


『はい!! 電源と予備電源は確保完了しています!! 敵機の攻撃地点からはかなり離れている為、大丈―――』


 その時だった。


 彼らが目指していたコロニーのメインシャフトを行き来するエレベーターがある付近がビームの直撃を受けて爆発を引起した。


「伏せろ!!」


 思わず子供達を抱いて走っていた隊員を引き摺り倒したイゾルデが頭を下げる。


 その前でまだ盾を持っていた数人が爆風を凌ぐべく寄り集まって壁を作った。


 そうして数秒後。


 吹き抜けてきた猛烈な爆風が辺りを駆け抜け、その焼け付くような熱波を凌ぎ切ったイゾルデが隊員達の状況を確認し、誰も怪我を負っていない事を確認する。


「コントロール・ルーム!! 避難経路の状況は!?」


『なッ、その先の通路が崩壊しました!! 拙いッッ?! そこからだと次の迂回路は―――4kmです?!!』


「他のルートは無いのか!?」


『現在、検索中ッッ!! 見付かりました!! その付近に緊急時の脱出用シューターがあるはずです。コロニーシリンダーから直通で地表に降りられますが、電源が入っていません?! 独立した電源はシリンダー内部の方にしか制御権が無いはず……誰かが一度戻って電源を入れるしかありません!!』


「我々が行こう。その制御が行なえるコンソールはあの施設にしかない。一人では開けられない仕組みで最低三人の指紋認証と網膜認証がいる。いいか?」


 白髭の男が後ろの二人を見て、了承を取った。


「……こちらは戻ってこられるか分からないぞ」


「構わない。子供達を頼む」


 三人の男達が少女達の頭を撫でる。


「この人達に従ってコロニーを脱出するんだ。そして、生きろ……生きて行くんだ。これからは二人で。いや、多くの人々と共に……」


 まだ意味も分からないだろう別離の時。


 その男達の決意の表情に二人は……言われた事を守るから、大丈夫だからと言いたげにコクリと頷いた。


「では、頼みます」


「あ……」


「行っちゃうの?」


 サーラ、ケイティーと呼ばれた少女達が思わず手を出し掛けたが軽くバイバイと三人の研究者達に手を振られて、思わず同じように返した。


 それを満足そうに見た三人が再び元来た道を戻っていく。


 見送る彼らは次々に入ってくる情報を耳にしながら、今にも泣きそうな少女達を守るように円陣を組んでシューターの入り口まで辿り着いた。


 閉じられている入り口を開けば、内部は暗く細い滑り台状になっていたが、電源が入っていない為、減速用の風圧が来ていないらしく。


 滑り落ちれば、そのまま地表に激突して死ぬ事となるだろう。


 彼らがいつでも即応出来るよう緊張を高めていく最中。


 ピコンとシューターの上のランプが点灯し、使用可能となった。


 下から吹き上げてくる風。


 内部が明るくなっていく。


「行くぞ!!」


 前衛と後衛に別れ。


 中間にイゾルデと少女達が並んで次々に入っていく。


 しかし、その最中。


 再びコロニー内部にビームの光が閃いた。


 それがメインシャフト内の研究棟付近に直撃するのを見て、少女達が悲鳴を上げる。


 自分達の番だと言うのにそちら向かおうとする二人を思わず両手で抱き止めて。


 イゾルデが噛み付かれるのも構わずに二人を抱えてシューターに入った。


「死んじゃう!!」


「止め、て!!」


「彼らの命を無駄にするな」


 二人がシューターの内部で抵抗するのを止めた。


 しかし、その顔には涙が溢れていく。


 スルスルと二分程で地表の街並みの一角。


 公園の施設の外壁に辿り着いたイゾルデと少女達が次々にビームが研究棟付近に穴を開けるように撃たれるのを目撃する。


 しかし、それも長くは続かず。


 コロニー内に侵入してきた機体数機がバーニアを吹かしてシャフトへと近付いていく。


『そこまでだ!!』


 響いた外部スピーカーからの音声にようやくかと彼女が安堵し、今の内に非難するべく。


 男達と共に走って3分程だろう接舷ドックに向かった。


 ガオーカイザー。


 獣型から変形した人型のオリハルコンカイザーの中核機体が片手のビームライフルを連射しながら、ガーディアン達を押し留めようと素早く距離を詰める。


 だが、三機、四機の敵機の足や腕を破壊したところで急制動を余儀無くされた。


 彼に向かって斬り付けて来るガーディアン。


 カバリエの一機が凄まじい踏込みを見せたからだ。


 振り抜かれたビームサーベルが出力を拡大し、その切っ先を本来ガオーカイザーが通り過ぎているであろう場所に突き刺した。


 が、当らなかった攻撃に構う事無く。


 カバリエは突撃し、ガオーカイザーを沈黙させるべく高速で近接戦を挑む。


『望むところだ!!』


 リーフィスが両手のクローアームを展開させ、ビームサーベルを受け止める。


『貴様―――この星の者ではないな!? 星間連合か!!』


(まさか?! こいつら地球圏の人間じゃない?! それに星間連合を敵視するとなれば、それはたぶん。なら!!)


 リーフィスが一瞬の交錯で相手の技量が自分をも凌ぐものだと直感的に感じながら、策を廻らす。


『まさか、第五帝国がこんな辺境の惑星に来ているとはな。この星に何の用だ? 我々の邪魔をするなら、貴様等は本星の心配をする羽目になるぞ』


『何だと!?』


 やはりかと。


 リーフィスが演技を続ける。


 出来るだけ、悪い悪い顔を浮かべて。


『此処にもう用は無い!! 破壊するなり、探すなりすればいい!! 貴様等が生きて帰れるなら、な』


 まるでこれでは悪役だと思いつつも、先程までのイゾルデの通信を聞いていた彼には現在の状況で敵を退ける方法がそれくらいしか考え付かなかった。


『―――総員撤収!! いいか!! 総員撤収!!』


 即座に判断を下した相手の優秀さに感謝しながら、リーフィスが相手のカバリエを距離と取って前向きのまま後退していく。


 それに合せて今まで進軍してきたカバリエ級達が引いていった。


『我々は宇宙人。覚えておけ……』


『まさか、情報部の言っていた通り。テロリストは―――』


『侵略者が言う台詞じゃないな』


『クッ』


 カバリエ級達が下がっていくのと同時にリーフィスに通信が入る。


『こちらグラビトロンⅡ。コロニー周辺の敵は掃討した。連中の機体は無人機だった。指揮官機が見当たらない』


『こちらガオーカイザー。コロニー内の敵機が撤退。今からシャフト内部に残った研究者達の救出に向かう』


『こちらコントロール・ルーム!! 連邦の艦隊が接近中!! どうやら大規模な攻撃を確認して急行しているようだ!! ただちに全機撤収準備をッ!!』


『早めに戻る』


『ああ、先に行ってるぞ』


 リーフィスにケントが応え。


 異星の王子は攻撃されて風穴の開いたメインシャフト内部に機体を侵入させ、研究棟が見える場所に降り立った。


 しかし、其処にあるのは無事な研究棟とその前に空いた大穴。


 そして、三人分はあるだろう焼け焦げた赤黒い染みだけだった。


『………こちらガオーカイザー。サーチしたが、生命反応無し。生存者……0』


『了解。ただちにガオーカイザーも撤収を』


『ああ、分かってる。分かってるさ……』


 リーフィスが去って数分後。


 まるで報復するようにコロニーには一発の奈落兵器が打ち込まれた。


 多くの研究者と機体を載せて脱出した艦の最中。


 巨大な黒い奈落に半分以上呑み込まれたコロニーコクーンは崩壊したのだった。


 少女達は叫ぶ。


 自分達の家が無くなってしまったと。


 優しくしてくれた人が消えてしまったと。


 それを慰める研究者達はただ拳を握り締め、どうする事も出来ない我が身の無力さに打ちのめされるしかなかった。


 当日、連邦政府は【宇宙人エイリアン】による奈落テロによって一つのコロニーが消滅したと非難声明を出し、共和国もまたこのような暴挙は許されないと同一の見解を示した。


 かくして。


 名実共に彼ら未来人達は最悪のテロリストという称号を地球圏全体から受ける事となったのだった。

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