第9話 お子様ランチ
「・・・あうあう」
「ねー、パパ。ここどこー?」
「・・・あうあうあう」
「ともこお腹すいたー」
「・・・あうあうあうあう」
「ねえねえねえってばー」
「・・・あうあうあうあうあう」
あ、あ、ど、どうも。トトです。
とある事情でVRマシンを使った調査をしたところ、大変なことになってしまいました。
「ねぇ、なんでさっきからなにあうあう言ってるの?おなか痛いの?
じゃあね、ともこがおなか撫ぜてあげる!」
「・・・あああ、あうあうあうあうあう」
さっきから、トモりんの距離が近いです。
近いというか、0距離です。密着です。
嬉しすぎて辛い!
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかないのです。
トモりんが何故か幼児退行してるのです。
その原因は恐らくVRマシンだと思うんだけど、まずは彼女を医者に見せなくては!
幸いというか、この会社には医療エリアがあって、医務室もしっかり完備してます。
なので、一刻も早くトモりんをそこに連れて行って診てもらわねば。
だがしかし、体が言うことを聞いてくれない。
心拍数上昇、脈拍異常
「・・・と、と、トモりん」
「なぁに、パパ?」
「・・・お医者さんのところに」
「お医者さんはイヤ!」
「・・・はぁ」
「それより、ともこおなかすいた!ごはん食べに行こうよー」
「・・・うーん」
「ねえ、いこー」
「・・・う、うん」
ここでじっとしてても仕方ないよね。
トモりん、幼児退行してるせいか医者嫌いになってるみたいだけど、なんとかごまかしてでも連れて行かないと。。
「・・・じゃ、じゃぁご飯」
「やったー。なっにがいいっかなー」
ーーー
とりあえず、トモりんを食堂に連れてきたのはいいけど、なんか周りの目が痛いなー。
うちの会社、大きいだけあって、社員食堂もちゃんとしたレストラン並みに充実してるのはいいんだけど、
これだけ人が多いと目立っちゃってやばかったかなー。
あ、そういえば今日のお昼、トモりん田丸くんにお昼誘われてたけど、非常事態だししかたないよね。
「ねえねえ、パパー。あの人こっち見てるよー」
「・・・き、きのせい」
「そっかなー」
あー、やっぱり目立ってるー。トモりん可愛いからなー。
しかし、お子様ランチを食べるトモりん、マヂ天使。
てか、社食にお子様ランチがあるなんて。グッジョブ!社員食堂!
しかし、こうして見てると本当に幼児退行してる感じだなー。
大体、小学生前半くらい?かな。
トモりんは、元から小さくて可愛いけど、いまは仕草まで可愛くなってなんという天使ぶり!
まわりの連中も普段のトモりんには無い仕草に釘付けみたいだな。
あ、写メ取ってる奴がいる。うーん、ああいうモラルのない事をする人は駄目だよなー
ん、なんか向こうに人だかりが?ん、人だかりがこっちに来た。
あ、やばい。社長来た。
「やぁ、田端くん。に、トトくんだっけ?こんにちは」
「こんにちはー」
「・・・こんにちは」
社長、柿崎慎一郎。36歳独身イケメン。20歳の頃に単身アメリカのシリコンバレーに行き開発会社を設立。
その後急成長を遂げた会社を売却して日本へ帰国。
日本に帰国後、元々小さな地元開発系企業だったここを買収して、瞬く間に大手企業にのし上げた超やり手実業家。
今は、売却したアメリカの会社と提携をして新技術開発をメインにIT以外にも展開しているとか。
いやまぢで、なにこの完璧超人。
だがしかし、今はそんなことよりも、トモりんのことがバレるとヤバイ。
なんだかよくわからないけど、やばい気がする。
な、なんとかしなくては。
「田端くん、今日はすごく元気だねー。おっ!それはお子さまランチ!つ、ついに食べてくれたんだね!」
「・・・あ」
「うん、おいしー」
「・・・あの」
「そうか、そうか。僕がメニュー開発に無理言って作らせたかいがあるよ。いやー、そっかそっか。ついにかー」
「社長、次の予定が・・・」
「あー、はいはい。残念だけど、じゃ僕は行くねー。田端くん、またねー」
秘書の人ありがとう!!
なんとか回避できた。やっぱりはやく医務室に連れて行こう。
「ばいばーい」
とりあえずばれなかった。社長、なんだか上機嫌で帰っていった。
てか、あんたがお子様ランチを社食メニューにいれたのか!
グッジョブすぎるけど、まさかトモりんに食べさせたいためだけに・・・ってのは考え過ぎだよね。。。
「おなかいっぱーい」
「・・・うん」
「おいしかったねー」
「・・・うん」
「眠くなってきたー」
「・・・じゃ、お昼寝」
とりあえず、医療エリアに向かおう。平川女史に事情を説明すればなんとかなるかも。
ただ、あの人怖くて苦手だけど・・・
ト、トモりんのためだ、がんばろう。
「だっこー」
「・・・あ、あ、あ、手、手を」
「えー、でもー」
「・・・手を」
「うーん、いいよ」
抱っことか、無理。僕の体がゴートゥーヘブンしてしまう!
そして、今でも危ない僕の世間体が完全に抹殺されてしまう!
は、はやく医療エリアに行かねば!
ーーー
あ、ども。しがないサラリーマンAです。
今日はIT大手の会社に来てます。
しっかし、おっきい会社は社員食堂もすげーっすね。
安いしボリュームたっぷりだし、更に旨い!
俺もここに転職したいっすわ。
と、食事を堪能してたら、なんか親子連れがやってきたので気になって見てたんだけど、なんでこんなとこに親子連れが?
まぁ、会社に子供を呼んだとか、そんな感じなんだろうけど父親らしい人物がすげー挙動不審。あれ、本当に自分の子供かなー
しかし、最近の子供服は白衣まであるのか。まるでコスプレだな。
気になって遠目からチラチラ見てたら、子供の方と目があった。
とりあえず手を振っておいたけど、なんかいやな顔された。
はぁ、俺子供受け悪いんだよなー。
んー、どっかで見たような。
お、社長だ。例の親子のところに行くみたいだな。
ん?子供の方と話してるぞ。ひょっとしてエライさんの子供か?
んー、でも親の方とは話してないな。あー、あれか、子供の方はエライさんの子で、その部下が面倒見てるってわけだな。
まぁ、子守ご苦労さんッて感じだな。
しかし、社長めっちゃ笑顔だな。この会社にも結構通ってるし、社長もちょくちょく見てるけど、あんな笑顔見たことないぞ。
そういや、ちょくちょく通ってるで思い出したけど、去年までいてた受付の子は良かったよなー
ちっこくって、可愛くて、そのくせ知的な感じのしゃべり方がすげー背伸びしてる感があって庇護欲を掻き立てるというか。
そうそう、あそこにいる子供みたいな感じで。。。
んんん?
なんで気づかなかったんだ。
あのお子様ランチ食べてるの、受付にいた 智子さん。じゃね?
ちょ、いやいやいや、でもあんな子供っぽくなかったよな。
てか、あれじゃ子供じゃん。
えええ、どうなってるの?
「今日のともこちゃん、なんかかわいーよねー」
「いつもと雰囲気違うよねー。いつもはもっと大人ですアピールしてるもんねw。まぁそこが可愛いんだけど」
周りに耳を済ましてみると、確かに「智子」さんらしい。
しかも、今日はなんか様子がおかしいらしい。
とりあえず、会長に連絡しとくか。
TFCメンバーたるもの、逐一の状況報告は不可欠だからね。
・・・メール送信完了。っと。
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