第7話 ログアウト
「・・・ん?」
トモりん、何したの。VRマシンから煙がでてるんだけど。
って、のんびり見てる場合じゃない!
「ちょっ!!」
トトは、テーブルの上に置いてあったノートPCをひっつかんで、必死に原因を特定し、修復作業を進めていく。
時間にして、十数秒。異常動作を起こしていたVRマシンが無事正常に動き出したのを確認すると、智子の様子を確認するため、
ノートPCを近くのテーブルの上に置き、簡易ベッドに横になっている智子のそばに駆け寄った。
「・・・い、生きてるよね?」
そっと手を智子の口元に持って行き、息をしているか確認するトト。
手首を持って脈を測れば良い話だが、そんな身体的接触が出来るほどトトは女性に対しての免疫はなかった。
「・・・息は・・・ うはぁぁ、トモりんの息が、ぼ、僕の手に・・・」
「・・・ってそんな場合じゃない!」
「えっと、えっと」
「・・・とりあえず、寝顔が可愛い」
「・・・あぁ、違う違う」
「・・・と、とりあえず、こ、呼吸はしてる。うん、だいじょうぶ」
「・・・おちつけ、おちつけマイソウル・・・」
こ、この試作型のVRマシンには、何十ものセキュリティが施されているので、壊れることは滅多にないし、リアルタイムで
メディカルチェックも行っている。
脳波計などは、VRマシンにつないでいるノートPCで見る限り、問題のあった一瞬だけしか波形は乱れていない。
システムの不具合も修正済み。おそらくトモりんがアバターをコピーしたことでVRマシンの仮想記憶域が
キャパオーバーになったのが原因だと思う。
あとは、複製されたアバターを起動した際に意識の分裂を体験したはずだけど脳波計や心拍数なども今は正常範囲。
でも、もし意識の分裂、それに伴う後遺症があったら。。。うあーー、どうしよ、どうする?
「そ、そうだ!ちゃ、チャットで呼びかければ」
トトは、慌てながらもノートPCを取り、智子の無事を祈りながらチャットの画面を開いて智子を呼び出す。
ーーー
どこかで目覚まし時計がなってます。
うーん、もうちょっと、あと5分寝かせて下さい。
って、あれ?
あ、ここは・・・
あぁ、サーバーの中ですね。
ということは、さっきの失敗は何とかなったということですね。
我ながらなんと浅はかなことをしてしまったんでしょう。ちょっと調子に乗りすぎていました。
さて、さっきからなってるこの音は・・・チャットの呼び出し音ですか。
トトさんからですね。
あぁ、怒られそうな予感がします。。。
ーーー
智子「ト、トトさん?」
トト「トモりん、大丈夫?なんともない?」
智子「あ、はい。浅はかな行為をしてしまった自責の念はありますが、ほかは何も問題ないようです」
トト「よかったー。VRマシンから煙が出た時はほんとにびっくりしたよ!」
智子「あー、うー、その、大変ご迷惑をお掛けしました。えっと、ごめんなさい!」
トト「あ、いあ、別に怒ってるわけじゃないから、うん、大丈夫ならそれでいいから。あー、よかったよかった!」
智子「本当にごめんなさい。。。」
トト「えっと、いいから、もう、その話はいいから。ね? それより、ぼちぼちログアウトできるから準備してもらってもいいかな」
智子「あ、はい。えっと、私は何をすれば・・・」
トト「あ、うん、えっと。あ、とりあえずログアウトするぞーって心の準備だけしてて」
智子「ログアウトするぞー、ですね。はい、トトさん。」
トト「じゃ、じゃぁログアウト処理するので、チャット切るね」
智子「はい。じゃあリアルで会いましょう」
トト「ノシ」
ーーー
「・・・とりあえず、データ」
トトは、ノートPCに入っている今回入手したファイルや、智子のアバターデータをUSBメモリにコピーしてから、智子の傍に行き、
VRマシンの停止ボタンに手をかける
「・・・では、押すよ」
ヘッドギア型のVRマシンの、丁度眉間に当たる部分にある赤いスイッチを「オフ」の方向に回す。
元から静かだったVRマシンの駆動音は、何度かのビーブ音とともに停止していく。
・
・
・
時間にして数十秒足らずのはずのその時間は、トトにとってはとても長い時間に思えた。
智子の目覚めを待つ傍ら、「眠り姫」のシチュエーションを妄想して、一人で身悶えしたりしていたが、それは割愛しとこう。
そして無事、智子はリアルの世界に帰還できた。
「・・・トモりん、お疲れ」
「あれ?」
「・・・トモりん、どうしたの?」
「えっとぉ」
「・・・どこか調子が悪かったり・・・する?」
「あ、そか。パパだ!パパー」
「・・・え?!」
智子はリアルに戻ってこれた。無事にとは言い難いが。。。
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