第6話 コピー

システム開発部


「なぁ、古上。試作VRどこおいたー?」


「あ、あれなら貸しました」


「はぁ?おま、それマズイだろ!なんで貸すんだよ。てか誰に貸したんだよ!」


「いやいや、絶対徳さんも納得しますから、まぁ聞いてくださいよ」


「なんだよ、偉そうに!なんだ?金でももらったのか?情報漏洩だぞ。そんなことしたら一発でクビだぞ」


「まぁまぁ、社外には出てませんので大丈夫ですよ」


「社外に出てないからってダメなもんはダメだろ!」


「徳さん!」


「な、なんだよ」


「徳さんTFCメンバーっすよね」


「いきなりなんだよ。あたりめーじゃねーか。TFCメンバー23番だよ。2桁メンバーだよ。古参メンバーだっつーの」


「じゃぁ、TFCメンバーの掟、言ってくださいよ」


「おう、言ってやるよ。


1つ、イエスロリータ、ノータッチ!

2つ、笑顔のためならなんでもします!

3つ、存在を決して本人に知られるな!

4つ、TFCメンバーは相互協力を惜しまない!

5つ、悪い虫は徹底駆除!


どうだ、ばっちりだろ」


「バッチリですね。じゃ耳貸して下さい」


「なんだ、トモりんが絡んでるのか?」


「実はですね・・・



ーーー



「へっくち」


「ウィルス感染か」


「いえ、だれかが噂をしたんじゃないかと」


「そうか」


なんだか鼻がムズムズしますが、ヴァーチャルなのにそんなこともあるんですね。


さて、遠見さんのホーム前です。扉にはkazuma(遠見さんの名前)と書かれています。


とりあえず開けてみましょう。


「おじゃましまーす」


ガチャ


あ、あきました。パーミッションは大丈夫なんですね。きっとトトさんが何かしたんでしょうね。

痕跡残さないためとか言ってるけど、こういうのは大丈夫なんでしょうかね。


とにかく、データを集めましょう。

今回もエスカレーターにのって下に降りて行くと、部屋中(?)びっしりと本棚が並んでいました。


「これはまた、多いですね」


とりあえず、エスカレーターから降りて、手近な本棚から見ていきます。



正直なめてました。全然わかりません。というかどれを持っていけばいいのかがわかりません。


遠見さんはサーバーの立ち上げとか調整とか、とにかくサーバーの知識で言えばトトさんについで凄腕らしいのですが、見た目の雰囲気でそんな風には全然見えまないですね。

すごく優しいお兄さんなんで、私のこともよくアメやお菓子をくれて頭をなぜられるんですが、子供扱いされてますよね。私のほうが年上のはずなんですけどね!

そんな遠見さんがスパイっていうのも何か変な気もしますが、とりあえずもうちょっと調べていきましょう。


がんばって探していくと、「画像」と書かれた扉が見えてきました。

おそらく画像データがたくさん入った階層が下にあるんでしょうけど、今回の調査とは関係ないんでしょうけど、でも気になるので行ってみましょう。


「画像ディレクトリに突撃です!」


ガチャ


遠見さんのような、優しいお兄さん風な人がどんな画像をコレクションしているのか気になります。

ひょっとしたら、アニメとかでしょうか。それともマッチョなお兄さん系でしょうか。

不謹慎とは思いつつ、エスカレーターの横からこっそり下を覗いてみると


「あら、お仕事関係の画像ばっかりですね」


とりあえず、ほっとしたような、残念なような気持ちのまま、元のディレクトリ(遠見さんのディレクトリ)に戻ってきました。


「そりゃそうですよね。堂々と会社のサーバーのしかも見えるような場所にそんなもの置かないですよね」


堂々と。ん?堂々と?

ひょっとしたら、こっそり置いてるという可能性は?


「スーさん」


「隠しファイルって見れますか」


「見れるぞ ls -aだ」


「ありがとうございます。じゃあさっそく。 ls -a」


あら、うっすら幽霊のような本棚や扉が出てきました。これが隠しファイルとかですね。

色々ありますね。さて、どれから探しましょうか。


と、気になる扉がありました!


「【部外者】TFC関連【お断り】ですか、すごく気になりますね!」


扉を開けてみます。


ガチャ


あ、あっさり開きました。てっきり開かないかと思ったんですけどね。


「とりあえず、降りてみましょう」


例によってエスカレーターに乗って降りていきます。


存在感無いですが、スーさんも一緒ですよ。


「さて、なにか見られてはまずいものでもあるんでしょうか」


ちょっとワクワクしながら、エスカレーターを降りた先には、1つの本がおいてありました。


この本にも【部外者】TFC関連【お断り】と書かれてあります。


とりあえず中を見てみましょう。


「あ、あれ。中が見れない、というかグチャグチャ?」


「暗号化されているな」


「暗号化ですか」


どうやら、よほど見られてはいけないものなんでしょう。

きっとこれがトトさんが言っていた証拠ですね。


とりあえず、チャットで報告しましょう。



ーーー



智子「トトさんいますか」


トト「トモりんおつかれー」


智子「はい、お疲れ様です。って挨拶はいいんですよ。それより見つけましたよ」


トト「ん、見つけたって何を?」


智子「トトさんが探してるファイルですよ! TFC関連って書いてます!」


トト「! それ、中みれた?」


智子「残念ならが、暗号化されてるみたいで見れませんでした」


トト「そ、そう」


智子「トトさん、これが探しているファイルですよね」


トト「うん、そうだよ。それそれ。それをこっちに送ってくれる?」


智子「どうやって送るんですか?」


トト「あ、そっか。それも忘れちゃってるのね。じゃあ僕の言うとおりやってみて」



トト「おっけ、受け取れたよ」


智子「はい。じゃあもうログアウトしてもいいんですよね」


トト「うん、いいんだけど・・・もうちょっとだけ待ってくれる?」


智子「え?どうしたんですか?まさかVRマシンがおかしいとかですか?」


トト「ううん、VRマシンは大丈夫だよ。そうじゃなくて、えと、その、ほら!こっちでログアウトする作業がちょっと大変だからさ」


智子「はぁ、そうですか。で、どれくらいかかるんですか」


トト「んー、もうすぐ終わりそうなので、あと10分ってとこかな。それまで待ってくれるかな」


智子「10分位なら待ちますが、ほんとうに大丈夫なんでしょうね」


トト「うん、ログアウトは全然大丈夫だよ。だからもうちょっとだけ待っててねー」



ーーー


とりあえず任務終了ですね。

なんだか色々と不可解な点もありますが、もうすぐログアウト出来るんですしいいですね。


しかし、あと10分。短いようで長いですね。

せっかくですので、ログアウトまでちょっとコマンドで遊んでみましょう。


「スーさん」


「なんだ」


うーん、このやりとりももうすぐ終わりと思うとちょっと感慨深いですね。


「ちょっと自分のホームに飛んで色々やってみたいんですが」


「わかった」


あ、ついてくるつもりですね。

無愛想な顔してますが、やっぱり親切な人ですよね。


「では、行きますね。 移動は確かこうですね。 cd ~」


あっという間ですね、もう着きました。さすがサーバーの中です。

さて、トトさんから連絡があるまでの少しのあいだですが、時間は有限です。さっそく色々遊んでみましょう。


まずは、何から試してみようかしら。


「エモート、ダンス!」


うひゃー、か、体が勝手に踊ります。

で、でも、これはこれで面白いですね。

ただ、恥ずかしいので人前ではしたくありませんが。

あ、スーさんは、プログラムなので例外です。ってだれに言い訳しているのでしょう私は・・・。


「エモート、エクスクラメーションマーク!」


【ピコーン】


サウンド付きですね。頭の上に「!」マークが出ているみたいですね。よく見えませんが。


「ほかにVRの機能はっと」



結構遊んでしまいました。

さて、あと1つか2つコマンドで遊んだらちょうどいい時間ですね。


では、最後にとっておき・・という程でもないかもしれませんが、ちょっと楽しみな事があるので、それで遊んでみましょう。


「えっと、マニュアルマニュアルっと」


---

■ cp


ファイルのコピーができるよ。

バックアップはこまめにね!


使い方は、以下のとおり〜


cp コピー元 コピー先


---


これこれ、これをやってみましょう。


「cp tomoko.bin tomoko.bin」


「わっ!」


できた、できました。もうひとりの私が目の前に居ます!

これ、アバターって言うやつですよね。って、今は私もアバターですね。

うん、おもしろい。自分自身を観察することなんてまず無いですから、色々とチェックしてみましょう。


こうしてみると、リアルの自分と結構似てますね。

誰がモデリングしたんでしょうか。。。


髪も栗色で肩までのソバージュヘア。頭にはしっかりリボンまでついています。


リボンといえば、学生時代に友人(あ、もちろん女性です)がしょっちゅう私の頭にリボンをつけておもちゃにしていた思い出が・・・

しかも、毎回毎回リボンを付けられるのに慣れてしまって、卒業して社会人になった今でもリボンを着けるのが癖になってしまっている私って。。。

年齢を考えると、もうそんな年ではないことはわかっているのですが、なぜか。なぜか!周りから付けるように催促されてしまうという不思議な状態に。


こないだも(っていっても、記憶が飛んでるので、もう半年以上前ですが)出社時に社長とばったり会ったので挨拶をしたら、なぜかリボンを頂きましたし。。。

偶然リボンを持ってたって言ってましたけど、一体どんな偶然なんでしょうか。

社長は確か独身のはずなので、お子さんがいるわけでもないですし。うーん、謎です。


っと、リボンの話はもういいです。時間がもったいないので、ほかもチェックチェックです。


身長もだいたいリアルと同じですね。せめてサーバーの中くらいは長身長にして欲しかったです。

この身長のせいで、どれだけ子供扱いされたことか! 身長140cmだって、立派なオトナなんだぞー!


はぁ、虚しいです。

とりあえず、この虚しさはこのアバター(?)を作ったと思われる方に今度ぶつけることにしましょう。


あれ、そういえば・・・


「寝てますね?」


コピーしたアバターですが、立ったまま寝てるみたいです。

つついても叩いても反応がありません。

壊れているのでしょうか。それとも魂が抜けているとか?



「あ、そっか。実行してませんものね」


所詮プログラムですもんね。実行しなきゃ動かないですよね。

じゃ、実行しちゃいましょう。


「えーっと、たしか実行はこうだったかなー」


./tomoko.bin


「よし、実行!」


すると、自分が映る自分を自分が見て自分をみて自分が自分で・・・・


あ、これはまずいです。2つの体に意識がひとつで・・・意識が・・・ばら・・ば・・ら・・


と・・め・・な・・k


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