第4話 ログ

池上主任「そういや今日、田端さん見てないけどどうしたの」


田丸祐介「あー、またトトさんとサーバールームじゃないっすか」


遠見一馬「最近二人仲良いですよね。入った当初なんて田端ちゃん、トトさんのことめっちゃ避けてたのに」


広江由紀「トトさんはいい人。挙動がおかしいだけ」


池上主任「おいおい、それフォローになってないよー。まぁ事実だから仕方ないちゃー仕方ないけどさ」


田丸「てか、*もう1年*にもなるんすねー。田端姐さん来てから」


主任「もうそんなになるかー。時間がたつのは早いなぁ」


田丸「主任のお腹も年輪が刻まれていってますもんね」


遠見「たしかに、やばいですね」


主任「いやいや、そこまでイッてないよ。イッてないよね?ね、広江さん?」


広江「トトさん化……」


主任「それは勘弁だーー」



ーーー



皆さんこんにちは、田端智子です。自分でもなんでかよくわかりませんが、いまサーバーの中に居ます。

外への連絡手段だったメールさんがピーピング系のダメダメプログラムさんだったので、トトさんに連絡がとれなくなりました。

しかたがないので、サーバー内を散策するつもりです。


「では、いきましょうか」


「どこにいけばいい」


「そうですねー、ここがサーバーなら、きっとアクセスログっていうのがあるはずですよね。それを見に行きましょう」


「場所さえわかれば呼べるぞ」


「えぇ、そうですよね。でも詳しい場所は知らないのです。たしか バーだか、ヴァーだかいう場所としか」


「var だな。じゃあそこまで行くか」


「はい、よろしくおねがいい…「ついたぞ」…たします?」


性急なかたですね、今回は前みたいにあまり目が回らなかったから良かったですが。。。


「ここがバーですか」


「varだ」


「そうですか、では、ここから探してみましょう」


歩くこと数分。あっさりと目的の場所がありました。


「この扉、これがそうですね。 log って書いてます。ここに入りましょう」


扉はあっさりと開きました。そしてエスカレーターで下の階に移動します。


下の階、そこには大量の書類が置かれた書庫のようになっていました。


「えーーーーっと、ここから探すのは大変そうですね」


「そうでもない」


「そうなんですか?」


「ここにあるファイルは全てルールに基づいて名前が付いている。お前がほしい日付のファイルを指定すれば、読めるはずだ」


「なるほど。では、今日のアクセスログを見せて下さい」


「わかった」


言った途端、手元にアクセスログと書かれた本が目の前に出てきました。

あわてて受け取りましたが、この世界の人達はみんな性急すぎるきがします。


「スーさん」


「なんだ?」


「私は今日のアクセスログを下さいって言ったんですが」


「それが今日のアクセスログだ」


「でも、この日付は2016年3月16日って書いてますよ」


「あってるぞ」


「でもでも、今日って2015年9月16日ですよね」


「・・・」


「・・・」


「自分で確認してみろ」


そういえば、現在の日付や時間を調べるコマンドもサーバーにはありましたね。


「えっと、date」


そういうと、目の前にホログラム(?)のように文字が表示されました。


-----

Wed Mar 16 10:20:11 JST 2016

-----


Wedは水曜、Mar 16は3月16日


あれ?私の半年はどこに消えちゃったんでしょうか。。。



ーーー



「トトさーん、田端姐さんは?」


「サーバー・・・」


「今日もトトさんとマンツーマンレッスンすか、トトさんいいなー」


「・・・うん」


「じゃ、姐さんに伝言お願いしていいっすかー」


「・・・うん」


「お昼みんなで外に食べに行こうって主任が言ってたって言っといて下さいー」


「・・・わかった」


「トトさんも来るっすよね」


「・・・ちょっと・・・むり」


「そっすか、了解っす。んじゃ伝言よろしくっす」


「・・・うん」


田丸くんにサーバールーム前であった時はちょっとあせったけど、なんとかなった。

まだバレるわけにはいかないからね。


トトはサーバールームの隣にある部屋に入って鍵を締めて、誰にも気づかれていないことがわかると、ほっと息をはいた。


「・・・寝ててもかわいい」


そこには、仮眠用ベッドの上に寝かされた田端の姿があった。

頭にはまだ開発段階だと思われる外装もついていないむき出しの電子機器がついたヘッドギアが付けられている。

これはトトがシステム開発部からこっそり借りてきたものである。


「・・・これじゃ、風邪・・・ひくよね」


ひとりごとを呟きながら薄手の毛布をかけるトトさん。


「・・・ふひー、ふひー」


風邪を引かないようにそっと毛布を掛けているだけなのだが、その場に第3者がいたら間違いなく通報レベルの挙動不審っぷりである。


「・・・まだかな」


毛布をかけ終わり、近くにあった椅子に腰掛けると、時計を見ながらノートパソコンに何やら入力していく。


「・・・あと1時間ちょっと」


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