第2話 マイホーム
こんにちは、田端智子です。
ちょっと親切で不審な超能力者のスーさんに連れて来られた場所は、自宅ではなく、辺り一面に広がる草原でした。
他人を簡単に信用してしまった私がバカでした。これからは気をつけましょう。これからがあるなら、ですが。
さて、どうしましょう。
辺りを見渡してみても、遠くの方まで広がる大草原。
あ、でも上に向かう階段のようなものが遠くに見えますね。
しかも、天井が有ります。。。
天井がある大平原。自分でも何を言っているのかわかりませんが、例えるなら、天井がある大平原。。。としか言えないですね。
スーさんは帰られたようなので、スーさんに頼ることも出来ません。仕方ないですね。
階段のようなものの近くに行けば何か現状を打開できるかもしれません。
とりあえず、階段のようなものの所まで行ってみましょう。
歩き出してすぐくらいに、ぽつんと落ちているものが。
「本、ですよね」
近寄ってみてみれば、地面には一冊の本があります。
一瞬アダルティでエロティックな本かと思いましたが違うようです。
表紙はアニメのキャラクターのような可愛らしい女の子がパソコンを触っている絵が書かれています。
そしてローマ字で小さく TOMORIN と書かれていますがどうでもいいです。
それよりも気になるのは、本のタイトルです。
私の記憶違いでなければ・・・
〜 Toto's Perfect Manual 〜
確かにタイトルにはこう書いてあります。見間違いじゃありません。
でも、なんでこれがここに?
ーーー
私はとあるハゲ部長の策略により、受付嬢からシステム管理部という部署に転属になりました。
なんでも、最近のITは対外的に見た目の良い女性をおいていなければならないとか。
まぁ、そんなのは建前で、本音はハゲ部長の個人的な仕返しでしょう。
「初めまして、今日からここでお世話になる田端智子です。どうぞよろしくお願いいたします」
何事も初めが肝心です。メイクもバッチリしてきました。まずは第一印象!
「あー、はいはい。聞いてますよ。じゃあ簡単に自己紹介しましょうか」
「まずは~」
「はい、はい。自分、田丸祐介っていいます!プログラマーしてます。」
「広江由紀、ネットワーク管理をしてる」
「遠見一馬です、サーバーの立ち上げとか調整とかやってます」
「で、私が主任の池上秀夫だ。あ、すまんトトさんが居ないわ。ちょっと田丸くん、トトさん呼んできてくれるかな」
「えー、おれっすか。まぁいいっすけど。で、いつものところですかね?」
「うん、そうだと思うよ。頼んだよー」
「うちのメンバーは、あと一人、トトさんっていうのが居てね、すごい人なんだけど口下手でね〜」
なるほど、IT関係の方に多いコミュ症ってことですね。
「うちでは僕の次に長くここにいるかなー。あ、トトさんが君の直接の上司ってことになるので、まぁ、仲良くしてあげてね、って、あ、きたきた。 おーい、新人紹介するから挨拶して」
池上主任に声をかけられたトトさんなる人がこっちにゆっくりと歩いてきて
「・・・ども」
えらく恰幅の良い方ですね。
まるで某アニメのト◯ロ。あぁ、それでトトさんですか。
「えっと、トトさんってお呼びしてもいいのかな。今日からお世話になります」
「・・・かわいい」
えっと、好感は持ってもらえたようです。
「と、ところで私は何をすればいいんでしょう。パソコンのことなんて何もわからないのですが・」
あぁ、ハゲ部長が笑っている姿が目に浮かびます。負けてなるものか!
「あ、でも精一杯頑張りますからご指導のほど、どうぞよろしくお願いします!」
「・・・マジ天使」
うぅぅ、ま、負けない!
しかし、会話が続かない。だれか、だれか助けて。
「あー、トトさん。彼女にマニュアル作ったげてよ。ほら新人向けのアレ」
ありがとう主任!
とりえあず、マニュアルってことは、それを見て勉強しろってことですよね。
トトさんには申し訳ないですけど、マンツーマンで教えてもらうよりそちらの方を希望します!
ーーー
そう、その後もらったのが Toto's Perfect Manual です。
でも、なんでそのマニュアルがここにあるんでしょう。
なんだか、嫌な予感がします。
とりあえず、中身を見てみましたが、間違いなくトトさんの作ったマニュアルでした。
表紙はともかく、中身は初心者の私でもわかるように親切に書かれたサーバー管理マニュアルでした。
せっかくですので、本を拾いあげ、片手でブラブラと持ちながら当初の予定だった階段(仮)に向かうことにします。
他にもなにか落ちてるかと思いましたが、階段に着くまで他に何も落ちていませんでした。
目的地に到着しました。
さて、階段だったと思ったものは、実はエスカレーターでした。なにこれ?
どこから電気が来ているのとか、メンテナンスはどうするのとか、色々と突っ込みたい気持ちが湧いてきました。
とりえあず、誰も聞いてないと思いますので
「なんでやねん」
ふぅ、これでよし。
「さて、登ってみますか」
エスカレーターをぐるっと見てみましたが、上に続くものだけで、下に行くものはないようです。
この草原エリア(今勝手に命名しました)は、まだまだ広いですが他に何かあるという感じでもなさそうなので上に行ってみましょう。
エスカレーターに乗ってドンドン上がっていくと天井を越えて次のエリアが見えてきました。
といっても、エスカレーターの終点と扉だけ。
ちゃんと下に降りるエスカレーターはあるので引き返すことも出来ますが、目の前に扉があるのです。ちょっと開けてみましょう。
「おじゃましま〜す」
開けてみたら、また草原でした。
あ、でもちょっと違います。
ここは草原ですが、あっちこっちに扉が有ります。
ちゃんとエスカレーターもありました。
とりあえず前のエリアと比べると扉があるというだけで他になにか変わったことはないようです。
ということは、扉を調べるべきですね。
と、今出てきた扉を振り返ってみてみました。
「あら?」
[tomoko]
私の名前が書いてあります。。。
嫌な予感がドンドン膨らんできます。
早足に他の扉もみてみました。
[tamaru]
[hideo]
[yuki]
[kazuma]
[toto]
「tamaruは田丸さんですよね。hideoは池上主任がたしか秀夫さんでしたっけ。由紀ちゃん、一馬さん・・・で、トトさん」
どうやら、間違いないようです。
スーさんは私を見たとき、「ビン」と言ってました。
決してつるぺたなことを指摘して言ったわけではなく、大事なことなので2度言います。指摘して言ったわけではなく、別の意味があったんです。
トトさんのマニュアルにも書いてあります。
---
■ 拡張子
ファイルには色々な拡張子があるよ
その拡張子によって、ファイルの役割が違うんだ。
たとえば bin はバイナリーファイルといって、ざっくり言えばプログラムって思えばいいよ
ほら、 gif とか png って拡張子は画像用で使われているので見たこともあるんじゃないかな。
---
ということは、私は tomoko.bin という感じでしょうか。
もし私の推測が正しければ、色々と納得ができます。納得したくありませんけど。。。
推測その1
最初に居た場所はきっとtmpディレクトリ。一時ファイルを置いたり削除したりする場所。
だから、スーさんは「用済みになって処分されるんだな」って言ったんでしょう。
色々な街並みが現れては消えるということが繰り返されているのも、街並み自体が大量のファイルだと仮定すれば納得です。
推測その2
スーさんに連れて来られた、私の家。というかきっと私のホームディレクトリ。
その証拠に、今いる場所からは他の人のホームディレクトリも見えますから。
そう、嫌な予感はあたってしまいました。
私は、システム管理部のサーバーの中にいるみたいです。
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