智子の不思議な体験

ばっくえんどでべろっぱー

異なる世界

第1話 世界

移り変わる季節、変わりゆく町並み。

時の流れは早く、瞬く間に世界は変わっていく。


そう、世界が瞬く間に変わっていく。


今、目の前で!




こんにちは、田端智子と申します。

去年まで受付嬢やっていました。

去年まで、というのはとある事情で左遷されて今は違う部署にいるってことです。

ほんと、あのハゲ許すまじ。。。


で、今はなんだかよくわからないところに居ます・・・


「というか、ここはどこでしょう?」


目の前に広がるのは、見慣れない町並み。

気がついたらそこに立っていました。


とりあえず、ボーっとしててもしょうがないのでその辺散策してみましょうか。


「へ?」


歩き出した矢先、目の前に広がっていた町並みが瞬く間に消えていきました。


「は?」


消えた町並みに代わり、新たな町並みが生まれました。

現れた町は、前の町とは全く違う大都会。でもなんだか閑散としてます。


「な?」


また街が消えました。


「に?」


また街が生まれました。

次に現れたのは、町というより村? に近いのでしょうか。どこか田舎の村落を思わせます。



しばらく、ぼーっと見入ってしまいました。

あまりに簡単に街が消えては生まれているので恐怖より唖然としてしまいました。

しかも、毎回街並みや規模まで違います。


こんな超常現象を見れるなんて、慣れてくるとスライド写真を見ているようで何だかちょっと楽しいですね。


でも、か弱い乙女としては、ここはきっと叫ぶところなんでしょう。


ということで


「き〜や〜あ〜〜ぁ、あ?」



乙女っぽく振舞っていたら、誰かがこちらに向かってくるのが見えました。


そう、未だに消えては生まれるを繰り返している街の中から。


あの人はなんで消えないのかしら?と不思議に思っている間にその方は私の目の前までやってきて立ち止まりました。


見た目で言えば、かなりいい線行きそうですね、彼。受付時代に鍛えた私の眼力が物語っています。


彼。そう男性です。

スタイル抜群、ちょっとワイルド系な顔、女性のファンクラブくらいありそうな感じですね。+50点です。

でも、消えては生まれる怪しげな街からやってきたことを考えれば、決してまともな人ではないでしょうね。−100点です。


総合評価としては、−50点で胡散臭いイケメンという評価になりました。

私が心のなかでそう評価していると、彼の方から話しかけてきました。


「ビンか、ここで何してる」


「は?・・・」


ビ、ビンって何ですか? ビンみたいに凹凸のない体型ってことですか。訴えていいですか。

この人は敵です。−1000点です。すべてのスレンダーな(ビン体型とは決して言わない)か弱い女性の敵です!


「ちょっとこの辺を散策していただけですわ」


こんな不審者にまともに答えてはいけません。早くこの場を離れなければ。


「それでは、失礼しますね」


「そうか、そうだな。こんな場所にいるんだ。用済みになって処分されるんだな。余計なことを聞いたようですまない」



えっと、ちょっと待って下さい。

用済みってなんですか?処分ってなんですか??


ひょっとして、私の務めていた会社はあれなんでしょうか、使えない人間は闇から闇へ処分されちゃうような所なんでしょうか。

仕事が出来なかった私はいつの間にか処分されるべく連れて来られたってことでしょうか。

どこかでスナイパーとかが私を狙っているんでしょうか。


それが本当だとしたら、すごくやばい状況です。

なりふりかまっている状況じゃありません。

幸いというか、この不審者はこちらの状況を理解した上で同情しているようです。


それなら。


「あ、すみません。先ほどは失礼しました。お恥ずかしながら実はうちに帰りたいのですが、帰り道がわからないのです。

よければ、駅まででもいいので案内していただけませんでしょうか。」


同情心を煽って何とかこの場所から離れるべきですね。

不審な方ですが、盾くらいにはなりそうです。

ちょっと胸が痛みますが、私が生き延びるためです。


「家? あぁ、ホームか。じゃあそこまで連れて行ってやろう」


あら、割りと親切な不審者ですね。10点くらいは加算してもいいですわね。



「行くぞ」


いきなり人の手を掴まないでください。っていうか、あれ、目の前がぐるぐる、あ、だめ、目が回るぅー


「ついたぞ」


「え?」



言われてみれば、場所が変わってます。

このちょっと親切な不審者は超能力者だったんですね。


「じゃあな」


っと、もう帰られるんですか。

不審者で超能力者な方でも、親切にされたからにはちゃんとお礼をしなければ。


「そういえばお名前も言っていませんでした。私は田端智子と申します。家まで連れて頂いてありがとうございます。」


「気にするな」


無愛想な方ですね。

そういや、名前も聞いてませんでしたね。


「あなたのお名前を聞いてもよろしいですか」


「・・・スーだ」


あら、可愛い名前ですね。


「他に用がないなら俺は行くぞ」


「あ、はい、どうもありがとうございました」


スーさんが消えました。


やっぱり超能力者ですね。

連絡先を聞いておくべきだったかしら。


まぁ、過ぎたことはしかたないですね。

今は家に帰って今後のことを考えましょう。


と、あたりを見回して。。。


ここどこ?


あるのは、広いどこまでも続く草原と、遠くに見える階段だけ。


「ほんとにここどこー?」

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