研究員の日記 四月十三日(プロローグ 5/25)

研究員の日記 四月十三日


 光明が射した。

 報告を受けた本部は、すぐに実験用モルモットを手配し、翌日、すなわち今日に実験を行うよう指示した。


 チューブの中には、小さな檻に入れられた二匹のモルモットがうずくまっている。

 藤崎所長の目がいつもと違う。諦めと葛藤がない交ぜになったような昨日までの目と違い、不安そうに落ち着かない。この期に及んでまだモルモットの心配とは恐れ入るが、本部の命令とあれば従うしかない。

 遺跡側の研究員から、準備完了の合図が送られた。

「始めてくれ」

 いざとなると、藤崎所長の声に迷いはなかった。


 モニター室は歓声に包まれた。

 一度消えた檻とモルモットが再び姿を現すと、檻は粉々に砕けていたが、二匹のモルモットは檻から解放され、チューブの中を元気に走り回っていた。

 チューブの中に入った研究員が一匹を抱え上げ、もうひとりが小型カメラでその姿を映す。見たところ何の外傷もない。藤崎所長は、満足そうに何度も頷いていた。

 その後の精密検査でも、二匹のモルモットには何の異常も発見されなかった。


 遺跡は生体には影響を与えない。

 明日以降は、さらに大型の動物を使った実験が行われることになるという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る