23

終電時間をとうに過ぎた飲食街は人通りも少ないく

看板を彩るネオンは数時間前よりだいぶ減っていた

早紀はすっかり酔って眠気に襲われている渡瀬の腕を支えながら通りを歩いていた



数分前 ー


「…課長…課長!」


右手にグラスをもったまま肘をつき渡瀬の額が今にもテーブルにつきそうに小さく上下に揺れている


「…ん?ごめんごめん、

 なんだっけ」


「もぉお店でましょう?」


早紀の声に頭が持ち上がるが視点が合わない

渡瀬がこんなことになったのは早紀の悪ふざけの結果である



さらに1時間前 ー


終電がなくなり改めて飲み始めてしばらくして

ドリンクメニューを眺めていた早紀が、最後のページに面白いものを見つけた


「課長、日本酒と焼酎どっちが

 詳しいですか?」


「どっちかってゆうと日本酒かな

 結構色々飲んでるよ」


「それなら利き酒しませんか?」


「きき酒?」


「これ見てくださぃ♪」


早紀はドリンクメニューの一番最後のページを見せた


“お味見セット

セレクトしていただいたお酒を3種類、小グラスでお試しいただけます”


「あぁ、味見セットか」


「はぃ♪私が3種類の日本酒を選ぶ

 ので当ててくださぃ」


「いいよ、やってやろうじゃん 」


渡瀬は得意げに笑った


早紀は店員を呼び

メニュー表に書かれている日本酒を3種類、口に出さずに指定した

店員は空気を読んで口に出さずに笑顔でオーダーを受けている


去り際に渡瀬が店員を引き止めた


「すいませんこのセットは日本酒だけ?」


「いえ!こちらは日本酒と焼酎で

 ご利用いただけます」


それを聞いた渡瀬は

ドリンクメニューの焼酎のページを開き店員に耳打ちしはじめた


「かしこまりました!

 少々お待ちくださいませ」


店員が行ったあとで渡瀬は早紀に


「きき焼酎ね」


とニヤリと笑った


「えっ!

 私焼酎の銘柄なんてわかりま

 せんよっ?!」


「大丈夫、

 芋とか麦とか何焼酎か当てられれ

 ば良しとするから」


そう言ってとまたニヤリと笑った


早紀の遊び心から始まったゲームは

繰り返すこと3回

思いつきで始めたこの遊びが思いの外面白く

時刻はとっくに2時をまわり3時半になろうとしていた


6~7センチほどの高さの小さなグラスの中に入ったそれぞれのお酒、

早紀の焼酎はロックで氷の分お酒自体の量は少なくさほど回っていなかったが

日本酒は氷も何もないストレート

2口ほどでの一気飲みを繰り返していた渡瀬の方は酔いの回りが早く

3回目の利き酒の途中で渡瀬の頭が垂れ始めた


はじめは笑っていた早紀だが

このまま渡瀬が潰れたらどうしたものかと考え始めた矢先

店員が申し訳なさそうにそばへ寄ってきた


「申し訳ございません。

 そろそろラストオーダーに

 なりますが…」


「もぅそんな時間…

 わかりましたオーダーストップで

 お会計お願いします」


「かしこまりました」


その声に渡瀬が重たい頭を上げた


「…悪い…もうラストだって?」


「はぃ…それより大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫

 ちょっと眠いだけ」


「とりあえずお店を出ましょう」


早紀は渡瀬に肩を貸し支えながら外に出た

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