17
美加と早紀がオフィスに戻ろうと通路を歩いていると後ろから
「美加!間野!ちょっと待って」
大声で呼び止められた
スモーキングルームにいた林田は2人を見かけて急いでやってきた
「ホントにごめん!!」
2人の前にくるなり林田は
目をつぶり額の前でバンっ!と手のひらを合わせた
「何、何?いきなりどうしたの?」
何事かと驚いて美加が林田の顔を覗き込む
「今日の誕生日、どうしても外せない用事が
できていけなくなった!」
『えー?!』
急な林田のキャンセルにさらに驚く美加と早紀
思わず声が揃う
「ちょっと!
主役がいなきゃ意味ないじゃん」
美加の眉間にシワがよる
「ごめん!
2人が大丈夫なら明日に変更してほしい」
林田は合わせた両手を擦り合わせながら申し訳なさそうな顔をしていた
その様子をみた美加と早紀は目を合わせてひとつ息をついた
「もぅわかったよー明日ね。
私ちょっと今マス屋のマスターに連絡入れ
てくるわ」
美加はそう言うと腕時計を見ながらオフィスに小走りで戻って行った
その後ろ姿を見送り、早紀と林田も歩き出した
「でも珍しいね、林田さんが飲みドタキャ
ンなんて。よっぽどの用事?」
「まぁ、よっぽどの用事ってゆうか
厄介な用事?の方が正しいかも」
林田は頭をかきながら苦笑いを浮かべた
「とにかくホントにごめんな。
明日1杯づつおごるよ。
美加にもそぅ言っておいて」
林田はそうゆうと、じゃあなと手を上げて自席に戻った
早紀が自分のデスクに戻るとちょうど美加も戻ってきたところだった
「ギリギリセーフで予約明日に変更できたよ」
そう言いながら美加は早紀の顔の前にピースサインを作った
「そっか、よかった♪」
「でもさー、珍しいよね林田がドタキャン
なんて。そんなに重要な用事なのかね?
…あ、女絡みだったりして?」
美加がニヤリと笑った
「どうだろうね。誕生日だしね♪
何か、厄介な用事って言ってたよ」
林田にここ1年以上女っ気がないことは美加も早紀もよく知っていた
2人はその想像にナイナイと笑い流した
「さぁそろそろ始めようか~」
吉田の声が全体に響く
その声に皆姿勢をだだし目の前のパソコンに向かい始めた
18時
終業のアラームが鳴った
早紀は最後に回ってきた仕事が少し長引き
パソコンの電源を落としたのは18時半を過ぎた頃だった
誕生日会というイベントがなくなり予定がすっぽり空いてしまったことが少しつまらなく思った早紀は
美加を食事にでも誘おうと、
ロッカーの前にいた美加に声をかけた
「美加さんお疲れ様♪
ねぇ、軽くご飯食べて帰らない?」
振り返った美加はスマホを手に持っていた
「あーごめん!
今ちょうど美容室予約入れたとこ~!
急に空いたからちょうどいいと思って出
来るか聞いたら大丈夫ってゆうからさ~」
「そっか!タイミング合ってよかったね。
私の方は気にしないで~」
早紀は謝る美加に笑顔を向けた
「ホントにごめんね~
19時の予約だからもう出ないと
また明日ね!お疲れ様~」
美加はバッグを肩にかけると早紀に手を振りながら慌ててオフィスを出て行った
早紀は手を振り見送ると自身も帰り支度をしてオフィスを出た
会社の入り口前で立ち止まり周りを一度見回した。
「さて。どぉしようかな…」
時間もまだ早い
久々にショッピングでもしようか
それとも
たまには1人で美味しいものでも食べようか
とりあえず早紀は駅に向かって歩き始めた
地下鉄の駅にの周りは商業ビルがいくつか立ち並んでいる
その中の1つに入りぶらぶらと
洋服、小物、アクセサリー、化粧品、本屋と目的もなく見て回った
そのビルの一番上の階はレストランなど飲食店フロアになっている
和食、韓国料理、パスタ、中華など多種にわたる店舗が入っている
早紀は最後にそのフロアに立ち寄った
エスカレーターを上がったすぐ横の柱に表示されたフロアマップをみて、
お目当ての店の場所を確認した
店の中をのぞくと客が数人入っているのが見えた
「いらっしゃいませ!」
威勢のいい声に通されて席に座ると
目の前を美味しそうな中トロが通りすぎて行った
そう、早紀が選んだのは回転寿司
早紀は
ラーメン屋、牛丼チェーン店、立ち飲み屋、寿司屋など
女性が1人で入りづらいお店に1人で入ることにさほど抵抗がない
1人で黙々とたべるのも、
たまたま隣になった人と仲良くなったりするのも割と好きだった
この日は端の席に座ったせいか隣に客はなく
1人で黙々と食べ
8皿食をお腹に収めたところで店を出た
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