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22時を回った頃

明日のことも考え3人はマス屋を出た


会社からの最寄駅は地下鉄#南央なんおう線の木賀こが駅になる


南央線は東京地下鉄が運営しており

東京駅から南に下り千葉県の手前までを走行する地下鉄だ

この木賀駅は始発の東京駅から4つ目の駅で

ここ15年で開発が進み

中高層の商業ビルやオフィスビルが立ち並んでいる


3人がホームにおりると

丁度千葉方面行きの下り電車が入って来た


「おっタイミングいいね~ラッキー♪」


そう言うと美加は顔の横でピースサインを作った


美加の実家は千葉県だが通勤の利便を考え

入社してから木賀から6つ目の中原駅の近くに一人暮らしをしていた


「じゃ、2人もと気をつけてね!」


美加はそう言うと電車に乗り込み、

ドアの近くに立って手を振った


「美加さんも気をつけてね!」


「家が駅から近いからって気ぃ抜くなよ~」


早紀と林田も軽く手を振ると

アナウンスとともにドアがしまり

電車が動き出した


入れ違うように反対側のホームに東京駅行きの快速電車が入って来た


2人はホームの前側、1両車が止まる位置まで移動してから乗り込んだ


平日の22時半だというのに車内は朝ほどではないが乗客は多かった

特に1両車は乗り換え駅で階段の目の前に停まるため

皆自然と1、2両車に集るのだ


もちろん早紀と林田も同じ理由

早紀は東京駅で

林田は東京駅1つ手前の川名橋駅で

それぞれ他の地下鉄に乗り換える

2駅とも乗り換え用の階段はこの1両車の目の前に現れる



乗り込んだ車内はドア付近しかスペースがなく

2人は閉まったドアの片方に背もたれた


「快速乗れて良かったね。

 あとの各駅停車よりちょっとだけど

早くつくね」


「ま、2駅飛ばすだけだけどな

 そいえばお前、何で昼に渡瀬さんと

話してたの?しかも男子便の前

 知り合いなのかと思って驚いた」


「あぁあれは事故。

たまたまトイレの前で

 ぶつかっただけ。

 私が前見てなくて…」


その時、電車がカーブを曲がり車体が一度大きく揺れた

その拍子に早紀の隣で同じようにドアにもたれて居眠りをしていたサラリーマンがバランスを崩して早紀にぶつかりそうになった瞬間


「お…とっと…あぶねー。」


接触する直前に林田が間に入り

サラリーマンの身体を支えた


「大丈夫か?」


「あ、ありがとう」


林田は早紀をさりげなく自分がいた座席の橋とドアが角になっているところに早紀を寄せ

その横に立った


「林田さんって実は紳士だよね

 見かけチャラいのに(笑)」


「チャラくねーだろ。

 まぁ顔は悪くないと思うけど♪

 俺は常に紳士だよ。今頃気づくな」


電車が駅のホームに入り窓の外が一気に明るくなった

快速電車は木賀駅を出ると次の停車駅は

林田が降りる川名橋駅に停まる


ドアが開くと乗っていた乗客の半分ほどがこの駅で降りた

林田は降りる人の波がおさまるのを待ち


「気ぃつけて帰れよ!

 お前も一応女なんだからな」


と早紀の頭を軽くポンっと触りそのまま降りて行った

乗り換え階段を登る列の最後尾に並んだ林田を、動き出した電車の窓から見送ると

早紀はスマホを取り出した


22:48


表示された時計を確認すると

早紀はしばし目をつぶり考えた


(思ったより遅くなったな…

 どっちから帰ろうかな)



早紀の家の最寄駅は2つ

地下鉄と地上線の両方あるがどちらも歩いてそう変わらないが

木賀駅までの経路は地下鉄が便利だった


だが最寄の地下鉄駅の出口は通りに面してはいるものの比較的人通りが少ない

地上線の駅は明け方まで営業している居酒屋や

24時間営業の牛丼屋などがあり

明るく人通りもある


この時間女性1人で歩くのであれば

少しでも明るく人通りが多い地上線の駅の方がいいのだが…


東京駅には地下鉄線用ホームと、

在来線や新幹線などが停車する地上線のホームがある

だがホーム同士は地下通路で繋がっているもののかなり距離があった


ちょっと歩くのが面倒だなとも思ったが

地上線で帰ることに決めた


東京駅で降りた早紀は目の前の地下鉄乗り換え用の階段を横目に

同じホームの後ろ側へ歩き出した

ホームの後ろ側にある乗り換え階段は地上線のホームに出るための通路に出る


折り返し電車が発車した後のホームは人がまばらで閑散としている


「一番前から一番後ろに歩くのは意外に

 大変ね…」


心の中でつぶやいたつもりが声になっていた


早紀の前を同じように乗り換え階段へ歩く人の姿が2.3人

全員仕事帰りのサラリーマンで皆、疲れが見える後ろ姿で歩いてた


ふとまだ先にある階段を見たとき

今まさに階段を上ろうとしている黒いコートの男性が目に入った



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