【1-2】

奉仕室は全面がコンクリートで覆われた殺風景な部屋だ。どことなくスプラッタ映画の拷問部屋を彷彿とさせる。

部屋の中央には豪華な椅子がひとつ、ぽつんと置かれており、そこには今日の『お客様』であるところの金森六助が座っていた。

六助の髪型は俗に言う坊ちゃん刈りで、体型はえらく太っていた。6年前の日本なら、恐らくどんな女性からも相手にされなかったのだろうなと、無関係ながらにいるみは思った。

まあどうせこれから関係を、肉体関係を持つことになるのだけど。

金森財閥の坊ちゃんである六助は、薄気味の悪い笑みを浮かべいるみの裸を眺める。


「き……君がいるみ?お、おっぱいが……大きいね」


ボソボソとした低音で六助は言う。

すると六助は、徐にいるみの胸を揉み始めた。しかしあまり慣れていないのか、手つきは実にぎこちなかった。


「……そうですか?ありがとうございます」

「それに……顔もすごく可愛いし……なんでいるみはこんなところに入れられているの?」

「私は、もともと家が貧乏だったので。本当は、精肉工場に運ばれないだけでも感謝しなくちゃいけないんですよ」


思ってもないことをいるみは言った。

こんな状況に感謝するようなマゾ女がいるのなら是非連れてきてもらいたい。


「へ、へえ、そうなんだ。ふうん。そうかあ……」


六助はチラチラとこちらの顔を窺う。

要するに早くヤらせろということだろう。元より私との会話など、こいつの要望に入っていないのだ。

別に私はこんな男と話したくもないし、本当はやることだけさっさと済ませてここから出ていきたいのだが、しかしそちらからこちらの身の上を聞いておいて、それに全く興味を示されないというのも、無性に腹立たしいものがある。


「……別に、私のことなら好きにしても構わないんですよ。上からもそう命令されていますので」

「えふっ……そ、そうだね。うん。それじゃあ、こっちへ来いよ。いるみ」

「……」


いちいち私を呼び捨てにするのに腹が立つ。

それにしても不潔な男だ。こんな人間と身体を交わして性病にでもかからないだろうか。

六助は真っ先にパンツを脱ぎ下半身を露出させた。

どす黒い色をした亀頭が私の頬に触れる。私はこんなものを咥えてまで、果たして存命する理由があるのだろうか。

割と真剣に考えた。一瞬舌を噛んで死のうと思った。

しかしそれでは目の前の肉棒に屈服するも同義だと思い直し、私はギリギリで堪えた。何にせよ、舌など噛んで死にきれるはずもない。


「ほ……ほら、い、いるみ。咥えろよ。おっ……女は、こいつが大好きなんだろう?」

「……」

アニメか何かで身に付けた知識だろうか。

童貞丸出しだなあ……。


いるみの口に、六助のペニスがじ込まれた。ペニスは曲線を描くように、いるみの喉まで達していた。

「おらっ……おらっ……どうだ、おいしいか」

「ふぁ……」


いるみは、特に何も考えていなかった。ただ、牢屋に帰ったらうがいをしなきゃなあとか、これは何度やっても慣れないなあとか、そういったことを除いて、ただただ今の現実を受け止めていた。

そんな時だった。

六助が突然口を開いた。


「そ、そういえばいるみ。お前の苗字って……新田っていうんだろう?」

「……ふぁい、ふぉうでふが」

「この間食った肉の名前……確か新田って名前だったぜ。新田……町子?とかなんとか。もしかして、それっているみの……ママだったり……する、のかい?」


六助がそう言った瞬間だった。

いるみの目が、血走った。


「お前は母さんを食べたのか」

「おっ……おいいるみっ!何離してんだよっ!僕がいいって言うまで咥えるのをやめるなよ!」


六助は叫んだ。するといるみは、再度口に六助のペニスを咥えこむ。

「お望み通りにしてやるよ六助。あんまし人を舐めんじゃねえぞ」


いるみは六助のペニス向かって、思い切り犬歯を突き立てた。ペニスに歯先が捩じ込まれ、いるみの口内に六助の血の味が広がる。


「あぎゃあああああああああっ!」


六助は絶叫する。

それでもいるみはその口を止めない。

いるみは両手で六助の金玉を握り潰した。血に塗れた股間からは、辣韮らっきょうのような白い塊が2つ、ぼとりと落ちた。

乱暴に噛みついたせいか、六助のペニスはまだ生きていた。胴体と皮一枚で繋がっていると言っても過言ではないのだが、それでも、ギリギリで生きていた。


六助は青ざめた顔で泡を吹いている。

しかしあまりの激痛に、辛うじて意識は残っているようだった。


「や……やめてっ……たっ……たたっ、たすっ……助け、助けて」

「なあ六助。お前にいいことを教えてやる。確かに立場で言えば、お前は私よりも上なのかもしれない。それは認めてやる。だけどな、1人の人間としてならば、お前は私より遥かに格下なんだよ」


まだ六助にペニスの痛みを感じる余裕があるのなら、それを利用しない手はなかった。

いるみは六助の服に付いていた安全ピンを引っ手繰り、その針を六助の亀頭の先端に突き刺した。

安全ピンは尿道を通り、遥か奥へと潜っていく。六助の尿道は、いるみの指3本分ほどにまで押し広げられてしまった。


「いぎぃぃいいいいぃいいっ!!いいいぃいいいぃいっ!!」


悪魔に取り憑かれたような奇声を発し、六助はその場に倒れた。

六助の男性器は既に原型を留めておらず、真っ赤に染まった肉塊が散乱しているという表現が適切であった。


「……母さん」


いるみは悲しそうな声でそう呟く。

傍らに倒れる六助の体。触れてみると分かったが、六助は死んでいた。

あまりの激痛にショック死したようだ。私は女なのでよく分からないが、ショック死するほどの激痛が、今果たして彼に伴われたのだろうか。


「……しかし困った……お客さんをこんな目に遭わせて……私は一体どうなって」


いるみが言いかけたその時だった。

奉仕室のドアがゆっくりと開いた。外から誰かが入ってくる。


「……誰?」


奉仕室に入ってきたのは、いるみと同様に全裸である女性だった。

歳はいるみと同じくらいだろうか。髪は金髪のショートヘアーだ。そういえば、私は1度も髪を染めたことがなかった。

それは決して両親に反対されたとかそういうことではなく、ただ単に自分が黒髪を好んでいたためなのだが、その女性の金髪はよく髪に馴染んでおり、とても清楚な印象を受けた。


「ええと、あの……あなたは?」

金髪の女性にいるみは問う。

「……凄いねあなた。男を1人でやっつけちゃうなんて」

金髪の女性は、勝手に納得したように1人でポンと手を打った。



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