思い込み
仁志隆生
思い込み
昔々あるところに子供の悪魔がいました。
悪魔といってもこの子供悪魔が何か悪さをしようとしても、なぜかいつも逆にいい事になってばかりでした。
ある時は落とし穴を掘って人を落とそうとしたら、温泉を掘り当てて人々を喜ばせてしまいました。
またある時はなんか太った役人が大事にしている書類を盗んで捨てたら、それは裏帳簿でした。
そしてそれを拾った領主が「これで奴を捕えられる」と喜び、役人を捕らえた後それに関わっていた奴らも芋づる式に捕らえる事ができ、その後全員お裁きを受けたので人々が喜びました。
またまたある時は幼い娘を父親の元から連れ去ってやろうと思ったら、そいつは父親でなく露璃魂の人攫いだとわかったので、これはさすがに許すまじとそいつを八つ裂きにしました。
と、まあ悪さしようとしても全然ダメでした。
それでもめげずになんかいい悪事はないかと考えていてふとひらめきました。
「そうだ、この国の王様を似ている別人と入れ替えてしまえ。そうすればこの国はめちゃくちゃになるだろ」
そう思った子供悪魔はまず夜中にお城に忍び込み寝ている王様の顔を覚えてから王様に似た人を探していたら城の地下牢でよく似た囚人が寝ていたので「こいつと入れ替えてやれ」とその囚人を出して王様と入れ替えました。
「さて、王様はどうするかな? 代わりに牢屋に入れといたらたぶんバレるよな、ここで燃やしとこうか」
そう思い魔法で王様を燃やし始めました。
そうすると王様の体が突然悪魔の姿に変わりました。
王様と思ってたのは実は偽者ですでに本物と入れ替わっていたのです。
その偽王の悪魔は「ぎゃあー!」と悲鳴をあげながら燃え尽きました。
そしてさっきから目が覚めていた囚人は子供悪魔に
「偽者を倒してくれてありがとう」と言いました。
そう、この囚人は本物の王様だったのです。
「うう、またダメだった。オイラいつもいつもこんなで……びえーん!」
子供悪魔は堪えきれずに泣き出しました。
王様はびっくりして何がダメで泣いてるのか聞きました。
話を聞き終わった王様は
「きみは誰かに悪いことをするように教えられたのか?」
「ううん、おいら悪魔だから悪いことするのは当たり前だろ」
「いやそれは違うだろ。それはただの思い込みだ。悪魔がいい事したっていいじゃないか」
「え、そうなのかな?」
「そうだとも。きみはいい事をすることに向いてるんだよ」
「向いているのかな? じゃあそうするよ」
その後、この子供悪魔はいい事をするようにしました。
これを読んでいる皆様はもしかして逆に悪い事になるのかもと思ったのでは……
いえいえ、そうはならず以前よりもよりいい結果となりました。
そしてこれを聞いたこの国の人々は
お互いに向いてるなと思うことがあれば教え合うようになり、皆がそれぞれ長所を活かして生きていけるようになりました。
おしまい
思い込み 仁志隆生 @ryuseienbu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
見た覚えのないもの/仁志隆生
★12 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます