第7話

 デビルバスター。

 俺はこの仕事に誇りと希望を持っていた。

 世界から夜魔とゾンビを一掃し、元の平和な世界を取り戻すんだと、親父達の仇を討ち、同じように家族を失った人々の敵を討つんだと…。

 しかし、俺は何の罪もなかった夜魔の子供を、無抵抗で俺に助けを求めて来た子供をこの手で撃ち殺した。

 それが最善の方法だったんだと自分に言い聞かせ“向かって来たから撃ったんだ”と自分の身だけを保守した。

 俺はデビルバスター。

 夜魔とゾンビを殺すのが仕事。

 間違ってない。

 俺は間違ってない筈だ。

 子供だったとは言え、あの子は夜魔だった。逃げ出し、あのまま人間を襲っていても可笑しくなかった。

 だから…。

 いや、あの子は俺に助けて欲しかっただけだ。

 自分に不信感を抱いていても、仕事中に私事を持ち込む訳にはいかない。

 デビルバスター人口は増加していて、ノルマを決めて夜魔退治を行っている会社もあると聞いた。だから最近じゃ夜魔も劇的に数を減らし、俺が思い続けていた夢も実現するかも知れない。

 夜魔を皆殺しにする事。

 親父達が殺されてから、それだけが心の支えだった。

 先輩を手にかけた時も、自分の不注意でゾンビにしてしまったオッサンを手にかけた時も、そう思ってやって来た。

 パァン!!

 また、何処かでデビルガンの音が響いた。

 今日この音を聞くのはもう5回目、本当に夜魔はいなくなるのかも知れない。現にゾンビは見なくなった。そうするといよいよ夜魔が現れた理由は分からなくなるんだな。

 パァン!!

 また何処かでデビルガンの音が響く。

 今日は夜魔がよく出る日だな。

 パァン!! パァン!!

 え?

 夜魔だってアホじゃないんだから、1体倒されたら出るのは控える筈。なのに、今日は可笑しい。

 音のする方へ走り、目的地に着いた俺は唖然とした。

 デビルバスター達が戦っている舞台が本部だったからだ。

 本部からは次々と夜魔が出て来ては撃ち落されて行く。

 パァン!

 何故本部から夜魔が出てくるのか、そんな事を考える暇もなく俺も加勢する。そしてようやく落ち着き、デビルバスター達が次々と本部の中へ入り、内1人が今回の騒動となった原因を突き止めた。

 研究室と書かれた扉の中には沢山のカプセルがあり、中で夜魔が育てられていた。

 しばらく訳が分からずに立ち尽くす。

 まさか、自分が所属する会社の本部が夜魔を作り出していたなんて。

 自分の両親を殺した会社で働いていたなんて。

 あまりにも馬鹿らしくて、信じ難い出来事だった。

 何のために俺はデビルバスターになったんだっけ?両親の仇を討つのなら、倒すべきは夜魔ではなくて本部の人間か?

 俺は夜魔退治を回りのデビルバスター達に任せ、誰もいない実家へ数年ぶりに戻る事にした。

 埃の積もったソファーに腰を下ろして耳をすませると、遠くの方からデビルガンの音が聞こえてきた。

 翌朝。

 新聞には“夜魔を生み出していたのはデビルバスター”の記事と“夜魔絶滅”の記事がトップを飾り「世界を1つにするため、人間の結束を高めるために夜魔をー……」と、訳の分からない台詞を吐く社長がニュースで流された。

 形はどうあれ、俺が長年夢見てきた事が、生きがいとしてきた事に終止符が打たれたのだ。

 あまりにも突然生きる意味を失った。

 「フッ……」

 下らない血で汚れてしまったこんな体では、両親には会えないのだろうな。

 パァン!!

………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜魔 SIN @kiva

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ