第4話

 俺の仕事は、夜魔とゾンビで犇いているこの世界を元に戻す事。

 忌々しい存在である夜魔のせいで街も、人の心もボロボロにされた。それを少しでも癒すように毎日ゾンビを狩る。

 元の世界を取り戻すためとは言うが、元の世界がどんなものだったのか、俺はもう思い出せない。

 俺が始まったのは、両親を夜魔に殺された所から。

 アイツらが存在する限り、俺は人間ではなくデビルバスターなのだ。

 そんな俺にとっての夜魔は、敵でしかない。

 憎むべき敵、倒すべき敵。

 心の底からアイツらの撲滅を望んでいる。

 それなのに昨日、夜魔を1体逃がしてしまった。

 デビルガンの弾が切れていた訳でもないのに、撃てなかったんだ。

 その理由なんて明確で、単純で、信じられない位に気持ち悪いが、夜魔に魅了されて動けなくなっていたと言う紛れもない事実…。

 昨日、俺はいつもより遠くまで足を延ばしてパトロールしていた。

 夜魔やゾンビの潜んでいそうな路地を注意深く見回っていると、前方に夜魔2体が見えた。

 もし1体だけならその時点で撃って終わっていただろうが、相手は2体。応援を呼びながら慎重に後をつけていくと、1人の人間に食らいついているもう1体の夜魔の姿が。

 3体は争う事も無く1人の人間を食べ始めた。

 ここだと思った。

 今なら3体まとめて仕留められると思った。

 いつも訓練室で練習し、仲間内で“1番のガンナー”と言われている俺だ。無防備な背中を撃つなんて容易い筈だった。

 慌てるでもなくデビルガンを構え、

 パァン! パァン! パァン! パァン!

 1発目、2発目は夜魔に命中し、3発目で最後の夜魔を狙おうとした直後、人間がゾンビとなってユラリと立ち上がった。

 咄嗟にゾンビを狙って撃ち、4発目で残った1体の夜魔を狙ったのだが、高く飛び上がって避けられてしまった

 シューと蒸発音をあげてゾンビと2体の夜魔が消えていく。

 一旦空に逃げた夜魔は、消えていく2体の元に降り立つと必死に体を揺すり始めた。

 早く飛び立たないと自分も撃たれるかもしれない中で、その夜魔は2体が完全に塵となって消えるまでその場にい続けたのだ…俺に、背を向けた状態で。

 俺は自分がその光景に魅入っている事に気付き、慌ててデビルガンを構えて撃ったが、雑念の入った弾はうまく交わされ、取り逃がしてしまった。

 惜しくも逃がしてしまった俺だが、夜魔を思っていた憎しみの心が少し壊れた気がしてならない。

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