タグに明記されているのでネタバレにならないだろうから書くが、「必殺仕事人」のオマージュ作であり、魅力的な異世界ノワールである。
舞台は異世界、主人公は冒険者上りの若き衛兵。偶然巻き込まれた事件の裏に隠された秘密、そして帝都に暗躍する謎の「狩人」たち。確かな文章力でつづられた物語は、主人公の内面の変遷を説得力をもって描き出している。
特に主人公と相棒との友情の描写は巧みで、それがあるからこそクライマックスシーンが迫力に満ちたものとなり、読み手にカタルシスを与える結末となっている。
あえて残念な点を挙げると、あまりに「仕事人」のイメージが強すぎる点か。これは本作の強みであると同時に弱みにもなっている。「仕事人」が小説ではなく映像作品であるせいか、特に終盤、それぞれの「狩人」たちが敵地へ赴くシーンの話の運びなどは、どうしてもテレビの映像と二重写しになってしまった。
別作品へのレビューにも書いたことだが、他ジャンルにおけるエンタテイメント作品として完成されたフォーマットを参照しつつも大胆に換骨奪胎し、そこに独自の物語を構築する、といった方向性は間違ってはいない。個人的には、「RPG風の異世界への転移・転生」というテンプレが飽和した先に新たなムーブメントを作り出せる可能性は、こうした方向にあると思っている。
現段階で評価すると、本作は、その「料理」の仕方がもう一つ足りないように感じられるのが、実に惜しい。
今後、さらにオリジナリティあふれる物語が展開されることを期待するとともに、新たなジャンルを積極的に開拓しようとする作者の勇気を心から応援したい。